第5話 真夜中

真夜中


ツーリングの時、俺はバイクの後部にネットを取り付けていた伸びチジミする大きめのネット、そこにはビニールの風呂敷、いやズタ袋と言った方が良いのか、ビニール加工されている大きな袋で厚みも1ミリはあるやつだ、そいつに着替えやGパン、そしてウィンドブレイカーと下着や雨合羽などを詰め込む。

要するに直ぐ使わない道具はズタ袋に、すぐ使うやつはタンクバックにと言う風に分けて積み込む。

俺の戦闘服は当時革ジャンと皮パン、夏でもそれは変わらない。

そして指無しの手袋とバイク用ブーツ、その当時ヘルメットはシンプソンだったかな。

シールドは2種類用意した、透明な奴とダークな奴、ツーリングの時は昼間と夜はいちいち交換していたりする。

シールドもよくプラスティク板を加工して作ったりしたものだ、買うと1枚2000円以上する。

プラ板は1枚1000円で同じ大きさのシールドが3枚は取れる、節約というよりそういうこだわりと言って良い。

作るにはそれなりの道具が無いとできないと言っておこう。

腰にはウエストバック、バイク用のウエストバックは少し大きめを手に入れる。

中には財布や小銭、そしてサングラスや煙草などを入れる、今ではそれも必要なくなっているが。

昔は皆当たり前のように煙草を吸っていたのは今でも覚えている。

バイクにまたがるとバックミラーやヘッドライトなどを点検、もちろんタイヤはこの日の為に前後共に新品に変えていたりする。

ガソリンや空気圧のチェックは前日にGSにて行っており、当日は出発するだけだ。


7月6日23時45分バイクのエンジンに火を入れる、V4の独特なサウンドがコンクリートの壁に反射して俺の心臓が早鐘を打つ。

住宅街に住んでいるなら夜中の零時出発は避けたいところだろうが、別にどこかの集合管を入れているわけでもなかったし、1分も待たずに出発するので五月蠅いと思われるのはそれほど長い時間じゃない。

タコメーターが800回転で安定すると同時にギヤを1速に入れ夜の通りへと出て行く。

その当時まだ外環道などと言う物は無く、高速への入口は国立府中インターかそれとも調布まで行くか。

どちらでも中央高速分の料金を余分に取られたが、1年に1回のツーリングなのにそれを気にする奴は俺ぐらいか。

ケチと言われても仕方ないが、できるだけ無駄な出費はしたくないのであれば世田谷から入った方が良いのかもしれない。

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