私は地雷系リアコちゃんです!
木曜日御前
リアコちゃんの推し
🍭
会場なう
チェキ券限界までかったぜ、いぇい!
#グロ活 #推し活
#推したんちゅきちゅきらぶりぃちゅわん
#今日も最高 #貢ぎ隊 #グロウルズ最高
#最前死守 #全通確定 #ガソリン補充
開場の入口で撮ってもらった写真に、自作の応援ボードを持ってポーズする自分の顔には可愛いハート、エナジードリンクにはストローを差して、飲んでる自撮り、そして、たくさんのタグと公式へのアカウントリンク。
カラフルなペロペロキャンディの絵文字一文字なアカウントに投稿し、アカウントのアイコンは推しと私のチェキだ。
勿論推し活は常に気合マシマシ、今日の私も最高に可愛い私だ。
黒のフリルとリボンだらけの服、少し短めのスカート、黒の高い厚底。ピンクメッシュ入りの黒髪ロングの前髪パッツン姫カット。
濃い化粧は目の大きさは詐欺りまくって、カラコンはきゅるきゅるピンク。
地雷系女子がトレードマーク、誰よりも私が似合ってる。
爪も可愛く黒色に大好きな黒色のゆるキャラのデコネイルに、グロウルズの名前を書いている。
両エクボにピアス、舌にピアス、
勿論、耳たぶはしっかりと拡張済みだ。
「今日もリアコ、頑張るぞ!」
そう言って私はチケットを財布から取り出し、会場内に入っていく。
本名は、
略して、リアコと私は名乗ってる。
リアルに推しに恋してる勢でもあるし、リアコって響きがとても可愛い。
始まる十分前まで今日の参加表明をSNSに綴る。本当は会場に入りたいが、今回のライブハウスは地下のため電波がまじで悪すぎるせいでまだ入れてない。
勿論、会場は相変わらず百人規模の小さな会場。
その一番前のど真ん中に立つ。横を見るといつものメンツ。というか、さっきダベってたやつらだ。というか、この会場には十人そこらしかいない。
「ののこちゃん! おちちゃん、やっほさっきぶり!」
「お、リアコ! 投稿できた?」
「リアコちゃん、今日まじ人いないの笑う」
ライブ会場を見回すが、現在平日昼間の一時。たしかに、こんな時間にライブ来てるやつらは狂ってるだろう。
黄色い虎柄の服を着たサブカル系なののこちゃんと、犬のぬいぐるみを持った緑髪で病んでる系なおちちゃん。他にも白地に鶴の模様が美しい着物を着たお姉さんに、赤猿のマスコットをペンライトに付けた人。
あとは……。
客席の一番後ろ、興味なさげにドリンクを飲んでる女性二人組。
「ライオンのトレカまじかわいい! でも、推し自引きできなくてさあ〜」
他のアイドルの話を大声でしてる彼女たちを一瞥する。彼女たちの話すライオンソウルは、地下アイドル界隈のレジェンドがプロデュースした最近話題の地下ドルのこと。たしかに、
「てか、ここ、チェキ購入制限あるし、接触も手だけとか売る気あんの? 売れてないんだからハグくらいさせろって思うんだけど」
「ライオンちゃんまでの暇つぶしなの、チェキ会いくの?」
「まあ、時間あるけど、金の無駄っしょそれ」
「たしかにねぇ。てか、このグループイケメン一人しかいなくない? 少ないでしょ、アイドルなのに」
声でかめに話す彼女たち。たまにいるんだよな、こういう品のない女達。
視界のギリギリに入る鶴のお姉さんが、ギリリと鋭い視線で女達を睨み付けてるの見える。彼女から私はSNSでブロックされており、かなりクソ面倒な同担拒否&お気持ち表明担当な鶴女。
その近くにいる猿の人は初めて見る人だが、鶴女のせいで少し怯えて可哀想。
「何あの、声デカ下品ババア」
勿論やべぇのは鶴女だけじゃない。隣のののこちゃんは唸るように口を開く。今ばかりは、本物の虎の顔よりも怖い。
「ライオンソウルのイベ近くでやってるからかなあ。ほら、ゲーセン上にあるライブハウス。ああやって喚くのはマジ最悪、暇ならゲーセン前でチェキ交換でもしてろよ」
他のアイドルにも詳しいおちちちゃんは、うんざりと言いたげな口調で肩をすくめながら、柵にもたれかかる。彼女はモラルに厳しい子だから、たしかにアレはNG行為。
