第16話 道道35
道道35
俺のお気に入りのルート、今は国道274になり誰もが通る道東の主要国道。
この道を通らずとも摩周湖へは行ける、もう一つのルートは帯広へ向かう国道38号線を進む道、どちらの方が早いかはライダーの気質による所だろう、結局は足寄で合流する形になるのだが。
それじゃなんでわざわざ俺は鹿追への道へ進路を取るのかというと、この道の途中で10k以上の直線があるから。
ただ真っ直ぐなわけでは無いが、10k以上先まで続く直線を一度走ってみると癖になる。
走行距離的にはどちらのルートでも殆ど変わらない、だが北海道の牧歌的な景色を味わうのなら国道274を然別湖手前で右折することをお勧めする。
その道は途中に自衛隊の基地があるが、暇があるなら飾ってある戦車を写真に収めるのも良いだろう、たまに隊員がこちらへ駆け寄って来る時もあるが。
「写真撮られてます?」
「あ はい」
「見学なさいます?」
「良いんですか?」
「できますよ」
「いや今回は遠慮しておきます」
別に写真を撮って怒られるわけでは無い、もしかしたら手厚い歓迎をしてくれるかも。
だが俺は基地を横目に先を急ぐ、所々に防風林だろうか不自然に植えられた樹木が道のわきに見えるのが分かる。
道は何度か曲がって行くが、途中で標識が現れるはず、まっすぐ行くと然別湖 曲がると士幌から上士幌。
俺は迷わず士幌方面へ右折する、そこからも見えると思うが北海道あるある畜産農場のサイロ。
そこは冬場の牛の餌である牧草を貯めておく場所。
今でもそれを使用しているかは分からないが、現在は牧草を刈り取るとあの黒いビニールで包み大きな塊にしておくので、サイロは別なことに使用していると思われる。
そして国道274を走り出すと判る、マジで直線 ずっと先までまっすぐの道、所々アップダウンがあるが本州でこの直線はあり得ない。
まずはアクセルを回すが平均スピードはあまり上げないでおくがそれでもかなり出せる道だと言っておく。
実はこの道、俺達ライダー以外にとっては農家の皆さんが利用する農道でもある。
走って行くと途中で先ほど刈り入れた後の牧草の塊を運んでいるトラックに出くわしたり、時折自衛隊の輸送車に出くわしたりする。
そして気持ちよく飛ばしていると看板が目に入る(牛横断注意)右も左も牧草地、畜産農家の土地が道の左右にまたがっている場所がある。
そこがアップダウンの下に位置する場所だとどうなるか、まあ走ってみればわかるのだが。
丘の頂上に達しないと丘の下を見る事が出来ない、もしその頂上を飛んでしまうぐらいのスピードで走っていたなら丘の下を走るトラックも乗用車も障害物になりえる牛が横断している事さえ分からない。
だから、登り坂が有ればその先の下り坂になる手前でスピードは落とす、何故ならそこは横道もある場所だから。
勿論信号も一時停止の看板もない、田舎の道でこんな見通しの良い場所で事故る理由はいつの間にかスピードを出し過ぎてしまいいつの間にか見落とすことが増えるから、本州ではありえない道路状況、それがどういうことに繋がるのか走ってみるまでは分からない。
まあそれでも高速道路と同じぐらいのスピードは出せたりするのだが、それらは自己責任であり信号が無い=飛ばし放題という分けでもないと覚えておいて欲しい。
この道の途中にはパーキングエリアがある、ちょうど道の真ん中アップダウンが終わったあたり。
そこには駐車場と自販機、そしてトイレが有るので俺はいつもここで少し休む。
バイクをとめてヘルメットを取り、自然の音を感じようとするのだが、耳には先ほどまでのバイクのエンジン音と風を切る音が残り、しばし耳鳴りはやみそうにない。
ここにはトイレもあるので当然のことながら利用する、別に小用ぐらいどこの道端でしようとも誰も文句は言わないような場所ではあるが。
都会育ちのライダーには一度そこにトイレがあると判ればそこまで我慢するものだ。
折角用意されたパーキングエリア使わせてもらう事にしよう。
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