参ノ縁・配信の怪(贄)

「怖いわ ! 静かに探せや ! 

 てか、さっきシャッター音したけど何を撮った ! ? 」

「え ? あ、悪ぃ悪ぃ。

 マネキンだよ。明日のサムネに良いかなって……」


「ダメだこいつ、早く何とかしないと……」っと本気で呆れた。注意したら、一応 静かになって次の部屋へ移動……そんで「ベットの下にあるんじゃない ? 」って私の助言を受け覗き込んだらしい兄さんは何かを発見。


「ん ? 何か落ちてる……」

「お ? ついに、財布見つけた ? 」

「いや……違う。茶封筒だ(開けて中身を確認しているであろう音が聞こえた)……やば、めぐみ ! 

 また、良いこと思いついた ! 」

「絶対にあかん事だと思うが、一応聞いてやろう。何だ ? 」

「明日の枠で、この茶封筒を戦利品として公開する ! 」

「………………兄さん」

「ん ? 」

「いっぺん死ねば、その馬鹿は治るのかな ? 」

「いや ? 多分無理だと思うぞ ? 」

「…………………………解った。でも、それ以外の物には一切触れるな。

 何も持ち帰るな。……良いね ? 」

「ういっす」


 私はもう何を言っても駄目だと諦めた。でも、この判断が間違っていたと後に激しく公開する事になるんだ。



 その部屋を出て、次が1階最後の部屋。部屋の扉を開けると同時に「あ」っと、兄さんが短い声を上げた。

 何かあったのかと思った私は、心配で声をかけたのだけど無言が続き……そして、唐突にその静寂が打ち砕かれる。ちーーーーん……っと、金属同士がぶつかりあった時の様な音が電話の向こうから聞こえて来たんだ。

 聞いた瞬間は、何の音か解らなかったけど……背筋がゾクッとするのを感じ凄く嫌な予感がした。


「は ? え ?

 何 ? ! 何の音 ? 」

「あ、悪ぃ。 なんか、入った病室に仏壇が置かれてたからつい」

「え ? マジで ? 

 今直ぐに殺しに行っても良い ? 」

「ごめんって」


 なんと兄さんは、入った病室に置かれていた仏壇のおりんを鳴らしたのだと平然と言ってのけたんだ。……鈴ってね。

 日中は魔除けなんだけど、夜中に鳴らすと呼び鈴って良くないものを呼び込んでしまう事があるんだよ。この話を教えてくれたのは、近所の寺の元住職さんで曽祖父の友人だった方。

 その元住職さんに兄さんの所業を伝えたところ……常日頃にこにこしてる優しい仏顔が、眉間にシワを寄せまるで阿修羅像の様な険しい顔つきになって一言。


「……その廃墟、今はきっと幽霊の巣窟になってるだろうね。お知り合いの人には、金輪際近付かない様に伝えておきなさい」


 ですよね~。



 で、1階の個室を全て確認し終えた兄は2階へと移動した。2階は大広間の様な部屋に、ベットが幾つも並べられていたらしい。


「広いな……わっ ! 」

「え ? 何々 ? ! 」

「いや、……え ? 

 風も無いのに、箸が床に落ちた…………え ? 何で ? ! 」


 よほど驚いたのか流石の兄さんもテンパっていて、私も電話越しだったが凄く怖かった。けど、


「何なんだ……勘弁してくれよ。……あ、財布あったわ。

 間違いない彼奴あいつのだ。じゃあ俺、帰るな。


 車乗るんで、一旦切るわ」

「え ? あ、うん。気を付けて……」


 兄さんは唐突にすんっと何時ものテンションに戻ったんだ。「お前のメンタルは鋼か ? ! 」っと、思わず心の中で突っ込んでしまったよ。





 その日は、それでお終い。翌日、私は本当に恐ろしい目に遭う事になる。

 本当に、何時いつかあの馬鹿兄を殺っ……げふんげふん。殴ってやりたい気持ちでいっぱいですよ。

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