第78話 冥王軍のWEB会議

「クォーツコア回収完了! 撤収するわよ」


 蒼羽あおはさんが鉱魔こうまのコアの回収を宣言した。

 僕達が怪盗ガウチョパンツと話している間に倒したんだね。

 パイライト、スピネル、ガーネット、フローライト、そしてクォーツ。

 これで僕が知っているだけで5体のコアを回収した事になる。

 あと何体鉱魔はいるのだろう?

 鉱物の数だけ存在するならキリがないと思うのだけど……


「私にも聞こえたよ。賢者の魔法少女達が鉱魔を倒したのだね。これで益々危険になったな。早く賢者の居所を突き止めねばならん」


 蒼羽あおはさんの声は怪盗ガウチョパンツにも聞こえていたようだ。

 益々危険になったか……何が危険なのだろう?

 賢者が危険人物かもしれないって事は分かったけど、鉱魔が倒される事自体は問題ないと思うのだけど。

 鉱魔のコアを悪用しているかもしれないって事は僕も考えたよ。

 でも蒼羽あおはさん達は、いくらコアを入手してもパワーアップしないんだよね。

 コアを使う気配がないのに、何で焦ってのだろう?


「はる……怪盗ガウチョパンツさんは何で焦っているのですか? 蒼羽あおはさん達はコアの力を使っていないですよ。彼女たちがコアを悪用するとは思えないのですが」

「甘いよ。相手が七つの大罪の一人であれば、捨て駒の彼女たちに力を分け与えるはずが無い」

「訂正して下さい!」


 聞いたことがない燐火りんかちゃんの怒声。

 お、怒ってる。

 さっきまで興味なさそうだったのに?!


「すまなかった。失言だったね。でも敵は悪い大人なんだよ。だから子供が考えないようなあくどい事もするのさ」

「彼女達は、しず子さん達と同じ本当の魔法少女なんだから! 大人とか子供とか関係ない!」

「そうだよね燐火りんかちゃん。蒼羽あおはさん達は、僕達と同じ紅鳶べにとび町を守る為に戦う正義の魔法少女なんだから!」

「それは違うよテプちゃん。わたしは偉大な大魔導士だから。魔法を使えるからって魔法少女と一緒にしないでよ」


 えええっ!

 これだけ盛り上げておいて、それはないよ。

 ここは一致団結するところでしょ?

 一人だけ特別感ださないでよ!


「ま、まぁ頑張ってくれよ」

「逃げないで下さいよ怪盗ガウチョパンツさん」

「逃げはしないさ。大賢者の捜索に戻るだけさ」

「あの3人の後をつけたりはしなかったの? 大賢者がコアを手に入れるには彼女達と接触しないと無理だよね?」

「それなら、もうやった。だが大賢者は彼女達の前に姿を現さなかったよ」


 えっ……

 自分で言っておいてドン引きするのは筋違いかもしれないけど、陽翔はるとお兄さんは本当に彼女達の後をつけたんだ……

 隣の燐火りんかちゃんも無表情になっている。


「まってくれテプちゃん! 誤解だ! 私は世界の平和の為に活動しているだけだから! そうだ! 彼女達だって危険かもしれない。知らない大賢者のおじさんに魔法少女にならないかって声をかけられるのは怖いだろ?」


 怪盗ガウチョパンツが焦っている。

 言っている事は間違ってはいないけどね、28才の男性につけ回されるのも十分怖いよ。


「わたしとテプちゃんに任せてくれれば良かったのに」

「そうはいかんよ。危険な相手だからね。犯罪者と戦うのは子供達ではない。闇の放浪者、怪盗ガウチョパンツだ! さらば!!」


 怪盗ガウチョパンツとの通信が切れた。

 逃げた!!


「テプちゃん、一刻を争う事態だね。芽衣子めいこちゃんを呼ぼう」

「うん、冥王軍出撃だね」


 燐火りんかちゃんが何に対して一刻を争う事態と思っているのか聞かない事にした。

 たぶん想像通りだから……

 さっそく、お家に帰って芽衣子めいこちゃんとWEB会議を開催した。

 パソコンって道具は便利だなぁ。

 冥王軍はハイテクなのだ!


「どうした大魔導士よ。この冥王に何用だ?」


 恐ろしい魔王城の様な部屋で椅子に座る芽衣子めいこちゃんが映し出された。

 芽衣子めいこちゃんの部屋って、こんなに恐ろしいインテリアだったの?!


「また背景画像をアップデートしたんだね。かっこいいね」

「最終決戦に向けてアップデートをしたんだよ。冥王軍の本拠地って感じが出てるでしょ?」


 なんだ、画像だったのね。

 二人の会話がなかったら恐ろしい部屋に住んでいるって信じちゃってたよ。


芽衣子めいこちゃん、陽翔はるとお兄さんが中学生の女の子の後をつけていたんだよ。犯罪だから早く止めよう!」

「なるほど。それは危険な状況だね」


 芽衣子めいこちゃんが頷いている。

 もしかして燐火りんかちゃんの話を真に受けちゃった?


芽衣子めいこちゃん、陽翔はるとお兄さんは、やましい事はしてないよ。誤解だから!」

「分かっているよテプ君。誤解を受けてでも解決しなければならない危険な状況なんだよね? 目的は大賢者?」

「はい、大賢者を探す為に魔法少女の3人の後をつけただけなんです」

芽衣子めいこちゃん、陽翔はるとお兄さんがこれ以上変な事をする前に冥王軍で解決しよう!」

「それなら良い作戦があるよ。紅鳶べにとび町のみんなの協力が必要になるけどね」

「聞かせてよ芽衣子めいこちゃん」


 僕達は芽衣子めいこちゃんの作戦を聞いた。

 なるほど、これなら本当に大賢者アクイアス・セッテが悪人かどうか分かると思う。

 でも成功するかな?

 だって、この作戦のかなめは僕でしょ?

 僕は彼女達の信頼を勝ち取れるほど仲が良かっただろうか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る