第26話 「海のシルクロード」について

 今回は中国大陸の南部と西アジアとを結ぶ海のシルクロードをモデルとした設定が出てきました。


 周知のようにシルクロードは大きく分けて「オアシスの道」「草原の道」「海洋の道」があります。


 拙作の琥はサマルカンドをモデルにしており、琥と董の交易路は、史実の「オアシスの道」がモデルです。


 海洋の道・海のシルクロードについては『図説中国文明史6

 隋唐 開かれた文明』に「海上のシルクロード」として説明があります。


「中国と、朝鮮半島・日本・東南アジア・インドなどの地とは早くから船での往来がありました。南方の経済発展につれて、海船の製造と海上の航行技術が改善され、海路が栄える基礎ができました」


 とあり、以下のように続きます。


「そのうえ陸路シルクロードの経路である河西が、安史の乱以降は吐蕃に占拠され、道が塞がれてしまったために、中国と外国の交易は、海上のシルクロードに拠らざるを得なくなりました」(89頁)


 拙作には安史の乱に該当するものは登場しませんが、海路の方が遅れて発展してくるという時系列は踏襲しております。


 ただ、史実では陸路と海路とで重点が異なりましたので、単純に陸路が海路に取って代わられたわけではないようです。


「壊れにくく手軽な商品の多くは、陸上のシルクロードで運送され、シルクは大口の商品でした。ややかさばる商品は海路で運ぶことが多く、陶磁器がそれでした」(88頁)


 この本では「唐では全国最大の海上貿易港」である「広州」の賑わいが描かれています(90頁)


「海外から来た真珠・犀角・校長なども、この地に集散しました。広州では、アラブのナツメヤシを味わえ、インドの香料を身に着け、アラブの薔薇の香水や化粧クリームを塗ることができました。広州に来た外国人は思う存分に中国の美味しい料理を楽しんだ後、しっとりと輝く陶磁器や綾絹をまんさいしてかえってゆきました」


 また唐朝の陶磁器が「9世紀にはアラブ世界とアフリカに売られていたとする研究があります」とのこと(90頁)。


 そういえば、『ギャラリーフェイク』という美術関係の漫画でもアフリカに中国製の陶磁器が届いていたという話が出て来たような記憶があります(スミマセン、家のどこかにあると思いますが、今手元にないです……)。


 アラブのナツメヤシは聖書にも出てくるかと思います(実は鷲生はクリスチャンで、教会でそんな話を聞きました)。食品としては「デーツ」です。


 昔、中近東で戦争が起こったときに「日本でお好み焼きソースが手に入らなくなる?」という情報が出ました。なぜなら、ソースにデーツが入っているからです。


 オタフクソースのサイトに説明があります。


「デーツは、ヤシ科の高木『ナツメヤシ』の実です。中近東諸国では、代表的な果実として多くの人々に日常的に食べられています」


「オタフクソースとデーツの出逢いは1975年。コク深い甘みをもつ果実としてお好みソースの原料として使い始めました。さらに、デーツの持つ栄養価にも着目し、以来40年以上にわたり、お好みソースの原料として大切に使い続けてきました」


「デーツとは ~お好みソースとデーツの深い関係~」https://www.otafuku.co.jp/product/sp/okonomisauce/date/#:~:text=%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%84%E3%81%AF%E3%80%81%E3%83%A4%E3%82%B7%E7%A7%91%E3%81%AE,%E3%81%84%E3%82%8F%E3%81%B0%E5%A4%A9%E7%84%B6%E3%81%AE%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%84%E3%80%82


 広州にアラブのナツメヤシが来た、同じ海路を使ってオタフクソースとなって日本の食卓に並んでいるかもしれませんね。


 内陸のシルクロードはやはり時代が下るにつれて寂れていきます。


 拙作の琥についても、白蘭がその未来を憂いています。

 このように白蘭の琥の民を思いやる態度が物語の終盤の展開につながります。

 どうか最後までご愛読くださいますよう。




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