第23話
▫︎◇▫︎
身体を動かすのも億劫に思えるくらいにぐったりとしているベアトリスは、特進クラスの女子に与えられた部屋のベッドに淑女にあるまじき格好で突っ伏していた。
あれからオリエンテーションという名の特進クラスの教師・ローガンによる地獄レッスンが行われた。
普段は眠たげにあくびをしてやる気ゼロな教師ローガンだが、本来は特進クラスの教師を受け持つことができるくらいには優秀な男だ。そんな男がやる気を出して本気で訓練を行えば、騎士団や魔法師団の訓練はもちろん、日々自己研鑽を怠っていないベアトリスでも、ぐったりと動けなくなってしまうレベルだ。
(身体中筋肉痛確定ね………)
悲惨な未来にため息をつくと、隣のベッドから悲鳴のような絶叫が聞こえた。
「じぬううううぅぅぅぅぅ!!」
隣のベッドで悲鳴を上げてビクビクと沖に上げられた魚のように悶え苦しんでいるには、ベアトリスによって特進クラスに無理矢理転入させられているマリアだ。本来の実力では、身体能力のあまりの低さによって上級クラスの授業でもやっとの彼女は、ローガンの無慈悲な体術と魔法を組み合わせた合同訓練には耐えられなかったらしい。
「………うるさいわよ、真里。流石にもう私も限界」
くあっとあくびをして、普段ならば魔法でマリアの絶叫を止めるベアトリスはうつらうつらと眠り始める。けれど、あと30分後には夕食、2時間後には肝試しが待っている。
(本当に鬼の訓練ね………)
ベッドで体力を回復していると、マリアが顔を僅かに上げてベアトリスに話しかけてきた。
「肝試しって本当に怖いのかな?私、肝試しが怖かったこと無いんだよね~」
「まあ、『阿鼻叫喚地獄の肝試し』って言われるくらいだし、まあまあ怖いんじゃないかしら」
先輩方曰く、王立魔法学院の肝試しは本気度が違うらしい。
先生方が用意するのはお化けへの変装道具ではなく、闇魔法による動く死体と本物の骸骨、そして魔法を使った木々のゆらめきや墓場などの幻惑だそうだ。毎年失神する生徒があとを立たないらしく、『阿鼻叫喚地獄の肝試し』という恐怖を誘う名前までついているらしい。
(この乙女ゲーム、吊り橋効果とかにリアリティーを持たせようとしすぎるのよね………。死亡エンドもだけど、ホラー描写がやけにリアリティー高すぎるのよ………)
げっそりと溜め息をついて、ベアトリスはベッドから起き上がる。身体中から悲鳴が聞こえるが、無視するしかない。
「そういえば、肝試しを一緒に受けるメンバーはくじ引きらしいわ。………ちゃんと王太子殿下のくじを引くのよ」
「あー、うん。分かってる」
面倒臭そうに返事をしたマリアを訝しみながらも、ベアトリスは夕食のために身支度を整え始めた。肝試しは2時間後、それまでにしっかりと心の準備を決めて、一切驚かないようにしなくてはならない。
だって、負けなしの天才公爵令嬢ベアトリス・ブラックウェルの急所が怖がりだなんてこと、知られるわけにはいかないからだ。
ベアトリスはぐっと拳を握り込んでから息を細く深く吐く。
肝試しまで2時間。着替えを終えていつでも夕食の席につけるようになったベアトリスは、己の尊厳を守るために、イメージトレーニングを開始したのだった。
ーーーコンコンコンっ、
「少しいいか?」
ノックと共に聞こえたクラウゼルの麗しい声に、ベアトリスは大きな溜め息をついてから痛む身体を叱責して扉を開けた。
「構わないわ。けれど、ここの中はだめ。廊下、もしくは空き部屋で構わないかしら」
「あぁ。構わない」
扉の向こうに立っていた彼は、ベアトリスたち同様に疲労の色を濃く醸し出していた。けれど、姿勢は真っ直ぐで、微笑んだ表情には剣呑ささえも醸し出している。先程までの訓練中に感じていたクラウゼルに対する違和感の正体に、ベアトリスは気がついた。
(さっきの彼は、ここ最近見なくなっていた仮面をフルで被っていたのね)
