Ep.4

 授業後の夜19時。バルで甘露子とヒカリと藤九郎の3人が集った。

 オレンジジュースを模ストローで飲みながら藤九郎が聞いてくる。


「それで、何故今日はここに集まることになったんでしょう?」


 ヒカリはビールを飲んで答えた。


「そりゃあ、ひとつしかないでしょ」

「悪の組織に関する情報をアンタから聞き出すために決まっているじゃない」

「やっぱりその話か。良いよ」


 藤九郎はふたくちほどオレンジジュースを飲んでから語り始める。


「入口はすぐそばにあった。声も聴こえた。だから聞いてみたんだ、彼らの活動の目的はこのサイバーワールドをジャックすることだという主旨の話を」


 藤九郎はまたオレンジジュースを飲んでから、パイナップルジュースを頼んだ。


「姉さんは知ってるでしょう、僕が"ジャック"とか"ハッキング"という言葉が大好きなことくらい?」

 ヒカリはうんうんと頷いた。


「だから僕は悪の組織の目的に、あの言葉に、強く惹かれて、0と1の雨の中、手を差し伸べられたあの日に悪の世界に魅せられて入った。そしたら今度は居るのか居ないのか分からないリーダーの言葉に従ってこのサイバーワールドの片隅をジャックする仕事を与えられた。それはもう心が踊ったさ」


 甘露子がここで人差し指を立てた。


「はーい。リーダーについて知りたいです」


 藤九郎の顔に翳りが出る。


「僕が入りたての頃はまだ旧リーダーが居たけど、今の新リーダーに玉座を譲って姿をくらましてしまった」


 甘露子が聞く。


「その新リーダーって?」


 ヒカリは甘露子の横で頬杖をついて藤九郎を見ている。


「通称ダーククイーン。噂によればそのやり口は手酷く、反逆者が出れば必ず……」


 ヒカリが遮る。


「――新リーダーの話は私の茶房で聞きたい。他に悪の組織に関する情報は?」


 藤九郎は首を横に振った。


「それが、これ以上は何も」

「OK。じゃあ、あたしと甘露子に誓って。もう悪の組織には関与も介入もしないって」


 テーブルの上に、ヒカリと甘露子の人差し指が重なり合う。

 その上に、藤九郎の人差し指が重なる。


「僕は悪の組織にもう関与しません。介入もしません!」

「えらい! ようこそ新しい白の世界へ」

「歓迎するよ、藤九郎くん!」

 

 ヒカリが言う。

「じゃあ、藤九郎の明るく白い未来に乾杯!」

「「乾杯!」」


 バルの女性店員が義腕と手指で素早くさりげなく、空になったビールジョッキとグラスを回収して去っていく。


 その後、藤九郎はパインジュースを、甘露子とヒカリはビールを飲みつつ夕食に舌鼓を打った。

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