22-1 ここにあり

「あった! ありました!」

 リコーダーを探すこと、三十分。みんな埃まみれだったが、ついに、漸く。古そうな棚の下段、その奥から、わたしは一つのビニール袋を見つけた。

 その中から一本のリコーダーを取り出す。袋に守られていたそれには、確かに浜井タテコと名前が彫られていた。

「まじか。本当にあるとは……」

 先生は先生は額に手を当てている。見つかって嬉しいのか、悲しいのか、悔しいのか。わたしにはわからない。

「すげえな、浜井さん」

 ペイペイ先輩が、多分本心からそういう。

「よかった。すごいですね」

 会長が褒める。

「いえ、会長が場所を見つけなかったら、無理ですよ」

 謙遜ではない。わたしは、少し敗北感にまみれながら、そういった。

「そうだな。おれが四十年かけても結局見つかんなかったんだ。お前が、すごい……よくやったよ」

 甲谷先生も褒める。会長はどこか照れ臭そうにしている。

「違いますよ。ずっとぺろぺろリコーダー捜索研究会は、長いこと場所だけしか考えていなかったからです。よくよく考えたら、桜木先生と誰かが密会していたってわかって、あとは、その……」

 口下手なのがものすごい悪い方向に働いている。否、多分、会長は会長で思うところがあるのだろう。よく見ると目が赤い。

「資料には、体育教官室、調査した記録がないって、そう思ったから」

「ああ。そうだな。桜木が宿直中に犯人を捕まえたおかげで、おれも誰もが、せいぜい怪しいのは宿直室だと思い込んでいた。だけど、桜木は第二の自室ってぐらいに体育教官室を使っていた。そこまで思い当たれば、あいつは宿直室じゃなくて体育教官室で飲み食いしていてもおかしくない」

 やっぱり、悔しいのだろうか。先生の口ぶりからわたしはそんなことを考える。

「で、これ、どうすんの?」

 一人だけ大して感慨がないやつがいた。ペイペイ先輩だった。

「とりあえず、とっととここを出よう。体育の先生が嫌がるからな」

 四十年もの出来事に蹴りがついたというのに、先生はどこかあっさりである。もしくは、何も考えようとしていないのかもしれない。ともかく、先生の言うことは正しい。変にリコーダーが見つかったなんて噂が広まるのは、よくない。

 そうして、わたし達は、本物のの朝霧夕都のリコーダーを手に、体育教官室を後にしたのだ。

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