第10話

 いくら待ってもレーツェルさんの魔術は展開されません・・・・どうして?

 レーツェルさんも、

「あ、あれ?どうして!」

 魔術が発動せず焦っています。

「ははは!あんたが魔術ぶっ放すのは分かっていたからな!対策は取らせてもらったぜ!」

 勇者様は笑いながらレーツェルさんに言い放っています。

 そしてイディオさんは、

「おお!流石は賢者モードの勇者だ!3発かませばすっかり賢者だな!」

 ・・・・何が3発なんですか?賢者モードって何ですか?それに勇者様は賢者じゃないですよね?

「た・・・・対策って何よ!」

 レーツェルさんは困惑しながら勇者様に聞くけれど、

「ほれ其処の足元にあるだろう?」

 勇者様はレーツェルさんの足元を指さしてます。

 レーツェルさんが思わず下を見ると、

「取り敢えず寝とけ!」

 そう勇者様が言うが早いか一気にレーツェルさんの懐に潜り込み、お腹へ拳を叩き込んでしまいました。

「ギャッ!」

 ああ!レーツェルさんが吹っ飛んでしまいました。なんて事を!

「おいリューク、鎧は回収したんだろうな!」

 服を着つつ勇者様が僕に聞いてきます。

「あ、はい・・・・それより・・・・レーツェルさん・・・・仲間になんて事をするんですか!」

「・・・・そんな事はどうでもいい、早く出せ!」

 今まで聞いた事が無い剣幕で、勇者様は僕に鎧を出すよう言ってきます。

 レーツェルさんや聖女様達も心配ですが、僕は勇者様の荷物運びが任務。

 仕方が無いので地面へ回収した鎧の残骸2体分を並べて出していく事に。


 全部出し終わると勇者様が、


「これで全部か?」

「は、はい、落ちていたのはこれで全部です・・・・」

 僕が返事をすると勇者様は僕の肩をたたきながら、

「うーん、ご苦労さん。」

 そうにこやかに言ったと思ったら、僕は後方へ吹き飛んでいきました。

 え?なんで?背中に衝撃を受けつつ、倒れているのに気が付くと腹にも激痛が。

「は!とっとと出せよ、どんくさい奴。」

 偶然か必然か,僕はレーツェルさんの隣に吹き飛んだみたいです。

 体中が痛い・・・・レーツェルさんは・・・・気を失っているみたいで動いてない・・・・あ、胸が上下しているから呼吸はしてるみたい。

 ちゃんと生きている。

 勇者様は回収した鎧のヘルメット?頭の部分を両手で持って僕達に近づいてきます。

 するとイディオさんが、

「お?勇者、何をするんだ?」

 何か嬉しそうに勇者に話しかけています。

「ここに雑魚が2匹いる。そして鎧が2つある。やる事はひとつだろう?」

 そう言って勇者様はイディオさんに片方の頭を放り投げて、イディオさんはそれを受け止めます。



●  作者からのお願い  ●

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