第17話 遺恨を残さないための方法
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眼前から
「おっと。」
カレンが展開した魔法障壁で防がれた。
「油断も隙もないわね。」
「大した腕だ。」
「ありがとう。あなたの技は研究済みだから、そうそう効かないわよ。得意の古代魔法でも出してみるといいんじゃない?」
自信満々に言うカレンのことだ。何か対策をしているのだろう。
「本当に手が早いよね。でも、だからこそやりがいがあるってとこかな。」
アルファがにこやかにそう言う。
「ひとつ聞きたい。俺が狙われる罪状を知っているなら教えてくれ。」
「言ったはずだよ。反逆罪だって。」
「俺が何をしたかは聞いていないのか?」
「何年か前に、王国がエルフの住む地域に侵攻したよね。あのときに王国軍を追い返した謎の男がいたはずだよ。」
「それが俺だと?」
「違うの?」
確かにその男は俺だ。
だが、あれは王弟が独断で行ったもので、後に更迭されるはめになっている。
エルフの占有地にある資源を狙っての強行で、無断で兵を率いたことにより国王の怒りをかった。正体がバレたにせよ、今更掘り起こすのはおかしな話だ。そもそも国が関与していない私的な侵攻に過ぎない。結論からいえば俺が相当邪魔らしい。
国王が病で倒れたのも初耳だったが、それを機に玉座を手に入れようとしての動きなのだろう。あの王弟は手段を問わない。結果として国益を増進させるのであれば、すべてが許されるという主張を唱えることが多いが、根底には自己顕示欲の塊だというのがある。
もともと能力や才能に秀でた人物ではあるが、歳を経るごとに傲慢で自分勝手な言動が目立つようになった。冷血なところもあり、兄である国王の病にも何らかの関与をしている可能性が考えられる。
「どうだろうな。」
「ふふん、余裕ぶっていられるのも今のうちよ。これがあれば、あなたの
カレンがそう言って紫の水晶を取り出した。
「アメジスタルか?」
「ええ、この水晶は
蝙蝠は
アメジスタルは天然石であるアメジストに似ていることからその名がついた。アメジスタルは人工石で空間に安定をもたらすための装置といえる。それに魔力を流すことで特性を増長させ、カレンが言ったような効果を出すことができるのだ。
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闇属性の術式崩壊呪法を放った。
カレンが展開した魔法障壁は精霊魔法の一種だ。土や風の精霊に依存したそれらは深い闇を嫌う。
「闇属性!?」
「少し勘違いしているようだな。」
「勘違いですって!?」
「
属性魔法の源流とは無である。あらゆる事象は隔てなくひとつの源から生まれている。それこそが無属性と呼ばれる
「だから···何?」
話している間にもカレンの魔法障壁は瓦解していってる。間もなく完全に消滅するだろう。
「
"
視覚で捉えられないほど極細のイビルレイがカレンの眉間を貫いた。
「悪いが、敵対されたら遺恨を残さないために殲滅することにしている。」
「「「!?」」」
カレンが倒れたことでアルファたちの視線がそれた。その刹那、同じように眉間を貫いて三人を倒す。
ジェイミーが膝を崩した。
腹部が出血で真っ赤に染まっている。
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俺は元の自分に戻ってカレンの傷を修復した。
レストレーションは回復魔法ではなく、文字通り状態を復元させる時限操作の部類に入る。彼女はそれだけ深手だったのだ。
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