第17話 士幌

士幌


清水でガソリンスタンドを見つけ給油すると次に入れるのは阿寒湖かそれとも弟子屈か。

どちらにしても摩周湖まで行くのに俺のバイクだと後1回ガソリンを入れないとたどり着くことができない。

士幌から上士幌へとルートを進んで行く、そして足寄へ。

ここは言わずと知れたあの歌手の出身地、ちなみに俺はこの場所を通りすぎるだけ。

10数回訪れたが未だにここで観光した事は無い、一度名物の親父さんに会ってみたいと思ったこともあるのだが、最速ツーリングには全く関係が無いのでいつもスルーしている。


道はややアップダウンを繰り返すがほぼ右も左も牧草地か又はジャガイモ畑。

時折トウモロコシ畑が広がっていたりするが、その規模は本州ではありえない規模だ。

ここまでくるとライダーにはほとんど出くわす事が無い、たまにGSを見るとガソリンを入れているライダーがいるのだが。

俺が進んできた道は少し彼らのルートから外れているのかもしれない、やはり最速を目指すなら旭川ルートの方が早いのかもしれないが。

それが面白いかというと、いや俺は別に最速を目指していると言っても1番をとろうとは思っていない。

いうなれば自己の最速であり他人より上と言う事じゃない、今までならばもっと時間をかけてこの場所へ来たはず。

始めて来た時は道東まで3日かけて移動して来た、それをたった1日で来ようと言うのだから、それだけでも最速なのだ。


既に午後4時を廻り徐々に太陽は沈み始めて行く、できれば午後6時前に到着したいところだが、ここからは少し山道になって行く。

道路の両側には本州では見られないぐらい大きなフキの葉が見えるが風の匂いもこのフキの香りを含んでいたりする。

阿寒湖で俺は上り最後のガソリンを給油する、ここまでで道内700k近くを走破したことになる。

阿寒湖からは下りのワインディング、気を付けなければいけないのは何も人や車だけではない。

この地区から一段と多くなってくるのは野生のシカ。

北海道で出くわす可能性のある動物の一つ、しかもその数は熊より断然多い。

そして昔よりどんどん増えていると言う、もちろん野生のシカであり道路に出てくれば通行の邪魔になる。


阿寒湖から弟子屈への下りワイディングは鹿が出やすいのと北海道のわりに道が狭いことによる。

そうこの下り道は本州の峠道に近い、だからスピードを押さえないと鹿に出くわしたときに止まり切れず初めてのシカを轢いてしまう事に。

まあ、ほとんどの場合そこまではならないと思うが無理やり前の車を抜くのだけは待っておいた方が無難だと思う。

ちなみに俺はこの下り坂ではねられた鹿を見た事が有るし、こけたバイクも見た事が有る。

そこを無事通り抜けたならようやく見えてくるだろう山のようなものが一つ。

弟子屈に着けばもう目の前だ、摩周湖へはそのまま道路を走って行くだけ。

そして頂上の展望台へとたどり着けば今回のゴールとなる、天気が良ければその湖面が見えるはずなのだがすでに日が陰ってきており。

午後7時近くになればもう辺りは暗く、この場所へ来ているライダーもまばらになっていた。

総走行距離1389k、走破時間18時間30分(船4時間含む)

今回泊まる場所はすでに予約してある、途中で少し遅れると連絡はしておいた。

宿は少し古いが、このホテルは湯治の年寄りが多く利用するのでかなり安かったりする。

金欠の人にはお勧めだ、まあ近場には川湯にキャンプ場もあるので、もっとケチるのならそちらへ行ってみるとよい。

勿論金が余っているのならもっとグレードの高い三つ星ホテルはいくつもある。

どちらにしても事前に予約しておいた方が無難だろう。

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