15-2 甲谷先生と浜井ヨコ2

「なにもわかんなかったんですが!」

 甲谷先生からもらった甲谷先生のリコーダー盗難事件をまとめたノート、それをすべて読んだわたしは、その著者に直接文句を言った。

「いや、書いてあっただろ。っていうかさ、お前のノート、なんだこれは」

 先生も勝手にわたしのノートを呼んで声を荒げた。

「なにって、なんですか」

「そもそも、文集にするのに、なんでノートに書いたんだ。パソコンで書けよ」

「パソコン?」

 わたしは首を傾げた。

「あれ、使い方わかんないですよ。だったらスマホで書きます」

 わたしは正直に答えた。先生は固まってしまった。

「学校で習うだろ……」

 その末、一言だけぽろっとそういった。

「家政科はほとんどやらないですよ」

「そうなのか。今度会議に掛けるか」

「やめてください。絶対無理じゃないですか」

 わたしがそういうと、先生は低く唸った。いろいろと心中複雑なのだろう。

「それで、結局犯人は、えっと、松平……」

「平樹。今の会員の、松平平太郎の曽祖父、平助の息子に当たる」

「そういうことなんですか?」

「いや、違う」

「え? そうなんですか?」

 わたしは思わず大声を出した。

「いや、まあ、そうじゃないんだが……」

「どういうことですか? どっちですか?」

「うーん、そうだなあ」

 先生はずっと首をかしげている。

「まだ、続きはあるんじゃないですか」

 一つだけ先生についてわかったのが、なんだかんだ言って堂々嘘をつけない、変なところで真面目である、というところである。その先生がここまで言葉を濁すということは、まだ何かあるはずである。

「そうだなあ、まあなあ」

 先生はとにかく言葉を濁し続ける。

「いっか。本当は原稿用紙に清書したかったんだが」

 急に文豪ぶる先生。正直どうでもいい。

「せっかくの読者だしな。だけど、あんまり他言はしてほしくないな」

「なんでですか?」

「それは……」

 先生は少し考えると、

「なんで犯人がわからないかって言うと、それがこの、ぺろぺろリコーダー研究会が、作られた理由だからだ」

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