2-1 氷川良哉殺人事件
最初に、どんな事件だったかまとめよう。わたしはノートに、これから長い付き合いになる事件のあらましを書くことにした。
氷川良哉殺人事件とは、二千二十二年八月二日に起きた痛ましい殺人事件だった。大体、一か月ほど前の事件だ。
第一発見者は、夏休みの朝練で誰よりも先に学校にやってきたサッカー部の二年生、土岐宗司。校舎の脇の草むらに投げ棄てられていた彼を偶然見つけたのである。
新聞によると、氷川良哉は鈍器のようなもので頭を複数回殴られて死亡。学校内には防犯カメラがいくつかあったが、そのどれにも、彼の姿はおろか犯人の影さえなく、あれからひと月が経つのに、事件はそれ以上進展していないようだった。なにせ、気の抜けたド田舎の学校である。セコム的セキュリティがあるだけましというもの。
犯行は深夜、おそらく発見現場で行われたとされている。足跡は犯人自ら消したらしく、第一発見者の土岐宗司の物以外は見当たらなかったそう。
つまり、犯人は深夜の学校で氷川良哉を撲殺したのち、足跡を消してさっさと逃亡した、というシンプルなものなのだ。深夜だから目撃者もいない、設置した監視カメラも数が少ないお陰か何も映っておらず、校舎外で起きた事件故か、セコムはなにも反応していなかった。
だが、この事件には一つだけ糸口があった。それが、ダイイングメッセージである。彼の傍には一言、
――『リコーダー』
と書かれていた。
そう、これがこの事件を解く、鍵だと、わたしは、思いたく、ない、なあ。
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