そんな中で私は、ニッコリと笑う。
「もう、大丈夫! うちらの推しピたちは最強なんだよ。今日のステージで、あの子達も、全員沼落ちしちゃうよ!」
そう言って、二人の肩を優しく触れる。二人は「リアコちゃん優しすぎ」と呆れるが、別に優しくなんか無い。
ちらりと、先程の二人と目が合うと、彼女は私を見て顔を顰める。
「うわ、地雷じゃん」
「ん、あーガチ恋そー誰推しかな」
「イケメンじゃない?面食いそうじゃん」
ここ会場狭いんだから、聞こえてるよ。
私よりも両隣の二人がムカついてるのか、一気に温度が下がっていくのがわかる。ただ、正直私は言われ慣れているから、まあそうだよね、としか思わないけれど。
地雷女、とか。
推しは誰、とか。
そんな
今に見てなよ。って、凄く思ってる。
「見た後に酷いこと言っちゃった、って反省してもらえたらいいかなって。ここに時間割いて来てくれてるんだしさ〜」
でも、彼女たちはグロウルズが気になってるからここに来てくれてる。
新しいグロウルズの
大丈夫、お前らの脳味噌ぶっ飛ばしてやるし、ハートも奪ってやる。私の推しピが。
私の推しは世界を覆す、神様なのだから。
ちらりと呑気に飲んでる彼女たちに、そう思ってる私は楽しみすぎて、満面の笑みを浮かべる。
あと、ここの会場と楽屋は壁薄いんだからな。
後悔しても、遅いからね。
しばらくして、会場内が暗転する。キャーッ私の両サイドの友人が声を上げる。
私も真っ直ぐステージに目を向けて、両手の指に挟んだ7本のペンライトを手際よく灯していく。
赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、白。
それぞれ設定済みの光は、とんでもなく神々しい光だ。
「グロウルズぅううう! 愛してるぅうううう!!!!!」
腹の底から叫べば、それとともに安くて薄い幕が開く。そこには、七人の少年たちがペンライトの光がくすむほど輝きを放っていた。
全員が全員、私達を見て、ニヤリと笑う。
グロウルズ。
Glow、私達を照らす光。
Growl、世界に対して唸る。
Urthr、その定めを背負った獣たち。
という、意味に相応しいほどに、戦闘力マシマシの彼らは生で見てこそだ。
「Make some noise!!」
リーダーの桜田くんは、赤い衣装を着て大声で客席を煽る。普段はおちゃらけだが、こういう先陣を切っていく姿はかっこいい。流石私の推しだ。
一発目はやはりぶちかましソング。
『ハウリング』
私はペンライトを持ったまま両手を高く大きく挙げる。美しくグロウルズたちに向かって、咲いた。
こんな楽しくて自然と飛び跳ねたくなる曲を作ったのは、黄色い衣装で無表情にステージをこなす芝井虎丸くん。
一番年下にも関わらず、最強のトラック・メイカーなのだ。流石私の推しだ。
「ふぅー!!」
楽しげに煽り動き回り、アクロバティックに振りを決めてくるのはオレンジ色の服を着た山野くん。ダンスの大会で優勝している実力派。パルクールもできるのだ。凄いだろ、流石私の推しだ。
一曲目が終わり、二曲目は柔かく暖かかつキャッチーな歌。
『きみつみき』というタイトルで、実は歌の内容は重い曲だったりする。
「君に罪はない この世界が罪だから」
美しく力強い声で歌い上げるのは、青色の服を着た篠田くん。
踊りながらも一切乱れない歌声と、感情の抑揚の付け方に感動してしまう。言葉の一つ一つで私を泣かしに来てくれる。流石、私の推しだ。
「わあい! 皆さんこんばんは! ようこそ、グロウルズライブ『ユグドラシル』に来てくださり、僕とーっても嬉しいです!」
曲が終わり、MCタイム。一発目に声を上げるのは、紫色の服を着た猫目が可愛くてキュートであざとさの化身である
「どうも、
会場内に向けてにっこり微笑むだけで、先程の人たちから「ひゃあっ」と黄色い悲鳴と息を呑む音が聞こえる。このグロウルズ、いやアイドル最強の
神が作りし美の集大成は芸術品。もう言うことはない。流石、私の推しだ。
