故ノ惨・厄災の子

 これは、まだ北海道で働き始めて1カ月が過ぎたあたりに体験した話。その日、私は休日で夕方過ぎの部屋でボーっと座っていた。

 そして、特に意味はなかったのだがふっと瞼を閉じたんだ。すると、部屋の中に狐面を付けたおかっぱで着物姿の少女が提灯片手に立って居る。

 「瞼を閉じてるのに、何で視えるの ? 」って言われるかもだけど、何と言うか脳裏に映像が浮かぶ感じで夢と現実の狭間みたいな感じなんだ。でね。

 私、そのおかっぱの少女に見覚えがあってさ。小学生の頃に近所の老人ホームの庭で盆踊りの行事に参加した時、ホームの中庭にある池のとこに居た子だったんだ。

 なんだか懐かしくなった私は、


「久しぶり、なんでいるの ? 」


 って声を掛けたんだけど彼女は何も答えずに右手て私の手首を掴むと立たせてきてそのまま玄関の方へ歩き出した。玄関入って直ぐに狭いキッチンがあるんだけど、そこが真っ暗でさずっと玄関よりも奥に暗い廊下が続いてたんだ。

 少女は私の手首を話すと提灯を渡してきて、廊下の方を指さすの。進めって事なのだろうと思い、私は恐る恐る先に進んでみた。

 廊下は一本道で最初の角を曲がったとこに、扉の無い部屋があったんだ。部屋の奥に小さな脚の高い鏡台が置かれててさ、引き出しを開けたら白い数珠が出て来たから右手に嵌めた。

 そして、鏡を見たら何も映ってなかったんだよ。変な鏡って思って部屋を出てまた廊下を進んだ。

 今度は廊下の端に小さな机みたいなのがあって、引き出し開けたら今度は黒い数珠が出て来て左手に嵌めた。更に進んで行ったら、広い体育館みたいな場所に出てね。

 部屋の奥には、3つの扉があったんだけど……開ける前から、開けたら死ぬって勘でわかった。扉の向こうは、左から【棘だらけの落とし穴】【襲ってくる炎】【腹をすかせたキメラ】って映像が頭に流れ込んできてたからね。

 だから私は部屋の中心に描かれてた六芒星の中心に行って座って床をノックした。そしたら、スライドして開いて中から石で出来た方位磁石が出て来たの。

 それの指し示す方に進んで、壁を叩いたら隠し扉が開いて更に奥へと続く廊下が出て来た。すると、行き止まりにたどり着いたんだ。

 行き止まりの壁には、掛け軸がかけてあって左から【理想】【現実】【秩序】って描かれてた。そこで、また少女が出て来て


「どれかを選んで飛び込んで」


 そう言われて掛け軸の方へ向き直ると掛け軸の前の床が抜けて穴が3つ並んでた。

 そして、再び少女は居なくなっていて後ろの廊下がいつの間にか壁になっていて迫って来たんだ。同時に天井も下がって来た。


 私は、少しだけ考えてから掛け軸を背に正座をし叫んだ。

 

「全部 ! 」


 すると、少女が出て来て私に微笑むと「あげる」っと言って左耳にだけ耳飾りを付けてくれた。そして、目が覚める瞬間に彼女は「私は厄災の子」っと呟いたのが聞こえた気がしたんだ。

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