第18話

今日は日曜日。いつもだったら、のろのろとお昼前ぐらいに起きる。

でも、昨日は3時まで起きていた。だから、当然アラームでもかけてない限り起きれるはずもなく起きたらお昼を過ぎていた。


隣に寝ている凛はまだ熟睡中で、コイツ…夜型人間だけでやっぱり朝は弱いみたいだ。



そっと凛を起こさないようにベッドから抜け出し顔を洗う。既にお父さんとお母さんはおらず、机の上には朝食が置いてあった。

寝過ぎているといつもだったらお母さんに叩き起こされるのに、今日は凛が泊まっているから起こされなかったみたいだ。


どうせ凛はまだ起きてこないだろうと思い、服を着替え、先に朝食兼昼食を食べる。

昨日は夜遅くまで起きていたせいで、めちゃくちゃお腹が空いている。


もぐもぐとご飯を食べ、テレビのお昼の番組を眺める。脳は食べることに集中しているから内容なんて頭に一切入ってこない。

ご飯を食べ終わった後やっと脳が動き、お茶を飲みながらいつ凛を起こそうか考える。


夜型朝苦手人間の凛はこのまま私が起こさないと起きないだろう。この場合、私は凛を起こした方がいいのだろうか?

でも、用事もないのに起こすのは可哀想だし、元々今日は何をするか決めていない。


これからどうしよう。休みの日はゲームをするのが日課(毎日だけど)だけど、ゲーム機があるのは私の部屋だし、寝ている凛に気を遣いながらゲームをするのは面倒い。

それに、普通は予定決めるよね?何も決めず、凛は話すだけ話し寝てしまった。


よし、買い物に行こう。急にアイスが食べたくなったし、どうせ凛はまだ起きないし、せっなくの休みの日を有効活用したい。

いつもはテキパキと動くタイプではないけど私のやりたいことは自室にしかないから他のことをするしかない。





近くのコンビニにアイスを買いに行き、所要時間は多分10分ぐらいだったと思う。本当はもっと早く帰ってこれたけど、アイスを食べながら歩いていた。

チューブタイプのアイスを咥え、玄関のドアを開けると私は転びそうになるぐらい驚愕する。凛が玄関の前の廊下に倒れている。


「凛…」


流石に生きているよね?だって、血は流れてないし、玄関の鍵は閉まっていたから強盗は入っていないはずだ。


「ちーちゃん…どこに行ってたの」


良かった。凛は生きていた。だけど、ものすごく情けない顔をしている。


「アイス買いに行ってた」


「置いて行くなんて酷いよー」


「だって、凛。寝てたじゃん」


私は善意で凛を起こさずアイスを買いに行っただけだ。だけど、凛の情けない顔のせいで私が悪いことをした気分になる。


「顔…洗ってきたら?」


「もう、いなくならない?」


「うん(アイスあるし)」


なぜだろう、めちゃくちゃ胸が痛い。寝ていたら飼い主に置いてきぼりをくらった子犬を見ているようでやっと罪悪感が湧いてきた。

安心させる為に寝癖が付いた凛の頭をそっと撫でる。凛は私よりデカいのに嬉しそうに微笑む姿が本当に子犬のようだ。


「凛って犬みたい」


「ちーちゃん、飼ってくれる?」


「私、猫派」


「えー」


私はずっと猫が好きで、いつか猫を飼いたいと思っている。でも、、凛を見ていると犬もいいかなってとも思う。

それにこのフニャけた顔…頬をフニフニと潰したいしイジメたい。


「むー。ちーちゃん、痛いよ」


あっ、いつの間にか本当に凛の頬をフニフニと潰していた。無意識だから力加減が出来ておらず凛の顔が面白い顔になっている。


「ははは、面白い顔」


「酷いー」


バスケをする凛はみんなから注目される女の子で、でも私の目の前にいる凛は犬みたいな子で、どっちも佐倉凛だけどやっぱり私は犬みたいな凛が安心する。

バスケをするキリッとした顔からのこのフニャッとした顔はギャップがずるいけど…


あっ、アイス!!!!!凛を押しのけ私は慌てて冷蔵庫まで向かう。せっかく買ったアイスが溶けるなんて言語道断だ。

危なかった…ちょっとだけ柔らかくなっていたけどしばらく冷凍したら大丈夫だろう。


「アイスに負けた…」


後ろで恨めしそうに拗ねている凛。飼い主が構ってくれない時の犬みたいで、仕方ないなと気持ちで「後で一緒にアイス食べようね」と凛にとって魔法の言葉を言う。


ほら、凛は嬉しそうにまた笑った。凛の攻略は簡単だ。「ご飯、温めるね」と言うと「顔洗ってくる!」と言い、ご機嫌だ。



凛は感情が顔に出るから分かりやすい。流石に脳内までは分からないけど何をどうしたらいいのか分かりやすく攻略が簡単だ。

ご飯を電子レンジで温めていると…私の背中に気配を感じる。私の背後からレンジの中を見つめる凛がおり…心臓が跳ね上がった。


甘えん坊の凛は相変わらず距離が近く「お腹空いたー」と子供みたいに言う。

凛は小さい頃からなぜか距離感は近い子だったけど今も変わらず距離が近すぎる。

お陰で想定外の近さに私は動けなくなる。


凛の攻略法は簡単だと…


こんな風に考えていた自分を殴りたい。

撤回!全撤回!


甘えるように私の背中に引っ付く、甘えん坊な犬っ子は限度を知らない。

スキンシップの触れ合いは小さい頃は脳がまだちゃんと理解していないから平気だ。


でも、成長すると脳も色々なことを学ぶ。だから、異性同性関係なく甘えられるように引っ付かれると体が緊張する。

きっと、こんな風な緊張はする側よりされる側が緊張する。私みたいに…



これは決して私の過剰反応ではない。顔が良い、太陽族…この二点で人は最頂点になる。

最頂点の幼馴染は厄介すぎる。甘えん坊が追加されているせいで更に私を困らせる。

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