第17話

「誰も聞かないから尋ねますが、エリザヴェータ姉さまはどうなりましたか?」

「あ、あの、エリザヴェータ・・・・様とは?」

 エルヴィーラがそう言い、困惑しながら返答する聖女。周りは聞いてはいけない事を聞いたかのような、腫物を扱うかのごとく。

 エリザヴェータは皇帝オーレリアンの娘で現在18歳。対するエルヴィーラは13歳。


 歳が比較的近く、エルヴィーラは叔母に当たるエリザヴェータを姉と慕い尊敬していた。

 聖女もダンジョンに挑む前に、謁見の間で一度エルヴィーラと顔を合わせており、何故そのような事を聞かれたのか困惑していた。

「アルフォンシーナは知らないだいだろうがな・・・・エリザヴェータは我が妹。そして父上の命を受け、認識阻害の腕輪を装備し、レーツェルとして其方達のパーティーに参加していたのだ。」

 そう言うエルムント。驚くアルフォンシーナとビーチェ。

「そ・・・・それは・・・・申し訳ございません。」

 床に伏せ土下座をするアルフォンシーナとビーチェ。

 知らなかったとはいえ、皇族を見殺しにしてしまった罪は大きい。

 勿論、死んでいるとは限らないのだが。

「よ・・・・よい、其方らは知らなかったのだ。それよりもエリザヴェータ・・・・レーツェルは生きて・・・・生きておるのだな!」


「その・・・・恐らくは生きていると思いますが・・・・誰も入って戻った事のない大穴なので、状況は分かりかねます。」

 皇帝の言葉を受け、返事をするビーチェ。

「至急救助隊を結成せよ!」

 皇帝はそう言った後、椅子に倒れこむように座る。

「父上!誰か、父上の具合が悪い!医者に診せよ!」

 エルムントがそう言い、側近達が皇帝を抱えるように別室へ連れて行く。

「お前達も色々大変だったのにすまんな。とにかく休め。」

 そうエルムントが言い、この場は終了。


 こののち数日後、皇帝が病に伏せたという報道が、帝都中を恐ろしいほどの速さで広まっていく。

 この時は誰も気が付かなかったが、後にこれが世界中を巻き込んだ戦の始まりであったという事に・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 聖女アルフォンシーナとビーチェに精神的、肉体的なケアが必要となり、しばし療養をする事となったが、皇帝が病になり伏せて数日後、勇者とイディオがダンジョンより戻ってきた。


「いやーマジ死ぬかと思った。」

「ダンジョンの中、全ての荷物が無くなって、予備の剣と防具しかなかったからな。だが俺様は勇者だ!それぐらい何ともないぜ!」


 すぐに帝都へ入り、豪語しまくる勇者とイディオ。

 だが、今までと違い勇者達を見る目は厳しく、誰も相手をしない。

 不審に思った勇者がたまたま近くにいた兵士を捕まえ、

「おい、俺様は勇者だ。何で皆無視をする?」

 そう言われた兵士は困惑。

「はあ?そんなの知らんな。ぶっちゃけあんたには関わるなと言われている。

 あっちに行け。」

 呆然とする勇者。今までこんな事はなかった。

「おい、たかが兵士の分際のくせに何だ。もっと俺達を敬え。」

 そう言うイディオだが、やはり兵士の視線は冷たい。

「もう言葉をかけないで下さい。これ以上邪魔をするようでしたら、牢にでも入ってもらわなくてはなりません。」

「何だ?一体どうしたんだ?まあいい、下々には俺様の事が分からないんだな。おいイディオ、さっさと城に行くぞ。」


 違和感を覚えつつ2人は城へ向かった。


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