第4話
三年もの間、何も音沙汰もなかった人間が突如として姿を現した。若菜は仕事終わりにすぐに同期の真希に連絡し、詳細な情報を聞いた。
『二時くらいだったかな…? ちょっと息抜きに外出たら、松村君が駐車場の外にいたの』
「見間違いじゃなく?」
『見間違いじゃないと思う。あそこまで松村君に似てる人見たことないもん』
「そう…」
そこまで言うならそうなのだろう。若菜は真希の言葉を信用した。
彼はもうこの世にはいないのではないかと、薄々思っていた。だが、三年の時を経て彼は姿を現した。
なんで今になってーー
若菜が疑問に思ったのはそこだ。何故、彼は三年間姿を見せずに、再び姿を現したのか。三年間姿を見せれない事情があったのか。
(なにかの犯罪に巻き込まれたとか?)
最初に思ったのはそこだ。けど、彼しか事情を知らないから結局のところ考えてもわからないのだ。
やはり会って確かめるしかない。
若菜はそう決意して、三年間動かなかった彼の連絡先にラインを入れた。返事が来るかはわからないが。
◆◆◆
優也が姿を現してから一週間が過ぎた。
彼の生存報告はすぐにあらゆる方面に出回った。家族、友人、警察…。この三年もの間、彼を探し求めていた人たちとってはこの上ない朗報だった。
すぐに警察は動いた。それは優也の生存を確かめるための捜査だ。失踪して数ヶ月は行なってくれてはいたが、最近ではもう諦めに入っていた。しかし、今回は目撃情報もあることから、すぐに事は片付くだろうと思えた。
一方、若菜は一つ気がかりなことがあった。それは優也のラインのことだ。一週間前に連絡を入れたのはいいものの、一向に連絡がつかない。
いや、そもそも三年間行方不明だったから、スマートフォンも持ってないのは当然か。失踪当時、スマホの位置情報は確認されなかったから、電源を切って放置もしくは捨てたのかもしれない。いずれにしろ、彼に連絡を取るのは難しいと見れた。
ならどうやって彼を探すか…。一番簡単なのは自分は何もしないで、警察に任せることだ。彼の身柄を確保してくれさえすれば、必然的に会える。
もう一つの案は、自力で探すことだが、これは難しすぎる。彼の家を訪ねては街を歩いて探すなんて体力の無駄でしかなさそうだ。やっぱり警察に任せた方がいい。
すんなりと事態が終わってくれればいいのだが…。そう若菜は思うが、心の奥底ではまだこの状況は序盤でしかないのではないかという不安もある。
そしてその不安が、見事に的中することなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます