箱
藤井万里
箱
魚島や宿のテレビを揺すりたる
防風に交番ほど近くありぬ
雨雲がゆれて雨降る磯遊び
寄居虫の最後に弱き脚出づる
ふつくらと波に魚ゐる葱坊主
花束に底なかりけり鳥の恋
釋奠や揚羽のやうな蛾のやうな
宿の子の石鹼吹いてはよく漱ぎ
欲しくなるまで藤棚に憩ひけり
金魚など見てしまひたる真昼かな
いつ仕舞ふとなく籐椅子海に向く
ソフトクリーム噛むほどのものならず
この宿や穴子綺麗に煮てくれし
帚木をかすめ望遠レンズ過ぐ
蚰蜒を正面にしてひとりの子
屑籠の上に水着の干してあり
また別の家族が水着干しに来る
網戸なきこの一部屋を惜しみけり
夜釣して箱のマッチの大き音
握る手に灯虫の気配してをりぬ
箱 藤井万里 @fbi_haiku
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