故ノ贄・神霊旅館

 その後、仕事が終わり9時過ぎに寮に帰宅。私の部屋は、4階の角部屋……知ってる人いると思うんだけど、角部屋って出やすいんだよね。

 しかも4階……でも、部屋自体に嫌な感じはなく。強いて言うなら、部屋の前にあった非常階段の重そうな扉が異様に怖く感じたくらい。


 で、帰宅して風呂に入り人心地ついた頃。ふっと、コーラが飲みたくなった。

 夜の9時半過ぎ位に突如飲みたくなるコーラ……思考を巡らし、坂を上ってコンビニに行くのはちょっとやだなっと考えた時。

 寮の1階。入口のエントランスホールに自販機があるのを思い出した。

 よしっと思って、私は財布片手にサンダルを履いて部屋を出る。エレベーターに乗り1階に到着。

 直ぐに自販機に直行して、お目当てのコーラを購入。そして、取り出し口からコーラを出そうとしゃがんだ時だった。

 視界の端を白いワンピースの女性が横切ったんだ。でも、寮だし色んな人が居る。

 自分の様に、自販機に買い物に来る人だって居るんだからその事自体は然して気にしてはなかった。だけど、コーラを手にエレベーター前に戻った私は「あれ ? 」っと思い固まる。

 だって、エレベーターは開きっぱなしで止まっていて誰も居なかったから……エレベーター前に階段があったし、最初は階段上って行ったのかとも考えた。けど、階段には扉付いていたんだ。

 そして、その扉は非常に重くて開け閉めする時に【ぎぃいいいい】っと音が鳴る。でも、ワンピースの女性がエレベーターに向かって私がエレベーター前に戻るまでの間にそんな音は一度も聞こえなかった。

 きっと疲れて幻覚でも見たんだろう。私は自分にそう言い聞かせ、エレベーターで4階へと戻った。

 そして、4階に戻った私はどうしても気になってしまい階段を除きに向かったんだ。階段の扉は1階だけなので、各階からは普通に見下ろせる。

 見下ろした先、暗闇から【コツーン……コツーン……】ってヒールの様な音が聞こえゾワッとした。偶然聞こえただけかもしれないが、何か得体の知れないモノが迫ってきている感覚があったんだ。

 だから、私はすぐさま部屋に戻ると鍵をかけコーラを冷蔵庫にしまってから部屋に置いていた祖父の形見である【身代わり鈴】を手に持ちベットに包まった。すると、タイミングよく闇夜さんから電話があり事情を説明しすると配信の時同様に祝詞を詠んでくれたんだ。


 その声を聞くうちに、なんだか安心してしまい眠った私はまた奇妙な夢を見た。旅館へ到着した初日に見た夢……あの夢に出て来た老人と青鬼が私の部屋に居る夢。

 他に前回の夢ではいなかった、赤鬼もいて足で何かを踏んづけていた。何だろうっと思ってみたら、それは白いワンピースを着た女性。


「怖い思いをさせてしまい申し訳ない。この女性は、浮遊霊の様なのですがね。

 お泊りに来た神様方に紛れて、館内に侵入したらしく……どうもあなた様を付け狙っていた様でして…………まだ、目的などはハッキリしていませんがこちらで対処しますのでご安心下さい」


 朝起きると、妙に心がスッキリしていて昨夜の恐怖心は微塵の無くなっていた。この浮遊霊の女性の目的はまた別の時に明らかになるので、よければこの拙い文章をこれからも楽しみに読んでくださるとありがたい。

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