Ep.5
月2回、何か重要な話をする時だけ、ヒカリは茶房をひとりで開くことがある。朝から授業がない今朝は自分と弟の藤九郎と親友の甘露子の3人の貸切で久々に開いている。
カウンター席に甘露子と藤九郎を座らせ、自分はカウンターの内側に立って、お茶の味がする液体が入ったグラスを提供していた。
ここで聞き出したいことはただひとつ。
藤九郎が言っていた「ダーククイーン」に関する詳細な情報だ。
「さて、ダーククイーンに関する詳細な情報を提供してほしいな」
ヒカリのほうから聞き出した。
藤九郎はこくんと深く頷く。
「この間の話の続きになるんだけど、ダーククイーンに反逆した者は皆必ず、脊髄とかに小さな小細工をされるらしいんだ」
甘露子が聞く。
「その効果は?」
「ある先輩は歩けなくなったり、寝たきりになったりしているらしい、です」
「それは深刻ね」
ヒカリは自分の分の
「ちなみに、ダーククイーンの特徴とか分かったりするの?」
これは甘露子の質問だ。
「噂によれば、縦に緩く巻いた長い金髪で、背は180センチあるとか。冷酷無慈悲なとことかも組織内では有名でしたね」
ヒカリは自分のお茶をひとくち飲んでから質問する。
「他に何か彼女の手口とか知ってる?」
「得意な手口はハニートラップらしいね。ダーククイーンはかなりの美女だって噂だし」
「「ハニートラップ……」」
ヒカリと甘露子は同時に呟いた。
「藤九郎、貴重な情報提供ありがとう。今日は十分聞けたから、家の前まで送るよ」
藤九郎の自宅前まで送ると、ヒカリと甘露子は茶房に戻った。
ダーククイーン対策を考えなくてはならなくなったからだ。
会議の結果、藤九郎には服の内側にメノアスーツを着させることになった。
ヒカリはそのことを藤九郎に高速メッセンジャーで伝える。
その後の藤九郎は姉に言われたことを忠実に守っていて、今のところダーククイーンの罠にかかったという知らせは聴いていないので無事なのだろう。
ヒカリは甘露子が自宅に帰っていく背中を確認してから茶房を閉め、自分も帰った。
外はもう0と1の雨は降っていないが、偽空は0と1の曇で覆われているせいで真っ黒で、街のネオンが光り合っているだけだ。
帰宅後、すぐにダーククイーンの特徴から人物像まで調べ上げた。
どうやらダーククイーンの正体はヒカリの元カノだったらしい。
以後、ヒカリも服の下にメノアスーツを着る習慣が身についてしまった。
甘露子は特段、気にしているわけではなさそうなところで、ヒカリは安堵した。
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