あまりにきつい訓練で気がつく余裕さえもなかったベアトリスだが、少し落ち着けば簡単に気がつけた。そして、彼の表情の原因にも心当たりがあった。
(迂闊すぎたわね。彼に私の違和感を悟られ、剰え調査に乗り出されてしまうまでの警戒と反応をしていただなんて………)
バッドエンドに目を向けすぎて、他のことへの注意が散漫になっていたことに深く反省を抱きながら、ベアトリスはゆっくりと微笑みの仮面を身につける。
「クラウゼル殿下。わたくし、今日は大層寂しゅうございました。短い時間ではありますが、ご一緒いただけませんこと?」
普段とは全く違う口調で彼に話しかけて甘えたベアトリスは、彼にアイコンタクトをとる。即座にベアトリスの狙いを理解した彼は、微笑みの仮面を彼との秘密の逢瀬を演じる。
「そうだな。少しの間だが、逢瀬を楽しもうか」
『2人きりになったらいつもこうですよ』というふうに、ベアトリスとクラウゼルは息ぴったりに声を掛け合う。
どこで誰が見ているか分からない。それが、この集団宿泊研修の怖いところだ。
(………どうだまくらかそうかしら)
にっこり笑う仮面の下、ベアトリスは彼にこの件から手を引いてもらう理由を考えていた。
ベアトリスは不自然に見えないように、空き部屋へと彼を誘導する。
そして、誰にも声をきかせないように、会話を悟らせないように、複雑な結界魔法繰り出した。
目の前でクラウゼルも似たような魔法を展開する。痕跡や気配察知に引っかからないように洗練に洗練を重ねた魔法は、王城に設置されている探知機にさえも引っかからないレベルだ。
「タイムリミットは5分よ」
懐中時計を懐から机の真ん中に置いたベアトリスは、ばっさりと切り捨てる。一瞬にして化けの皮を剥いだベアトリスに、クラウゼルは息を飲み、そして身体に力を入れた。
「ローガン・ウィーズリーは危険だ」
「よ~く、知っているわ」
「この件から手を引け」
真面目な顔でいう彼に、ベアトリスは苦笑する。
(考えることは、どちらも同じ。か………)
にっこりと笑ったベアトリスは、足を組んで尊大な態度を取る。
「いやよ」
ぐっと息を呑んだ彼に向けて妖艶に微笑みながら、ベアトリスはぷっくりとしたさくら色のくちびるから言葉を紡ぐ。
「これは私の獲物。横取りなんて無粋な真似をしようとしている王太子殿下の方が手を引くべきだわ」
「それとこれとはっ、」
「話が別なんてことは言わせないわ。そもそも、私は自分の命を粗末にしても構わないけれど、王子、ましてや王太子であるあなたはそれを許されない立場なはずよ。この件は私が受け持つわ」
きっぱりと言うと、彼はぐっと表情を歪めた。
「俺は俺で勝手に、」
「動かれると邪魔よ。完璧に手を引いてちょうだい」
「なっ、」
「………この件はお父さまと国王陛下が協力してなお、簡単に手出しできない案件よ。あなたは指を咥えて黙っておきなさい。これは私の獲物よ」
ベアトリスはそれだけを言うと、懐中時計を胸元にしまってにっこりと笑みの仮面を身につけて立ち上がる。
「集団宿泊研修、何かあれば仲間を見殺しにしてでも生き残りなさい。それがあなたの“仕事”よ」
ぱちんと魔法を解除して、ベアトリスはマリアの待つ部屋へと向かう。
廊下に灯される灯りは、ゆらゆらと不安げにゆらめいていた。
「んー、あぁ!お帰り、梨瑞っち!!」
「ただいま、真里」
部屋に戻ると脳天気なマリアが出迎えてくれる。ベアトリスはそのことに安堵しながらも、ふっと息を吐いた。
「ねえ、ローガン先生のゲーム事情って知ってる?」
「え?ローガン先生?先生って攻略キャラなの?」
「あー、ううん。なんでもない」
下手なことを言ってマリアが相手に勘付かれるような行動を取ることを恐れて、ベアトリスは取り繕った笑みを浮かべて首を振る。
ローガン・ウィーズリー。
肩下くらいの癖っ毛なミルクティーブラウンの髪いつも後ろで雑に縛っていて、緑と青と水色のグラデーションの瞳を持つ非公式の王弟であり、ベアトリスとクラウゼルの父の弟にして叔父にあたる男。
魔法属性は草と水と氷。ファンブック曰く本当はもう1つ属性を持っているらしいが、それはのちのちのゲーム展開によって明かされるが故に、1作目を終えてすぐに死んでしまったベアトリスには、彼の最後の属性を知る術がない。
高貴な顔立ちの彼は、子爵でありながら特進クラスの教師を務め上げる、超絶実力者だ。今のベアトリスが全力でぶつかったとしても、100パーセント勝てる要素がない。入学早々に手合わせをしてもらったベアトリスは、それをよくよく理解している。
攻略対象としては隠しキャラで、ファンの間ではバッドエンドやノーマルエンドのあまりの酷さに“サイコパス野郎の筆舌し難い『最悪』ルート”と呼ばれるくらいには、彼のルートには危険が詰まっている。
色々倫理観がぶっ飛んでいる彼の過去は、ほとんど明かされていない。けれど、1作目でも僅かに明かされていることがある。
それは、ーーー彼が奴隷と変わらぬぐらいに虐げられてきたことだ。
彼の過去は明かされているだけでもとても壮絶なものだ。
幼少期は望まれぬ子だった故に、実の母親に虐げられ、食事も与えられずただただ暴力を振るわれていたらしい。
乙女ゲームでは、食事にありつけない環境に対する恐怖としてこの描写が描かれている。ヒロインマリアがそんな彼のために、美味しい料理を手がけると言う描写は彼の倫理観無視を突っ走るルートに似合わず、御涙頂戴だったのをベアトリスはよく覚えている。
年少期には彼は奴隷になる。魔法を暴走させ、実の母を魔法で惨殺し、その魔法の素質に目をつけた実の父親、つまり先代国王にしてベアトリスの祖父は彼を兵器として利用するために奴隷魔術を刻んだそうだ。
乙女ゲームでは、ヒロインマリアとローガンがとある事件に巻き込まれた時、服がびしょ濡れになってローガンが上半身裸になる場面で、この過去が明かされる。彼の背中には、毒蛇が渦巻く禍々しい魔法陣が大きく刻まれている。先代国王が死去してなお残り、そして彼を縛り続けるこの魔法陣はあまりの気味悪さに、プレイヤーたちの中で賛否両論が起こったものだ。
年少期以降の彼のことは、ゲームでは明かされていない。唯一明かされているのは、先代国王によって子爵位を渡され、彼が教師になったということだけだ。
乙女ゲームの知識だけに頼り切りになるのは良くないと考えたベアトリスが探りを入れたこともあったが、父さまあまりの狼狽に、ベアトリスは聞き出せずにいる。国王に直訴する勇気はない故に、彼についての調査は行き詰まっているというのが現状だ。
やっぱり、彼は謎が多い。
ベアトリスはご飯までの時間が10分になったのを時計で確認して、ゆっくり腰掛けていたソファーから立ち上がった。
「真里、そろそろご飯に行くわよ」
「もうそんな時間~?」
「えぇ。シャキッとしなさい」
「は~い」
あまりにきつい訓練のせいで、全身ぼろぼろなマリアは、けれど、ベアトリスの言いつけをちゃんと守って令嬢らしいシャツにロングスカートという部屋着で粛々と食堂へと向かう。ベアトリスは彼女の横を歩く傍ら、思考を巡らせていた。
(王太子殿下は、どこまでお気づきなのかしら。あの口調では、彼が王弟だと気がついているのかすらもあやふやね。正直に言って、ただ彼が危険な予感がするから調査しようと思った矢先、私が先に手を出していて心配したと言った方が腑に落ちる感じだったわ)
食堂の扉は開け放たれていて、中からはセオドリクとノアの揉めている声が聞こえる。食器の持ち方がどうこう言っているが、正直に言ってなんだかどうでもいい気がする。
ぱちんと頬を強めに叩いて、方針について迷いに迷っているベアトリスは心を入れ替えた。
(食堂には、間違いなくローガン先生がいらっしゃる。気を引き締めて、警戒していることを悟らせないようにしなくちゃ)
「ベアトリスさまほっぺた痛そうですよ~。大丈夫ですか?」
「えぇ、問題ないわ」
食堂の中に入ると、ベアトリスとマリアを蝋燭の優しい光が迎え入れる。暖かな食事から立つ優しく美味しそうな匂いに誘われて、ベアトリスは相好を緩めた。
(腹が減っては戦はできぬと言うし、食事くらい、たくさん食べても問題ないわよね)
この時のベアトリスは知らない。
この食事こそが、今回の事件の全ての発端であると言うことを………。
「ご機嫌よう、皆さま。それで?何をそんな小さな事で争っておりますの?めめっちい」
食堂入室早々にばっさりと切り捨てたベアトリスに、食堂で食事を注いでいた男性組がひくっと頬を引きつかせる。普段は眠そうなローガンまでもが参戦して揉めている食事の原因を見つめながら、ベアトリスはわざと大きなため息をつく。
「キースさま、最初は全員同じ量を注いでください。余った分を食べ終わった人からおかわりにすれば、そこまで揉めずに済むはずです」
「分かった」
中央で食缶を前に固まっていたキースに指示を出したベアトリスは、もめているそれぞれの原因について口を出していく。
「ノアさま、苦手な野菜もちゃんと食べてください。あぁ、そういえば、人参には美容効果があると聞きますし、その美しい美肌を保つためには、しっかりと食した方がいいのではないですか?」
「あうっ、」
「セオドリクさま、お皿のわずかな汚れや持ち方等でぶーぶーぶーぶー文句を言わないでください。あなたは豚か何かですか?というか、そんな些細な事で文句を言わないでください。戦場では、もっと汚れたお皿や適当なご飯が当たり前です」
「………わかりました」
「王太子殿下、こういう場で最も諫めなければならない立場なのはあなたです。何を横からぼーっと眺めているのです。眺めている暇があったら動いてください。この、ポンコツ」
「………あぁ」
生徒陣営に文句を言い切ったところで、ベアトリスはかつっとヒールを鳴らしてローガンの方を振り返る。教師でありながら、生徒間の揉め事に加わった挙句、眠たそうにあくびをしている彼には、言いたいことが山ほどある。ベアトリスはにっこり笑って、彼の前に仁王立ちする。
「ローガン先生、少々お時間をいただいてもよろしいですか?」
ベアトリスは息を深く吸って、彼をきっと睨みつけた。
「まず初めに、教師ともあろう人間が、子どもたちの喧嘩に混ざらないでください!諌めるのならまだしも、なぜ堂々と喧嘩に混ざり、挙句の果てに負けかけているのですか!?教師失格と子供たちから詰られたいのですか?それならどうぞわたくしに言ってくださいな。じゃんじゃか普段の文句を垂れ流して差し上げますわ!2つ目に、何故皿がどうこうって文句言ってるんですか!ここのお皿は全員共同です。そもそも、マイ皿持ってくる方がおかしいんですよ。先生以外誰1人持ってきてないじゃないですか。というか、ここでは集団で過ごすということの難しさなどを学ぶ場ですよね?なんで先生が1番集団行動できてないんですか!そして最後に、そのだらしない格好と態度をどうにかしてください!教師は生徒へのお手本です。その教師が!なぜそんな格好でブラブラできるのですか!?部屋着ならまだしも、スウェット姿で上半身裸なんて論外ですよ!というか、お風呂って肝試しの後ですよね!?なんで勝手に先に入っているのですか!ルール無視のオンパレードですよね?しかも、今までは言うのを我慢していましたが、ローガン先生は寝すぎです。隙間時間を見つけるたびに、どこでもかしこでも寝るのはやめてください!というか、隙間時間じゃない時間にも眠っていらっしゃいますよね?放任主義にも限度というものが存在しています。ちゃんと、節度を守ってお過ごし下さいますよう、お願いいたしますわ!!」
一息で言い切ったベアトリスは、はぁはぁと肩で息をしながら、ローガンに詰め寄る。
