12-3 探偵ごっこ

 高揚感のままに、おれの探偵ごっこが始まった。浜井さんは見た目と違い、随分とアクティブなようで、どこからもってきたのかショベルを片手に、どこを掘りますかと聞いてきた。おれはそんなことはしません、と断ったものである。

「ペイペイ……松平先生に頼むってどういうことですか」

 浜井さんは首を傾げた。

「桜木先生からも有力なお話は聞けなかったんですよね」

 体育教官室を出た先。歩きながらおれ達は話をした。リコーダーを探すことなく、まずは犯人逮捕の功労者、桜木先生に聞き込みを始めたおれに、浜井さんは納得がいっていないようだった。それとも、なにも有力なヒントを得ていないことにご立腹なのだろうか。

「そうですね。大体新聞に書いてあったことぐらいしか知らないようです」

 一応、ヒントというか、新情報はあったのだが、まだいろいろと確信は得ていない。得てして探偵というものは、そんな不確定なことをホイホイ口にしないものである。

「なので、今度は警察に聞き込みをしたいと思います」

「警察?」

「というわけでペイペイ、頼むよ。なんとかして、リコーダーを盗んだ犯人、堀越を捕まえた警察官と話がしたい」

 おれはペイペイの肩を掴む。桜木先生から逃げた分、働いてもらわないと困る。

「別にいいけどさ。どんなに早くても明日になるぞ」

「いいんですか?」

 浜井さんは驚いている。そりゃそうか。

「うん。まあ」

 ペイペイは少しはにかむように言った。照れるな、いい歳こいて。

「ペイペイの家はこの辺じゃちょっと有名な地主なので。警察にも顔が利くらしいですよ」

「まあね。先生なんて暇つぶしだよ」

「すごいですね」

「というわけで、急いで。浜井さんも早く見つかった方がいいでしょう」

「勿論です。朝霧さんも喜びます」

「相分かった。じゃあ、ちょっと電話してくる」

「おれ達は先に会室に戻っています。考えることがあるので」

 ペイペイは職員室に走り、おれ達はミステリー研究会の会室に戻る、と見せかけて、

「じゃあ、浜井さん。おれはここで、ちょっと探し物をするんですが、どうしますか」

 と訊ねた。

「どういうことですか? やっぱり地面を掘るんですか」

「掘りません。否、掘るというか、探すというか、堀越の家に行きます」

「え?」

 浜井さんはぽかんとして固まってしまった。

「一つだけ、確かめたいことがあるんです。だから、堀越の家に無理矢理でも入ろうと思います」

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