第1話 

『やったか?』


「当たり前だ。このタコ」


狙撃手の手が突撃兵の肩に当たる。とても仲の良さそうな二人の機体は一つに固まっている。


『黙れクズ。さっさと帰るぞ。シールは?』


「まだある。しかし、何かがおかしいと思うんだ」


『当たりやしない』


「どうだか?」


だが、確かに嫌な感じはするのだ。今の1機だけとは限らない。だがレーダーには何も写っていなかった。相手が何機も持ってるとは思えない。


「……あの雲が?前からあったか……いやまて!!戻れレクス!?」


ギュウイイイイイイイィィィ!!!


大出力のレーザーが咄嗟の判断で動いた突撃兵の機体を掠める。


『ナントシテモォ!!!』


だが、それで落ちまいと気迫で迫る突撃兵。


『ジャラッシャァ〜!!!』


塗膜合成による回線割り込みから聞こえた相手のパイロットの声。


「貴様か!!貴様なのかよぉ!?」


『なっ!?』


ゴッキン!!!


大口径スナイパーライフルの銃弾が味方もろとも敵を破壊せんと迫る。


だが、それを間一髪で体を思いっ切り逸らす事で免れた機体。


「イレギュラーに汚染されてんならぁ!!俺が浄化せねばなるまい!!」


『古いぞ!!』


狙撃手の弱点である近接戦闘の脆さに漬け込む為に突進攻撃をする敵機体。


「貴様だ!!全ての計画を邪魔し、あまつさえその神の子すらも連れ去る業罪!!!救済とはなんなのか!!!意味をなさずにどうしろとぉ!!」


『あの時!!あんたらが無関係な人だって殺さなければ!!』


即座にライフルを捨ててナイフを抜き、近接戦へ移り落下を始める。


「違うッ!!貴様も我等であろうにと!!」


落下中に一度離れ地面に着地する二人。


砂埃から隙を出さずに突撃をする狙撃手。


『クッ!?ノールを持ってしても邪魔になる!?』


「キィンヤアアア!!」


雄叫びと共に大振りで攻撃をしてくる。それをバックステップで避けまだ手に持っていたライフルで攻撃をする敵兵。


『だが!!今は違う!!言えばわからずとも!!その身に一つ教えでもしてやれば!!』


「ナニィ!?」


避けた先に地雷。出力では上のはずの敵兵がすぐに来なかったのは地雷を撒く為。


「脚がやられた!?このアーバレストが?」


震える声を抑え、まだ生きているはずのスラスターで距離を取る。だが、それは悪手でしかなかった。


『イレギュラーハンターってのはただ人殺しの為の道具でしかない!!汚染されてるのは貴様だろう!!カイ!!』


「黙れぇぇぇ!?」


突進してきた敵機が手に持ったのはソード。腕も破壊され、地に落ちた狙撃手は死を覚悟した。


「だ……だが、お前達マリーナサイズのやってる事は世界を破滅に導きかねない……そんな事せずとも人類は生きていける!!」


『だからって関係のない一般人まで……いや。ほの計画で何千万人死ぬと思ってるんだ!!』


「それと同じほどには生きていける!!一人一人が背負っていけば!!生きていけるだろう罪が!!貴様だ!!貴様が背負っていけば!!」


『チィ!?』


だが、刺さずに去っていった敵機は落ちていったあの機体を回収しに行ったのだろう。安堵と同時にあの時の恐怖が思い浮かぶ。

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