第114話 悪あがき

「みんな! 私の後ろに下がるのだ!」


 怪盗ガウチョパンツがマルク・セットゥに向かって走り出した。


「小物のくせに良い度胸だな!」

「私には守るべきものがあるのでな!」

「そうかい。なら実力の差を思い知らせて心を折るだけだ!」


 マルク・セットゥが剣を振り抜いた。


「鍋ぶ盾!」


 怪盗ガウチョパンツが鍋蓋を盾にしてマルク・セットゥの剣を逸らした。


「杖ストック!」


 怪盗ガウチョパンツが杖でマルク・セットゥを突いたが、見えない壁に阻まれて傷をつける事が出来なかった。

 どこから取り出したんだろう?


「どこから取り出した? そんなものは持っていなかったと思うが?」

「怪盗なんだ。秘密道具の一つや二つ持っていてもおかしくはないだろ?」

「なるほど。道具を収納するアイテムを持っているという事か」


 マルク・セットゥが笑みを浮かべた。

 怪盗ガウチョパンツが色々な道具を取り出せる理由が分かって満足しているって感じだね。

 なんでだろう?

 秘密道具を収納出来るなら、もっとマシな道具を入れておいてよって誰もツッコまないのは……


「逃しはしない! チョォォォク……ミサイルッ!」


 怪盗ガウチョパンツが放った8本のチョークを放った。

 これは目潰し攻撃だね。

 スッ。

 8本のチョークが空中で止まった。


「飛び道具は効かないよ。それっ!」


 マルク・セットゥが手をかざすとチョークが飛んできた。

 逆に利用されちゃってるよ!


「こいつは鍋蓋では防ぎきれないか。それならっ! サンシェード!」


 怪盗ガウチョパンツがサンシェードを広げてチョークを防ごうとしたが、チョークはサンシェードを避けて怪盗ガウチョパンツに直撃した。


「くっ、サンシェードでも防ぎきれなかったか。私のチョークにホーミング能力を付け加えて反撃するとはね。手強いな」


 なんか凄い攻撃を受けたような事を言っているけど、そもそもサンシェードは日光を防ぐもので攻撃を防ぐ道具ではないのだけど。

 なんてレベルが低い戦いなんだろう。

 これなら増子さんが来るまで持ち堪えられそうだね。


「何やってるのよ陽翔はると。少しは役に立ちなさい」

「ひやっ! いきなり水をかけるな! 冷たいだろ!」


 しず子さんがいやしの水を怪盗ガウチョパンツにかけると、チョークの攻撃を受けて出来た傷が一瞬で治った。


「なんだその力は……魔法か? いや、こんな力は知らない。魔法に長けたアクイアス・セッテでも不可能だろう」


 マルク・セットゥが険しい顔をしている。

 嫌な予感がするなぁ。

 オハコも同じように危機を感じているようだ。


「どうするテプ。このままだとマズいぞ」

「オハコは解決出来る力はある?」

「ねぇよ! 俺様たち妖精はサポート役だろ? 俺様が神獣モードになっても、しず子は回復魔法しか使えねぇんだからさ」

「心配ない。私が何度でも立ち上がるからさ」


 怪盗ガウチョパンツは危機を感じていないようだ。

 マルク・セットゥが馬鹿にしたように笑っているよ。


「何度立ちあがろうと私は倒せんよ」

「違う! 最後に勝つのは私の方だ! くらえ! 杖ストック!!」


 怪盗ガウチョパンツが杖で攻撃したが、マルク・セットゥが剣で杖を切断した。

 そして手のひらを怪盗ガウチョパンツに向けた。


「これならどうだ?」


 マルク・セットゥの手のひらから光線が放たれた。

 これは嘆願石たんがんせきの悪魔と同じ力だ!


いやしの噴水!」


 しず子さんがいやしの噴水を使ってくれたおかげで、怪盗ガウチョパンツが一瞬ボロボロになったが消滅はしなかった。

 危なかった!

 燐火りんかちゃんの金 鳳 劫 火ラナンキュラスですら突き破る光線だからね。

 まともに食らっていたら消滅していたよ!


「これでも耐えるのか。この力に耐えられるのはレオディック・セブンの呼び出した神くらいだと思っていたのだがね。これだけの力を持った奴を放置出来ないな。まずは回復能力を持ったお前だ!」


 マルク・セットゥの魔法力が上がったのが見える。

 今まで手加減してたんだね。

 どうしよう?

 しず子さんが先に倒されてしまったら全滅しちゃうよ!

 僕には敵を倒す能力がないから逃げるしかないかな……


「諦めるな! 私が盾になる! 全員守ってみせるさ!!」

「無駄な事だ!」


 マルク・セットゥが再び手のひらから光を放った。

 怪盗ガウチョパンツが自分を盾にして僕たちを守ってくれた。

 しず子さんがいやしの噴水ですぐに回復しているから怪盗ガウチョパンツが死ぬ事はない。

 でも、しず子さんを狙ったマルク・セットゥの剣を防ぐ事は出来ない。

 しず子さんがやられたら僕たちの負けが確定してしまう。

 僕が盾になって、しず子さんを守るのだ!


「うにゃ〜!」


 僕はしず子さんを守るように飛び出した。

 ズドン!

 ものすごい音が鳴ったけど痛くはなかった。

 何が起きたんだろう?

 ゆっくり目を開けると魔法少女の衣装が見えた。

 この衣装は……増子さん!

 来てくれたんだね!!

 マルク・セットゥの剣が見えない力で防がれている。


「魔法少女セイント・ジャスティス登場ってね! ここから先は勇気マシマシ、勇気増子が相手だ!」


 やったあ!

 これで一安心だね!

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