第18話 デイアフター
ここからは、少し先の未来の物語。
私は数年後に皇国の王となった。そして、その横にはもちろん愛しい妻が一人。
傍らには受肉を果たした頭の中の同居人が、親しき友として立っていた。
きららと友人達はユーノと和解したけれど…友人達のきららへの想いは、変わることはなかった。
私が皇王を受け継いでから、それぞれに相応しい地位に着いた友人達は、日夜仕事に励みながらも一妻多夫制を導入するよう嘆願を繰り返している。
きららを説得できたら貴族院にも打診してみる。と話してはいるが、きららが逃げ回っているところを見ると、まだまだ先は長そうだった。
「私はさぁ、一途が良いと思うんだけどなぁ」
仕事の合間の僅かな時間、三人で囲ったテーブルにだらしなく腕を伸ばして伏せる、私の親友…頭の中に居たマレビトが、文句を垂れていた。
お茶の話題として出したロマンスは、どうもマレビトの感性には合わなかったらしい。
「私としては、皆が納得して幸せになってくれれば、何でも構わないけれどね」
私はゆったりと足を組み合わせ、椅子の背もたれに身体を預ける。
そんな私の肩に、柔らかな重さが乗せられた。
頬を寄せるようにして視線を向ければ、私の肩に頭を預けるユーノが、ほんのりと微笑む。
「わたくしも、誰もが幸せになってくれればとは思います。でも、アステリオス様には…わたくしだけを、見ていて欲しいと願ってしまいますわ」
「もちろん、私が愛しているのはユーノ…君だけだよ」
いつもと変わらず寄り添う私たちを、マレビトは頬杖をついて見詰めていた。
「…やっぱりさ、人生はハッピーエンドじゃないとねぇ」
満足そうに呟いて笑うマレビトの顔は、窓から投げ込まれる陽射しを受けて、どこまでも明るく照らされていたのだった────
婚約破棄3秒前→5秒後結婚物語 豊口楽々亭 @krcg
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