第12話
なぜ、人はぼっち飯をするのか。
①友達がいないから
②1人で食べたいから
③たまたま(理由あり)
こんなのちょっと考えたら分かることなのに…これだから太陽族は。
「ねぇ、何で1人で食べているの?」
やっと、お弁当を食べ終わり飲み物を飲んでいると太陽族の水瀬さんが頬杖をつきながら不思議そうに聞いてきた。
なぜ、私が美術室で1人で食べているのか…。別に疑問に思うのはいい。だけど、まさか疑問を口に出して本人に質問をするとは。
分かるよね?
普通、分かるよね?
正解は①と②と③番ですよ。高校の友達は涼ちゃんしかいないし、ぼっち飯だから教室で食べたくなくて、涼ちゃんがいないから1人で食べていた。
それ以外の理由なんてないし、それ以外の理由なんてあるの?ないでしょ。
「こら、陽奈」
「えっ、聞いたらまずかった?」
「別に…大丈夫です」
別に1人で楽しく食べる予定だったし、でも…理由は察してくれ。めちゃくちゃ言いづらいし、凛が申し訳なさそうな顔をする。
「ぼっち飯…」
「ぼっち飯って1人で食べるってことだっけ?」
辞典で調べたら分かると思うけど…
【ぼっち飯・ぼっち‐めし】
昼食時に友達や仲間と一緒にではなく、独りで食事をとることですよ!
「寂しくない?」
ぬぐぐ。この人は…どれだけ私を追い込むのだ。そんな純粋な瞳で質問されても、寂しいです!なんて言えないし(今日は寂しくなかったし)友達が沢山いたらぼっち飯なんてしないし、いい加減察しろ。
「陽奈、しつこい」
「えっ、ごめん…」
別にいいんだ。月族だし、ぼっち飯は慣れているし、それにちゃんと涼ちゃんという友達もいる。だから、寂しくなんてない。
だけど、言葉にされると悲しくなるし…純粋な疑問ほど心をえぐるって覚えていて欲しい。
「あの、チョコどうぞ。お詫び…」
「やった!」
「ちーちゃんは食べ物に釣られすぎ!」
だって、大好きなチョコを差し出されたら誰だって喜ぶに決まっている。
「本当、ごめんね。私、何も考えず口に出しちゃうことがあって」
「別にいいですよ」
「ちーちゃん、陽奈のことなんて気にしなくていいからね。無神経だし、人を傷つける天才だから」
「どう言うことだよ」
水瀬さんは人を傷つける天才。うん、何となく分かる気がする。純粋と無神経は表と裏の関係にある。そして、純粋だと実はタチが悪く怒るに怒れず困惑してしまう。
「昨日だって、先輩に告白されてあっさり振ったくせに」
「当たり前でしょ。殆ど話したことない人と付き合えるはずないじゃん」
おぉ、急に恋愛話に展開した。水瀬さん、見た目は派手なのに恋愛に対してはガードが硬いみたいだ。これは偏見だけど、太陽族は小学生の時から彼氏がいるイメージで…
ってかさ、小学生で彼氏ってあり得なくない?涼ちゃんも小学5年生の弟に彼女ができ、あり得ない!って愚痴っていた。
「凛だって、告白全部断っているじゃん」
「当たり前じゃん。好きな人がいるんだから」
太陽族のバトルは見ている分には面白い。他人事だし、でも…凛に好きな人がいるなんて(やっぱり、太陽族に変わってしまった)
月族の私には恋愛は縁遠いもので、せめて10年後にはご縁がありますようにと思っているけどこればっかりは分からない。
でも、太陽族の凛と水瀬さんは当たり前に近くにあるものでこれが太陽族と月族の違い。
「あっ、そうだ。佐藤さんは彼氏いるの?」
「ちょっと…」
恋愛なんて私には関係ない、縁遠い話だなっとチョコをもぐもぐと食べていた私に水瀬さんが突然の質問をする。
そんなの聞かなくても分かるだろ!と文句を言ってもいいだろうか?凛は戸惑っている表情だけど、きっと私を心配しているのだろう。
いるはずないじゃん
聞くのは可哀想だよってね!!!
「教えないです」
だから、せめての抵抗で誤魔化した。きっと、全然誤魔化せてないよと言われそうだけど私の精一杯の抵抗だ。
そして、きっと凛が「何それー」と言うと思っていた。なのに、2人が黙り込み何も言ってくれない(ツッコミ待ちだったのに…)
これは、私が場の空気を読まないで返事をしてしまったのだろうか?
でも、分かるよね?細やかな抵抗だし、月族の意地だし、彼氏なんていないことを。
「あっ、そろそろ教室に戻りますね」
この空気から逃げたくて時計を見ると昼休みが終わる10分前で、私は残っていたチョコレートを口に入れ幸せを食べ切る。
だけど、時が止まってしまったかのように動かない2人をどうしたらいいのだろう?
ゲームがフリーズした時は激怒しながら渋々再起動するけど、2人の再起動スイッチがどこにあるのか知らない。
スイッチを探すため凛の顔を触ると、凛のフリーズが偶然解除され動き出した。だけど、目がキョロキョロと動き落ち着きがない。
「凛?」
「えっ?あっ、どうしたの?」
どうしたの?と言われても、それは私のセリフだ。凛がフリーズしていたし。
「そろそろ、教室に戻るよ」
「そうだね…」
凛と出会って2日目。今日1日で凛の知らない部分を沢山知った。でも、なぜか教室までの帰り道、2人は一言も話さず歩き続ける。
一体、2人に何が起こったの?お陰で廊下を静かに歩けたけどソワソワしてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます