なんのにおいもしないとき

森園京

太陽はおとめ座六十一番星 ずうっとお姫さまでいたかった

追い払うこともできない狼の群れがうれしい わたし、生きてる 


コウノトリたちの屋台は休みなし いろんなかたちのいのちあります

 

月満ちてからだのすべての窓あけた!ひとつ思想が配達された! 


ぎこちなく腹式呼吸で笑いあう 泣くのを知らないアダムとイブは


音の鳴る鎖にさいしょはつなぎます 慣れたら鳴らないのに取り替えます


アルフォート ハーゲンダッツ クーピーペン 愛される名に深い意味なし


風鈴が鳴るとすずしい それほんと?からだはうなずいていないのに?


むかしから夏は暑いと決まってる あなたがあやまらなくてもいいよ


とっておきの本を読むとき光源は天体派?それとも柑橘派?


かんたんに割れないコップが曇りゆく水道水しか入れてないのに


満員のバスに乗れないひとびとを身内のように二度ふりかえる


家じゅうにあなたを探す砂があり追いかけ方に個々の刹那さ


うっかりと長く滞在してしまい異国がひとつ消えてゆきます


たくさんの約束をした 子どもたち、他の星にも伝えておくね


太陽はおとめ座六十一番星 ずうっとお姫さまでいたかった


つかんだらチーズケーキのやわらかさ指痕ふかく残るみかづき


散骨をたのむと決めたその日から海を眺めるときは海賊


「じゃあ行くか」「ああ行こう」しかし動かないふたりはたぶん親子ではない


たましいよ 不穏な夜道をまようときわたしの体をつかってください


花を嗅ぎなんのにおいもしないときどこにいるのかわかるのだろう

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なんのにおいもしないとき 森園京 @morizonokei

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