第12話 冒険者ギルドで依頼を受ける
ソロの冒険者というのは微妙な存在だ。
下手な近づき方をすると、盗み狙いや盗賊の手引き役だと勘ぐられる可能性がある。
それだけ単独で活動する冒険者は不審がられる可能性があるということだ。駆け出しで仲間がいないと思われる可能性もあるが、俺のことを見てそう思う奴はほぼいない。体格や立たずまいで一定の経験値があると見られるだろう。
しかし、それを上手く利用することはできた。
朝食を食べ終えた俺は受付カウンターへと向かう。
「失礼。旅の途中なのですが、私にもこなせる依頼が何かないでしょうか?」
カウンターにいる受付嬢に冒険者証を手渡してそう言った。チャラ男に見えるのはマイナス要素が多いので言葉は堅苦しくしている。
「!?」
「どうかされました?」
受付嬢は俺の顔をじっと見て頬を赤くしていた。
よくある光景だ。
エルフの血をひいているため、俺の顔を見て似たような反応をする女性は多い。普通に考えれば、端正な容姿を持って生まれたことは幸せなことなのかもしれない。しかし、面倒ごとも多いのであまり誇らしいことではなかった。
「あ···失礼しました。アルフィリオン様ですね。少しお待ちください。」
アルフィリオンというのは俺のセカンドネームだ。とはいっても、ハイエルフの血を継ぐ者としての名前のため普段は使っていない。
俺はいざというときのために3つの冒険者証を所持している。
ひとつは討伐者レヴェナント、そしてもうひとつがアルフィリオン名義、最後が実名ドレッドのものだ。
冒険者になるためには身元保証人などはいらない。活動を通して信用と実績を積み上げていくので、高ランクになると自然に身元を保証するものとなる。
どちらかといえば低ランクの時ほど素行に注意しなければ抹消されやすく、高ランクになると監査が入り普段の行いがひどいと犯罪者として罪を問われたりする。
唯一の例外が最上位のアダマンタスだ。国境を越える時の検札はスルー、依頼以外で殺人などを犯しても安易に断罪はされない。また、地位としても王族や公爵級の扱いを持って様々なことに優遇されたりするのだ。
レヴェナントはアダマンタス級、実名のものはコランダム級で上級冒険者に位置づけされる。アルフィリオンはトパーズ級で唯一の中堅ランクとなり、その分目立たずに動きやすいのである。
アルフィリオンという名はエルフの言葉で"
因みに、ドレッドロックスの意味は"凶神への畏怖"である。この名をつけた者の俺への暗い感情が浮き彫りになる内容といえるだろう。
「お待たせしました。」
受付嬢が戻って来たので黙って話を聞くことにした。
「アルフィリオン様はトパーズランクで
冒険者ギルドでは、掲示板にある依頼の他にも数多の案件を抱えている。それらは大々的には出せない任務が多かったりもするのだ。
護衛依頼はあまり公にはされないことが多い。それは盗賊や転売屋とつるんだ悪質な冒険者の食い物にされないための措置である。
アルフィリオン名義の冒険者ステータスは片手間にしか伸ばしていない。しかし、回復や支援がメインのものとなっているため、ソロではあるが他のパーティーから重宝されやすいものだといえた。
商隊の護衛は冒険者個人よりもギルドの信頼を大きく左右するものだ。
商人からすれば、何も起きずに完遂してもらわなければ商品だけでなく命まで失う可能性がある。それに加えて護衛の失敗は商業ギルドとの軋轢を生む。
依頼の金額に応じた対応ができる冒険者を斡旋することが多く、今回の依頼に関しては中堅冒険者を2~3パーティー分の人員で求められているようだ。
本来、護衛任務は守るべき対象者の三倍の人員を要するといわれている。しかし、そこまでの予算が出ないことが多く、負傷時の回復や後方での防護魔法が使える者は需要が高かった。
「行先はどちらへ?」
「王都になります。」
「了解しました。こちらの希望とも合致しそうなので引き受けます。」
報酬額などをきっちりと確認して依頼を受けることにした。今回は王都までの移動のカムフラージュとして依頼を受けるが、報酬などの条件を確認せずに引き受けたとなるといらぬ詮索を生むのでその辺りは必然だといえる。
「邪魔だ!」
護衛任務のために集合場所に向かっていると、ひとりの冒険者が12~13歳くらいの少年の背中を蹴るのを目撃した。
少し横暴だが、よくある光景でもある。
冒険者は学のない粗暴な者が多い。教養があり、気遣いのできる者は接客業でもやる方が命の危険もなく生活も安定する。
冒険者になる者は概ねふたつに別れ、成功をおさめるためになる者と他に行き場がなくてなる者に大別されるのだ。
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