第5話 自信と運命

俺は悦に入って、眠った。


・・・


って、眠れるはずがなかった。


「いやいや、無理があるだろう」


今更かいって感じで、これまで(人生のうち、記憶のあるところから)を振り返った。


「こりゃあ、ずっと自分に自信がなかったのも、理解できるわ」


俺は子供のころから、自分に自信がなかった。

常に将来が不安でしかたがなかった。


「こんな運命ってことを、俺は本能的にわかっていたんだな・・・」


そう思うと、なんかすっきりとした。


田舎のコンニャク屋の息子の俺が、東京の大学に入学し、曲がりなりにも国家公務員になって毎日苦労したあげく、異世界へ転送されるだなんて、そりゃぁ、自信を持てというほうがおかしい。


大学を卒業するころには、小中学校の友達にも会わなくなってしまっていたし、今ではひとりぼっちと言ってもおかしくはない状況だ。


そんなこんなことを、俺は小さいころから、本能的に何かを察知していたとしか考えようがなかった。


それにしても、自分の代で瀬戸川家が終わってしまうのはご先祖様にも申し訳なかった。


何代も続く名家ではないが、逆に考えれば、名家でもなんでもない家系が今まで続いたほうが奇跡的だと俺には思えた。


ご先祖様の中には、ある時は貧農だった人もいるであろうし、夜盗に襲われ死にそうになった人もいよう。


そんな風に、か細く紡がれた運命が俺で途絶えてしまったのだ。


そんなことを考えているうちに、いつの間にか、俺は眠っていた。

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