僕は魔法王国の妖精 ～僕が選んだ魔法少女は火力重視の大魔導士志望でした～

第115話 勇気の証

　増子さんが手をかざすとマルク・セットゥの体が浮いた。

　これが増子さんの超能力だ！

　もう僕たちが負ける事はないね！

「僕の魔法で拘束させてもらうよ！」

「魔法？　これが？　超能力の間違いだと思うけど」

「その通りだよ。普通を超越した魔法を超能力って呼ぶんだ！」

「そんな話は聞いた事がないな」

「妖精の声を聞いた事がないからだよ。僕はプレナに教えてもらったんだ。超能力は超凄い魔法能力の略だって」

　増子さんが自信満々に言った。

　プレナが偉そうに腕組みしている。

「どうでも良い話だ。この程度の力であれば退ける事は容易いからな。フンッ！」

　マルク・セットゥの気合いの一声で超能力の拘束から逃れ、優雅に着地した。

　今まで増子さんの超能力で拘束出来なかった相手はいなかったからビックリしたよ。

「超能力なら私も使えるという事だ。お返しだ！」

　マルク・セットゥが増子さんに手を向けた途端、増子さんが苦しみ出した。

　大変だ！

　首を絞められているみたいなのだ！

「負けないぞ！」

　増子さんも手を突き出して超能力で反撃を始めた。

　手に汗握る接戦……なのかなぁ？

　魔法と違って見えないから、どっち優勢なのか分からないよ。

　マルク・セットゥと増子さんの二人が、唸りながら腕を突き出しているようにしか見えないんだよね。

「なぁテプ。どっちが勝つと思う？」

「僕は増子さんが勝つと思うよ。オハコは増子さんが負けると思っているの？」

「それはないな。増子の超能力はアラハバキが持ってきた宇宙人の力なんだろ？」

「そうだよ。ハバっちゃんがくれた宇宙人ドリンクの力だから絶対負けないと思うよ！　怪盗ガウチョパンツには効果がなかったけどね」

「すまんな。私は役立たずで……」

　しまった！

　怪盗ガウチョパンツに精神ダメージを与えてしまった。

　ごめんね陽翔（はると）お兄さん。

　怪盗ガウチョパンツもカッコよかったよ！

　諦めないで戦ってくれたから増子さんが間に合ったんだから！

「くっ、なかなかやるな」

「当然だよ！　正義の魔法少女は負けないのさ！」

　どうやら増子さんの方が優勢のようだ。

　マルク・セットゥが苦しそうに後退していっている。

　見えない力に押されているみたいだね。

　このままやっつけちゃえ！

「立ち上がりなさい陽翔（はると）！　増子さんが破壊した天井から脱出する準備をして！」

　しず子さんが焦っている？！

　どうして？

「危ない！」

　怪盗ガウチョパンツが立ち上がり僕たちの前に出ると同時に何かを受け止めた。

　受け止めたのは……増子さん？！

「ごめん！　急に力が出なくなった！」

　増子さんがすまなそうな顔で謝った。

　ええっ！

　宇宙人ドリンクの効果が切れちゃったの？！

「脱出出来ねぇぞ！」

　オハコが天井の穴付近を飛んでいるが、見えない何かに阻まれて出られないでいる。

「簡単に逃すと思ったかね？　パワーでは私を上回っていたようだが、持続力がなかったようだな。さて、超能力を失ったところでどうするのかな？」

「まだ拳があるよ！　僕は元々能力がなくても戦ってきたんだ！」

　増子さんがマルク・セットゥに殴りかかったが見えない力で動きを封じられてしまった。

「力を取り戻されては面倒だ。死んでもらおう」

「させるか！　ガウチョ・キック！」

「目障りだ！」

　増子さんを守ろうとした怪盗ガウチョパンツが吹き飛んだ。

「まだだ！　ガウチョパンツが健在であれば、私の足は健在だ！　何度でも立ち上がってみせる！」

　怪盗ガウチョパンツがよく分からない事を言った。

　カッコ悪いけど、カッコいいよ怪盗ガウチョパンツ！

「そうだ！　僕も負けない！　この拳に勇気が宿っている限り！」

「無駄な事だ！　力こそ全て！　力なき勇気に意味はない！」

「意味はあるさ！　勇気には弱さを払拭する力があるんだ！」

「いい事言うじゃないか！　こんな勇気を見せられたら、僕も負けれれないな！」

「弱者がごちゃごちゃうるさいよ！　面倒だから消し飛ばしてやる！　弱さを嘆きながら死ねぇ！」

「あのさぁ、力ならあるぞ」

「ハバっちゃん？！」

　増子さんのブレスレットからハバっちゃんの声が聞こえた。

　通信機能があるの忘れてたよ。

「ハバっちゃん、どうすればいいの？」

「そこのヘタレ！　思い浮かべろ！　勇気の証を！」

「勇気の証？」

「そうだ！　形を思い浮かべた方が、より強い思いを込められる！　もっとも信じている物を思い浮かべろ！」

「私の……いや、僕の勇気の証！　ガウチョパアアアアンツ！」

「ふざけるなああああ！　我の言った事を聞いていたのか！」

　ハバっちゃんが激怒したが、効果はあったみたい。

　だって、怪盗ガウチョパンツの目の前に白銀のガウチョパンツが現れたから。

　この銀色の光は宇宙人ドリンクと同じ輝きだ。

　効果がないと思っていたけど、怪盗ガウチョパンツの体内にも宇宙人ドリンクの力が宿っていたんだね！

「ふざけてなどいない。僕は私服がダサかった。だから服装にこだわりがなかった。でもな。ある時ガウチョパンツに出会ったんだ。こいつを穿けばオシャレになれる気がした。僕に勇気をくれたんだ。だからコレが僕の勇気の証なんだ！」

　怪盗ガウチョパンツが白銀のガウチョパンツを手にした。

　ついに怪盗ガウチョパンツが大活躍するのかな！

　ワクワクが止まらないよ！