故ノ忌・決別と縁定
少し、時間を巻き戻し。枠が終わってから、私は改めて闇夜さんと連絡先を交換したんだ。
理由は、彼から
「何か神様に大切なお願いしてますよね ?
よければ、詳しい話を聞かせて下さい」
っと言う様なメッセージが来ていて思い当たる節があったから……実は、廃墟に行くと兄さんに聞かされた日。もう1つ、兄さんに聞かされていた話が合ったんだ。
それが、余命半年と宣告を受けたと言う話だった。ショックだったよ。
実の兄じゃないし、配信で出会った赤の他人と言えばそれまでだけど……でも、私は何故かそうは思えない程に兄さんを大切に思ってたんだ。自分の事より人の事で動く兄さんに自分を重ねて、身寄りもなく天涯孤独だと聞いて自分が本当にこの人の妹だったら良かったのにと何度も思ったほどだね。
そんな人が、ようやく可愛い彼女(私も知ってる配信で出会った素直で本当にいい子)が出来てこれから幸せになる筈なのにって……聞いた翌日、兄さんが廃墟に行った日の昼頃。私は、近くの神社にお参りに行った。
自分の幸せを全部兄さんにあげてほしいと、私は兄さんに会って数か月だったけど何としても助けたかったんだ。幸せになってほしいって、心の底から思ってた。
だから、闇夜さんにも電話で全部話したよ。それこそ、会ってまだ数時間だったけどこの人は信用出来るって思えたからさ。
「……なるほど。で、リンゴさんはどうしたい ?
彼にどうなってほしい ? 」
「…………病気が、跡形もなく治るなんて奇跡を起こせるなんて思ってはいない。ただ、ほんの少しで良いから5年でも10年でも長く生きて幸せになってほしい……です」
言ってて、私の両目からは涙が溢れ出してた。恐怖とは違う、悲願の涙。
「わかった」
「ほんと ? 」
「うん。ただし、……彼の本心を聞いてからだ」
「本心 ? 」
「そう。君や彼女と生きて幸せになりたいのか、それともこのまま黙って死を受け入れるのか……彼自身の言葉を聞きたい」
最初は、何故そんな事をしようとするのか解らなかった。でも、今なら解る。
闇夜さんは人を信じたかったんだって……私のその考えを、確証付ける様な事を闇夜さんが一度だけ口にしていた。それを、どのタイミングで闇夜さんが言ってたかは忘れたけど印象に残る言葉でさ。
「人を捨て駒だと思いたくないのは、人を信じたいからなんだ」
それから、話をしたいと兄さんに伝え私と闇夜さん兄さんと兄さんの彼女さん(仮名はサトリさんにしようかな。闇夜さんが色々見抜かれるとか言ってたから)この4人でグループ作って通話を開いたんだ。
結果から言うと、私と闇夜さんサトリさんは四日間通話を繋いだままで待っていたけど兄さんは一度も来なかった。その代わり、闇夜さんに色んな話を聞いたよ。
闇夜さんは、所謂。前世の記憶ってのを持っている人でさ、最初に兄さんの枠に来た時に私が「兄さん」って呼んでるのを聞いて驚いたらしい。
「こいつ記憶あるのか ? 」ってね。
「お前、あいつと前世で2人きりの兄妹だったからな。あの頃から、兄貴に懐いててブラコン気味だったけど今も健在とはな」
的な事を言われた。そして、その話を聞いたサトリさんが
「あなたも、あの頃から変わってませんよね ? 」
っと言っていた。サトリさんの場合、記憶があると言うよりも覚えている知っているって感覚らしい。
違いを聞かれると解らないけど、そう言われた。
「お前もな。なんで、いつも解るんだよ。
記憶には残らない様にしてるのに、毎回気づきやがって……」
少し悔しそうに闇夜さんがボヤいていたよ。それから、兄さんを待ちながら将来の話も沢山したな。
闇夜さん最初は、声の感じから自分と同い年だと思ってたんだけど思ったより年下で驚いたんだよね。それで、兄さんの病気が落ち着いたら
でも、いくら待っても兄さんは来なくてさ。メッセージも送ったんだけど「仕事が忙しい」「まだ、当分行けそうにない」って言うばかりでね。
遂にしびれを切らした闇夜さんから
「本心を聞きたい云々のとこは伏せて、他は全部話して良いから一度通話に来いってメッセージ送ってくれ」
と頼まれた。サトリさんもメッセージを送ったんだけど、既読無視されると言っていたよ。
病気の話を彼女より先に私にした事に負い目があったのか、意図的に避けられてたみたい。でもさ、通話には来ないのに枠は開いてたんだよね。
何度か、枠に言って通話に来てと伝えたんだけどそれでも駄目で……サトリさんがいるのに、他の女性と楽しそうに凸で話してたのもなんか嫌な感じだった。ただ話してるなら良いけど、なんか良い雰囲気って感じでさ。
だから、闇夜さんに言われて私は一旦通話から落ちて兄さんにメッセージを送って通話もかけてみた。出てくれなかったけど……
最後に兄さんから来たメッセージは
「あんな奴信じるな。お前もサトリも騙されてるんだよ !
自分の体の事は、自分が一番よくわかってる。どんなに願っても、俺は助からないんだ。
ただの人間に、何も出来る訳ないんだよ」
そんな様な事が書かれていた。私は、なんでかそれが凄く哀しくて辛くて自分も思いのままにメッセージを送ってしまったんだ。
「なんでそんな事を言うの ? 兄さん、闇夜さんとはまだ一回しか話してないでしょ ?
それに、闇夜さんはただ話したがってるだけだよ。ねぇ、なんで ?
私やサトリさんのメッセージを無視して、通話にも一度も来てくれないのに枠は開いてるよね ?
お願い。一回で良いから通話に来て話そうよ。
私を本当に妹と思ってくれるなら信じて」
その直後、兄さんは何も言わずにグループを抜けてしまった。おそらく、私の事はブロックしたんだと思う。
ありのままを伝えると、闇夜さんは一言
「は、……くだらねぇ。馬鹿みたいじゃないか…………はぁ。
時間の無駄だったわ。じゃあな」
っとだけ言って通話から落ちてグループから抜けて行ったんだ。これで、私も闇夜さんとは縁が切れたんだと思っていた……だから、最後にメッセージを送った。
「闇夜さん、ありがとう。さようなら」
そしたら、もう来ないと諦めていた返事が来たんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます