第37話 天海さん達と水族館

「おさかなさん!」

「かわいーねー!」

「きれー!」


 夏休みという事で、色々行ってみようという事になり。俺達は水族館へと来ていた。


「ん、綺麗だね」


 三人と共に水槽を眺めるミア。彼女達を見つつ、俺も頷いた。


「ここ、昔来た時に、クラゲのフェアをやってるのが凄い印象に残ってたんだ。今まで見てきた中で一番綺麗でな」

「ああ。そういえばクラゲフェアやってるって。だからここが良いって言ったんだ」

「ああ。そういう事だな」


 たまたまSNSでバズったものが流れてきたのだ。どうやら毎年開催されているようだった。

 前も話していた事もあって、丁度良かったのでミア達を誘ったのだ。


「おかーさんにもみせたかった!」

「ふふ。そだね。じゃあいっぱい写真撮って、後で見せよっか」

「そーする!」


 ミアのお母さんは仕事で忙しく……今はお盆前でかなり忙しいらしい。仕事をぶっちぎってでも、と最初は言っていたのだがミアが止めた。


 季節ごとにまた色々とフェアはあるらしい。熱帯魚フェアとか。金魚フェアとか。

 またその時に行こうと約束したのだ。


「じゃあ撮ろっか」

「はーい!」


 ここはフラッシュを焚かなければ写真を撮って良いエリアである。


 紫苑が「おさかなさん! いっしょにとろーね!」と言っている。なんなんだこの可愛さは。


 続いて茜が「ひとでさん! いっしょにとろーね!」と。柚が「かにさん! いっしょにねよーね!」と言っている。柚。寝るのはだめだからな。でもちゃんと水棲生物にも挨拶出来て偉いな。


 ミアがスマホを構えた。「おにーちゃん!」と紫苑に呼ばれ、隣に行く。まずは紫苑という事だろう。


 紫苑を抱き上げ、魚達が多い所の前に立つ。


「はい、チーズ」

「えへー!」


 紫苑がぎゅーっと首に抱きつきながらピースをした。もちもちなほっぺたも合わせられた。


 続いて茜を抱き上げる。


「とーやにぃー!」

「なんだ?」

「えへー!」


特に用事はないのか、目の前でにこー! と笑う茜。可愛くてどうにかなってしまいそうである。


 そして、それと同時にパシャリと写真を撮られる音が響いた。


 最後は柚である。

 柚は抱き上げた瞬間、ぎゅーっと音が立ちそうなくらい強く抱き締めてくる。


「おにーちゃんだいすきー!」

「ああ。お兄ちゃんも大好きだよ」

「えへへー!」


胸にほっぺたを押し付けて、むにぃとほっぺたがいかにもちもちしてるかを見せてくる柚。思わず指でつついてしまう。

そしてそれをパシャリと写真を撮られた。


 最後にしゃがみ、三人を抱き締めて。ミアに写真を撮って貰った。


 そして思う存分三人の頭を撫でてから、俺は離れる。


「じゃあ次はミアだな」

「ん、お願い」


 今度はミアの番である。

 ミアは非常に絵になる。めちゃくちゃ。しかも紫苑達と撮ったらめちゃくちゃ良いのだ。

 美少女と可愛い子供の親和性はめちゃくちゃ高い。


 ミアが紫苑を抱き上げる。紫苑は嬉しそうにミアへと抱きついた。


「はい、チーズ」


 ミアが紫苑の額にちゅっと。キスをした。紫苑がお返しと言わんばかりにほっぺたにちゅーをした。もちろんそちらも写真に撮った。


「しおんもおにーちゃんにちゅーすればよかったー!」

「ふふ。次はやろうね」

「うん!」


 同じように茜、柚と写真を撮るミア。二人も恥ずかしがる事なくちゅーをされて。ちゅーをし返した。


「つぎはおにーちゃんとおねーちゃんのばん!」


 そう言われた。いや、もうさすがに予想はついていた。それに、写真くらいなら……と思っていたのだが。


「んー!」


 紫苑がぐぐーっと腕を伸ばす。しかしそうなると画面が見えない。


 俺達を撮るには、紫苑達は少しだけ身長が足りないようであった。下から撮っても良いとは思うが、なぜか「やー!」と紫苑が首を振ったのだ。


 少し離れれば撮る事は可能だろう。でも、その分俺達も遠くなってしまうし……紫苑達に万が一、不審者が近寄った時に助けにいけない。


 腕を伸ばす紫苑は正直めちゃくちゃ可愛いんだけども。


 しかし、どちらにせよこのままでは皆で撮る事は出来ない。


「すみません、写真を撮って貰いたいんですが……今時間ありますか?」

「あ、はい! 大丈夫ですよ!」


 ミアが通りすがりの女性を呼び止めた。幸いにも、快く了承してくれたようだった。


「お、おねがいします!」

「……可愛い」


 分かる。めちゃくちゃ可愛い。そして偉い。ちゃんとお礼を言えて。


 紫苑がてててーっとこちらに走ってくる。可愛い。


 そのまま紫苑がミアへと飛びついた。茜と柚は俺へと飛びついてきた。


「ふふ。なかよしなんですね」

「はい。すっごくなかよしなんです」


 女性の言葉にミアが頷いて。紫苑がすりすりとミアのほっぺに自分のほっぺたを擦り付けた。


 それを茜と柚が真似をする。両方の頬が凄くもちもちして幸せになった。


「ふふ。はい、チーズ」

「ちゅー!」

「えへー!」

「すきー!」


 その言葉と共に、三人は頬にちゅーをしてくれた。それと同時にシャッターが切られる。


「えへー!」

「えへへー!」

「えへへへー!」


 次は笑顔で一枚。ほんと可愛いな三人とも。


「つぎはおにーちゃんとおねーちゃんがちゅーするばん!」

「んー。お姉ちゃん達はまた今度……あとちょっとしたら、ね」

「んー? そーなのー?」

「そーそー。……ありがとうございました」

「あ、ありがとうございました!」

「いえいえ! ……お幸せに」


 ミアがスマホを取りに行った際、何かを言われたのか顔を真っ赤にしていた。


 声が小さく、何を言っていたのかよく聞こえなかった。


「……んじゃ、次行こっか。後でとーやにも写真、送るからね」

「あ、ああ。ありがとう」


 何を言われたのか少し気になったものの……まあ良いかと思考の隅へと追いやって、俺は二人を下ろし。ミアと手を繋ぐのだった。

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