連作、生活や日常の短歌です。

蛾猫

生活と日常

あたしたちずっと友達 ダイエット放棄する日を破滅と呼ぼう


内頬のおなじとこを噛む癖がありこれほど声をあげない自傷


置き場所を忘れて予想で当てている 過去のわたしと勝負をしてる


器にて卵はまっぷたつに割れた 破壊衝動が拍子抜けする


まどろんで優しくわたしを撫でた日に夢で誰かを殺したらしい


もうそれはふつうに歌えよってくらいやかましかった鼻歌、また、さ


克服を幸福と打ち間違えて失ったものを思い出せない


氷砂糖つめたくないこと驚いてたしかめていたゆびが甘くて


おそろしいほどに綺麗な顔面でメロンの網目の話とかする


その場しのぎの息継ぎたしなめられている クローゼットで雪崩がおこる


好きな色があるんじゃなくて、その奥に染みついた思い出を選んでいたの


べつべつの時間を過ごす昼下がりきみのマリンバを背中で聴いた


髪を梳く おまじないとか信じない でもこれにしか縋れない 梳く


手を伸ばしたい日のために居てください カロリーメイトの買える自販機


この通り好きだったんだ、この家の、犬がね、あれ、もういない、んだ


壇上で一礼、のあとのその笑顔 ミルク・クラウンほどの一瞬


“電線が五線譜ならばあそこのにならぶ鳥たちは四拍子だね”


子供部屋、蓄光塗料の名を知って 消えた花火に気づけないこと


夜遅く祖母が手折ったチューペット向こう数分の寝れない理由


もうすこし、で栞をはさむ 晴れた日の午後に読み終わりたい本だから

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連作、生活や日常の短歌です。 蛾猫 @MothAnfCat

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