「まず初めば生活リズムを正しく変更し、服をしっかりと身につけ、髪を清潔感のある長さに切り揃えてください!!以上!!」
なぜかぐったりとなってしなったベアトリスは、もう嫌だと呟きながら、食事をとりにお部屋の中央へと向かった。
「キースさま、先程の器と量が異なっていますよ。ちゃんと注いでください」
きのこスープとフランスパン、ハンバーグとサラダを注いでいるキースにお小言をこぼしながら、ベアトリスは美味しそうに湯気を立てている食事に視線を向けた。家では食べないような庶民的なメニューが、地域の素材で作られているというまさに絶対食べなきゃ損という食事に、ベアトリスはメロメロだ。地産地消というのもまた、環境に優しくていい。
席に戻ったベアトリスは、マリアと共に手を合わせてから食事を始める。男子組は足りない食事を補うためのおかわりを求めて、もう食べ始めている。教育係たちがいない故にできる暴挙を楽しんでいる子供たちに溜め息をつきながら、ベアトリスは初日の夕食にも関わらず疲れ果ててしまっている現状にうんざりしていた。
「美味しいですね、ベアトリスさま!!」
「えぇ。なかなか美味だわ。このきのこ、食べたことのないものだけれど、なかなか癖になる味ね。今度お父さまにお願いしてお取り寄せしてもらいましょう」
ご機嫌にスープを飲んでいると、横からスープ皿を渡された。
ベアトリスの横に座っているのはクラウゼルだ。彼はスープ皿を睨みつけるようにして眉間に皺を寄せている。
「?」
「好みじゃないからやる。サラダを交換でもらってもいいか?」
「構わないけれど………」
よっぽど好みではなかったらしい彼は、サラダを口直しに、パンのおかわりを食べていた。食欲旺盛な男子生徒たちに少し引いていると、生徒たちよりも多い量の食事を難なく飲み込んでいるローガンが視界に入った。
(ローガン先生、あまりにも食べ過ぎじゃないかしら)
スプーンを使って丁寧に食事をしながら周囲を観察している最中、何度かローガンと視線があった。気まずくならないようにある程度で視線を逸らすことを繰り返しているが、やっぱり視線がかちあう回数がおかしい。
(………気づかれたかもしれないわね)
嫌な現実に気がつきながらも、ベアトリスは食事を続けた。視線の範囲内で揉めているセオドリクやノアを諌めながらの食事は正直骨が折れるが、ベアトリス以外誰も注意しないのだから、ベアトリスが1人でやるしかない。
(っ!………このフランスパン、なかなか美味しいわね)
クラウゼルが夢中で食べていた理由がわかるくらいに美味しいパンを頬張り始めたベアトリスは、途端に機嫌が良くなって夢中で食事し始めた。美味しいのにどこか微妙な味がするきのこスープよりも、しっかりと食欲をそそるフランスパンは、ベアトリスの舌に合格をもらった。
「………梨瑞もやっぱり元日本人だよね………。美食に目がない」
そうベアトリス以外に聞こえない声の大きさで言いながらも、マリアは大きな口を開けて美味しそうにフランスパンを食べていた。
「あなたこそ、美食に目が無さすぎると思うわよ」
むぐむぐと問答無用で消費される食事たちはあっという間になくなって、食事の時間は終了を告げた。
「「「え!デザートは!?」」」
「そんなものないわよ!!」
声を揃えて悲痛な叫び声を上げたマリア、ノア、ローガンに、満腹で体力が回復したベアトリスがキレッキレのツッコミを入れたのは、また別のお話である。
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予約更新の日時を間違えており、数日間更新できていませんでした。
申し訳ございません。
ここからは毎朝6時に予約更新で最終話まで向かう予定です。
ご迷惑をおかけいたしました。
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