エンシェントスライムちゃん ~カンスト済みエンシェントスライムに転生したよ?~

叶織

天照大御神さまに謝られたよ?

僕はだぁれ?

 真っ白な空間でベッドに寝転がっていた。ここはどこだろう? そういえば、僕の名前がわからないや。ベッドから降りて周りを見ていると、女の人が近づいてきた。

「初めまして。私は天照大御神。日本の管理責任者よ」

「……天照大御神さま」

「そうよ、私は天照大御神と言うの。よろしくね」

「よろしくお願いします、天照大御神さま」

 僕が笑うと天照大御神さまは頭を撫でてくれる。懐かしい気分になるや。お母さんって感じがする。

「僕は何でここにいるの?」

「本当に知りたいのね」

 僕が決意を見せると、また天照大御神さまが頭を撫でてくれた。天照大御神さまのこと母さまって呼んじゃダメかなぁ。

「良いわよ、母さまと呼びなさい」

「いいの! 本当に母さまって呼んでいいの?」

「もちろんよ」

「やったぁ!」

 喜んでいて気付かなかったけど、母さまって僕が考えてることが分かるの? すごいっ! 超能力者なの?

「違うわ。私のことを話すには、まず貴方のことを話さなくてはならないの。だから、貴方がここにいる理由を話すわね」

「うん」

「ここは管理者の住む場所よ。人のいう神様は管理者のことなの」

 神様って僕じゃ会えないぐらい偉いんだよね? 母さまって呼んじゃったけど、よかったのかなぁ?

「ふふっ、良いのよ。続きを話すわ。貴方はね、管理者の不手際で壊されたの。新しく構築されたから、生きていた記憶が全て消えているみたいね」

「そうなんだ。じゃあ、僕はだぁれ?」

「残酷な真実は貴方に必要ないのよ。だからね、新しく私が与えてあげるわ。最初は名前ね。べアーティ・トゥードー。幸福って意味よ。どうかしら?」

 嬉しくて涙が出ちゃった。僕は寂しかったんだと思う。分からないけどね? 「そうだよー」って誰かが言ってるんだ。

「べアーティ………、母さまはベティーって呼んで?」

「分かったわ。でもね、ベティー。私の話を聞いてから、決めてほしいの。私に名前を呼ばれたくないと思ったら、すぐに言いなさいね」

「分かった」

「良い子ね、ベティー。管理者は人の魂を管理する者。人の魂がある限り、永遠の命を持つわ」

 永遠の命ってすごい! 永遠の命があったら、何ができるだろう? 美味しい食べ物を食べながら、ゆっくり旅ができるのかなぁ。楽しそう!

「その願いを叶えてあげるわね。絶対に許さないわよ、こんな良い子を……」

「大丈夫?」

「大丈夫よ。永遠の命を持つからこそ、管理者には大切な役目があるの。人の魂を安寧に導くのよ」

「あんねい?」

「もう少し簡単に言うと、人が幸せに過ごせるように導くの」

 えっ! 「幸せとは無縁の人生を過ごしてきたからなー」って聞こえたよ? 可哀想な子だったんだね、僕って。

「えぇ、可哀想な子だったわ。本当はね、僅かでも幸せな日々があるはずなの。でも、貴方には幸せな日々がなかった。管理者が見落としていたのよ。残業続きだったとしても、許されない」

 残業続き? 管理者の仕事って、ブラックなんだね。それを言い訳にしちゃいけないって、母さまの言いたいことも分かるなぁ。だって、幸せが存在しない人生なんて…生きている意味がないもん。

「そういうことよ。管理者の仕事は一人の人生を左右するのよ。何を言い訳にしても、失敗は許されない。重い責任を背負う仕事よ。それを理解していない管理者のせいで!」

「母さま、僕は大丈夫だから。そんなに怒らないで?」

「……ベティー。分かったわ」

「うん、それとね。母さまは悪いことをしてないよ。だから、自分を責めないでね」

「ベティー」

 母さまは僕のことで怒ってくれてるんだもん。「それだけで、幸せを感じられるよー」って聞こえた。その通りだよね、僕も同じこと思ったよ!

「私を許してくれるのね」

「もちろんだよ! だって、母さまと一緒にいると幸せって思えるもん」

「ベティーは怒ることを覚えたほうが良いわ」

 声が震えてる。もしかして母さま……泣いてるの? えっ、どうすればいいの。「知らなーい」? 僕だって、知らないよ!

「大丈夫よ、泣いてないわ」

「よかったぁ。本当に大丈夫だよね?」

「大丈夫よ。それにしても、会話ができるようね。構築したときに新しい自我が生まれたのかしら?」

 僕が誰と会話してるんだろう? 「私だと思うー」って、そうなの? 僕と違う人だったの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る