第20話

基本、星族と月族は太陽族を少し離れた所から観察をする。別に太陽光が眩しくてとかではなく、遠目に見るのが当たり前だから。

それだけ、太陽族は憧れの対象になりやすく、みんなが羨む人種なのだ。


〈私もあんな風に…〉


太陽族の凛、水瀬さんと普通に話している月族の私はみんなにどう映っているのかな?

羨ましい対象?それとも、蔑まされている?って…考えても仕方ないか。


だって、私の脳内ではすでに…チビじゃないもん、、と落ち込んでいる。

もし、私が太陽族だったら人の目も気にせず堂々と歩けたかもしれない。でも、私は月族で自己肯定感がめちゃくちゃ低い。


うぅ…肩身が狭い。


脳に私は透明人間だと言い聞かせながら涼ちゃんと席に着き、息を潜める。凛と水瀬さん関係で声を掛けられたくない。


あのね、これだけは分かってほしい。私が中間業者として間に入っても2人と仲良くなれるかなんて分からないから!


私にはカップルになるための橋渡し的な役割なんて無理だし、本当に無理なの。

いきなり、友達から知らない人を紹介されても戸惑うし嫌でしょ?私だったら絶対に嫌だし〈コノヤロー!〉と友達を恨むと思う。


「見られてるね…」


涼ちゃんが下を向きながら、そっと私に話しかけてくる。きっと、何を話しているのかバレたくないのだろう。


「涼ちゃん、心を無にしよう。透明人間になればきっと大丈夫だよ」


私と凛の関係性を知らない人からしたら、何で私が凛達と仲が良いの?って思っているし、今も疑問に満ちた目で見られている。

私だってそうだよ。凛は置いといて、水瀬さんと接点ができるなんて思わなかった。



ふと、なぜこんなにも私が注目されるのか(こんなことを考えるなんて恥ずかしいけど大事なこと!)授業中なのに考える。

高校に入学して【半年】という月日が経っているからではないかという答えに辿り着く。


もし、入学当初から凛と普通に話していたら疑問にも思わず中学時代からの知り合いなのかな?ってなると思うし、入学当初だったら凛と水瀬さんの人気も上がっていない。


半年という時間の経過のせいで色々と面倒なことになっている。凛と水瀬さんの人気が上がった時に凛達と絶対に接点がなさそうな私が普通に会話をし、仲良さそうにしている。


確かに疑問が生まれてしまう…

何が起きたんだと⁉︎





私は見た目も変わってしまった凛に気づかなかったから仕方ないけど…凛はいつから私のこと気づいていたのかな?

美術室に来た日?でも、悲しいけど私の見た目は5歳の時からあんまり変わっていない。めちゃくちゃ悲しいけど身長だけ伸びた。


私の中にまで疑問が生まれ、頭が痛くなる。凛と初めて会った時…いきなり、ちーちゃんとあだ名で呼ばれた。

それに「ずっと、会いたかった」って言われて、もしかしたら凛は美術室に来る前から私の存在に気づいていた?


あっ、思い出した!凛は美術部の先輩がいない日を狙っていたと言っていた。

そうだ!この時、凛は私と同じ月族じゃないかと疑ったんだ。


いや…でも、バスケをする凛は確実に太陽族だし、、あの、水瀬さんと仲が良いし、あー!悩ましい。頭がこんがらがる。



そもそも陰キャ(月族)とか陽キャ(太陽族)とか判断するのは意外と難しい。

見た目は判断の基準になりやすいけど、性格が意外と暗かったりする人もいるし、見た目は普通なのにめちゃくちゃ陽気だったり…


私の基準では人気者はもれなく陽キャの部類に入り、近づき難い存在だ。

誰とでも普通に話せ、でもな…ビジネス陽キャとかもある。凛はビジネス陽キャなのかな?頑張って陽気に振舞っているとか。


それともあんな風にチャラいのは私の前だけ?普通、久しぶりに会った幼馴染に「千紘はずっと可愛いね」とか言わないし!

はぁ、、思い出しただけで顔が熱くなる。言われ慣れてない言葉は体温を急激に上げる。


可愛くないし…

私を可愛いと言うのは凛だけだし…


ねぇ!凛は何で簡単に〈可愛い〉という言葉を言えるの?どんなメンタルしてるんだよ。

私は生まれてから一度も自分に自信が持ったことがない。常に平凡で…陰キャのせいで結婚も出来るのかなって不安がある。


いつか…化粧や髪色を変えたりしたら変わるのかな。今より少しはマシになる?

可愛い洋服を着て、ピアスをつけ、コンタクトにして、、凛はそんな私をどう思うかな?


可愛いって…言ってくれる?


髪、伸ばしてみようかな。何となくで今の髪型だし、長い髪の方がアレンジがしやすい。

生まれて初めての自分磨き。私が凛のそばに居ても違和感ないようにするために…


あっ、そうだ。いつか、マネキュアもしたいな。可愛いバックも欲しいし、可愛いネックレスもいつか買いたい。

はぁ、、でも、お洒落ってお金がかかる。とてもお小遣いじゃままならないし。


でも、いつか変わりたい。凛が変わったように私も新しい自分になりたい。





あっ…授業、、終わっちゃった。しまった、ノートが!黒板に書かれた文字ではなく、下手くそな子供みたいな絵が乱立している。

5歳児が未来の自分を描くような絵で…今年16歳になるのに、、恥ずかしい。


何、、このティアラを付けてお姫様みたいなドレスを着ている女の子。私の理想の自分がシンデレラって、、


「えっ?何、この絵…下手くそ」


涼ちゃん!酷いよ!勝手に私の絵を見るなり暴言を吐くなんて。でも、否定できないことが悔しい!美術部の威厳に関わるから、今度完璧な絵を描いて暴言を撤回させてやる!

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