私はペンライトを胸に抱き、七人に満遍なく視線を送る。
大変だ、目が足りない、増えてくれ私の目よ。
身体よ。
記憶力よ。
最前で拝むグロウルズはまさに光の集合体のため、私の脳内は簡単にショート寸前になるのだから、人間の体は弱すぎる。
勿論、メンバーからうちらは認知済み。おちちちゃんや、ののこちゃんはそれぞれのメンバーからファンサービスをもらってるし、鶴女も猿の子もそれぞれもらっている。
そして、私はと言うと。
「指痛くない? 」
「相変わらず、眩しいなあ、7本もあると」
らぶりぃちゅわんな平きゅんとたくましい桜田くんが楽しそうにイジってくるので、私は手に持ったペンライトを輝かせながら咲く。
虎丸くんも、たまにグッドサインをしてくれるし、山野くんはなぜかグータッチしてくれる。他の子達も面白がりながらファンサービスしてくれたりすので、大変申し訳無い気持ちだ。
こんなキラキラな世界の壁になりたい。
それが私の希望です。
そんなグロウルズ、曲数がとても多い。
デビューしたばかりというのにすでに七曲も持ち曲があるのだ。芝井様に感謝感激である。
秀才。天才。鬼才。
すべてが詰まっているアイドルグループ。
私はこのグループ全員を愛し、全員を応援するために生まれた
全員が一番星、なんならもうグロウルズという最強の星座を私は愛している。
楽しい時間はあっという間に終わる。
そう、ライブもいつか終わるもの。
今みたいに気づけば、ライブは終わってしまうのだ。
グロウルズという光を浴びすぎた私は、今日もライブ会場の客席で燃え尽きた灰となっていた。
「リアコちゃん、チェキ会移動するよ」
「だめだ、トリップしてやがる」
ののこちゃんとおちちちゃんに引きずられる形で、ライブ会場からチェキ会場へと移動し始める私。少しずつ元気になっていくと、ふと視界の中にさっきの人達が目に飛び込む。
「ねぇ、あの青い子歌うま過ぎじゃない」
「わかる、私、あのキュートな子やばい、あんなの好きになるじゃん……」
だいぶテンションが低く唖然とした二人。
その彼女たちの目を見て、私はにっこりと笑う。
こ ち ら へ よ う こ そ 。
嬉しい気持ちを抑えられない私は大声で叫んだ。
「今なら、受付でチェキ券買えちゃうな〜! 追加しようかなぁ〜! あと十分もしないうちに締め切っちゃうかもだからな〜!」
すると、その二人がこっちを見た後、慌てて小走りで受付に向かっていく。その様子に、おちちちゃんとののこちゃんは大きくため息を吐いた。
「リアコちゃん、購入制限まで買って、団体券回収済みじゃん貴方」
「ほんと、優しいよねぇ」
そう、私はすでに事前にチェキ券もサイン券も団体チェキ券も購入済み。そう、もう私はこれ以上チェキを買えない。買おうとしたら、スタッフに確実に怒られるのが目に見えている。
だから、私のことを知ってる二人は、先程の行為の真意がわかってるのだろう。
私はにこにこ笑いながら二人に言う。
「優しくなんて無いよ。ただこれで、ね」
そう、優しくなんか無い。真意はもっと単純だ。
「グロウルズが潤ってくれて、彼らが元気に活動してくれれば」
そう、彼らのたくさんご飯食べて、寝て、良いもの買って、そのうえで、活動してもらいたいだけ。
「私が幸せじゃん」
そうすれば、私が幸せなれる。それだけだ。
さあて、今日はチェキ、何を撮ろう。
撮れる今のうちに、いっぱい撮って、宝物にしよう。
私はそう思いながら、チェキ会への道をるんるんと進んでいった。
🍭
推しピとのチェキ!
皆で楽しくキメ顔ですっ( ¯꒳¯ )b✧
今日もめちゃくちゃ輝いてた!
グロウルズ愛してる〜♡♡♡
#本日のグロ活 #本日の推し活
#皆まぶしい #最強のアイドル
#ガソリン補給中
#箱推しですけどなにか
私は地雷系リアコちゃんです! 木曜日御前 @narehatedeath888
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます