Ep.7
ヒカリに自宅まで送ってもらう途中。道はT字路の交差点の信号が赤に変わる。
そのタイミングで、
「ねぇ、ヒカリ。私たち、一緒に同じ家に住まない?」
ヒカリは信号から目を離さないまま言う。
「それって、つまり同棲生活を始めようってこと?」
「そういうこと」
「良いよ。それじゃあ、新居探しを始めないとね、先ずは」
「ありがとう。そうだね、このまま帰る前に、不動産屋さんに寄りたいな」
「良いよ。はしごしよう」
不動産屋を何件かはしごした2人は、そこそこ安くてキングサイズのベッドを余裕で置ける広さの寝室や、カウンターキッチンがある2DKの部屋に決めて、すぐに契約して引っ越した。
2人の新居は"シープ荘"というアパートの3階の角部屋だ。
電脳世界には建物内外に虫は出ないのが利点だ。
ヒカリから教えられるまでは知らず、それまでずっと新築のタワーマンションの27階に住んでいたために、新居もタワマンを強く希望していたが、ヒカリのそんな話を聴いて、アパートに住むことに決めたのだ。
2日後の夜遅くに、ヒカリの携帯の着信音が鳴り出し、ヒカリが甘露子のそばを離れて起き上がり、寝室を出ていった。
ひとりぼっちになった甘露子はうさぎの抱きぬいぐるみを抱き寄せて、寝室の外の話し声に耳をすます。
寝ているフリをしながらずっと聴いていると、どうやら、ホワイトな世界に帰ってきたイリアーナと話しているようだ。
会話の内容は、仕事に関することだったらしく、ヒカリは丁寧に優しく教えたようだ。
ヒカリにとっては仕方の無いことかもしれないが、甘露子は窓辺におへそを向けて、アイマスクをつけて寝ることにした。
しかし、甘露子のこころのモヤはまた広がっていくばかりだ。
どれだけ羊を数えたところで寝れるわけはなかった。
話し声が聴こえなくなり、ヒカリが寝室に戻ってベッドで寝始めたのが午前4時だ。
これはヒカリに背を向けて寝ている甘露子の腕時計に表示されていた時刻なので間違いない。
甘露子は背後からヒカリが密着してくるのを感じた。
そしてヒカリにうさぎの抱きぬいぐるみを取り上げ、バックハグされる。
2人はそのまま眠りに落ちていく。
どれほど時間が経っただろうか。甘露子はヒカリ以外の他人の気配を感じてアイマスクを外した。
「やっと起きたわね」
声のした方向――正面を見ると、イリアーナが立っていた。
甘露子は驚きで一気に目が覚めて、跳ね起きた。
驚きすぎて一瞬言葉も出なかったが、とにかく横で寝ているヒカリを起こす。
「ヒカリ、起きて! イリアーナが来たよ!」
ヒカリは薄目を開けると、甘露子と同じように驚いた様子で起きた。
「どこから入ってきたのよ、アンタ」
イリアーナ首を左右に振って答えてくれない。
「今日は、謎の組織ナイトメアに関する情報の共有をしに来ただけ。話が済んだらすぐ帰るわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます