第64話 使命を果たす為ならば

 降りしきる灰の中、魔法少女達は戦うのを止めて沈黙ちんもくを続けていた。

 そういう反応になるよね。

 必死に戦っていたのに、突然出て来た小学生に奪い合ってた鉱魔こうまを一瞬で灰にされたんだからね。

 鉱魔を灰にした事で、鉱魔を守ろうとしていたしず子さん達の妨害したし、鉱魔をコアにして回収したかった蒼羽あおはさん達の妨害にもなっている。

 これで僕達は二組の魔法少女達と明確に敵対した事になる。

 さて、燐火りんかちゃんはこれからどうするのだろう?

 もう僕の手に負える状況ではないよ。


「わたしは芽衣子めいこ。冥王軍の長である。紅鳶べにとび町に戦乱をもたらす魔法少女よ! 直ちに戦闘を停止!」


 芽衣子めいこちゃんが戦いを止める様に呼びかけたが、既に

 戦いは終わっている。

 しかも最後んだから笑われているよ。

 緊迫した場が和んだから良いのかな?


「冥王様がお怒りの様だけど、どうするお姉ちゃんたち?」


 燐火りんかちゃんが愚者ぐしゃの杖を向けた。

 何で戦闘意欲をみせるの?

 もう十分戦ったでしょ?

 一撃しか放っていないけどね……


「戦うわよ。私たちには鉱魔のコアが必要なの。世界を救うには鉱魔のコアが持つ世界の力が必要なのだから」


 黄金の巻き髪の少女……蒼羽あおはさんが燐火りんかちゃんの前に立ち塞がった。


「お姉ちゃん強気だね。わたしの火炎魔法の威力を見たのに勝てると思っているの?」

「勝つわよ。亜夕美あゆみ、ウォーターウイップで彼女を攻撃しなさい」


 えっ、何言ってるの蒼羽あおはさん?

 燐火りんかちゃんを攻撃するって本気で言ってるの?

 仲間の星七せいなさんと亜夕美あゆみさんもドン引きしてるよ。


燐火りんかちゃん、どうしよう?」

「えっ、あっ……」


 燐火りんかちゃんと芽衣子めいこちゃんも焦っている。

 当然だよね。

 どれだけ強力な魔法が使えても人を殺すつもりはない。

 圧倒的な攻撃力を誇る魔法しか使えない燐火りんかちゃんには相手を無力化する手段はない。


「何を言っているの蒼羽あおは? 私は子供を攻撃しないわよ」

「命令です。攻撃しなさい亜夕美あゆみ……いや、智慧ちえの戦士アクアオーラ。貴女は世界を救う魔法少女なのよ。相手の攻撃は私が受けます。私が死した後は賢者に後任を選んで頂いて下さい」

「馬鹿やろう! 正気か? 周りを見てみろ! 俺達完全に悪役になってるぞ。俺達は正義の魔法少女を目指すんじゃないのか?」


 星七せいなさんが燐火りんかちゃんと蒼羽あおはさんの間に割って入った。

 周りを見渡すと町のみんなが蒼羽あおはさんを非難する様な目で見ている。


「正義の魔法少女? そんな事誰が言ったの? 星七せいな、うわさ話に流されないで。私たちの使命は鉱魔をコアに戻して賢者へ渡す事。使命を果たす事に正義も悪もない。誰に何を言われようと私はやり遂げてみせる!」

「そんなん知るか! 亜夕美あゆみ! この馬鹿を連れ帰るぞ! これ以上巻き添えは食らいたくない」

「同感ね。理性を失ったら魔法も只の暴力。一番理知的な私が攻撃魔法の使い手に選ばれた理由を実感したわよ」

「何するの! 星七せいな! 亜夕美あゆみ!」


 蒼羽あおはさんが星七せいなさんと亜夕美あゆみさんに引きずられていった。

 凄い迫力だったなぁ……

 攻撃魔法は使えないし格闘能力もない。

 いつも鉱魔をコアに戻すチャンスを伺っているだけだから落ち着いている人だと思っていたけど、こんなに熱い人だったんだね。

 世界を救いたいって覚悟は尊敬出来るよ。

 でもね……燐火りんかちゃんを攻撃しようとしたのは許さないからね!

 本当に攻撃してきていたら、僕の魔法っぽいアイテムで撃退してたよ。

 蒼羽あおはさん達と戦うのであれば、纏蝶てんちょうさんから入手した微妙な効果のアイテムで十分だからね。

 あとはしず子さん達に鉱魔を守っている理由を聞くだけ。


「増子さんは何で鉱魔を守っているんですか?」

「僕は理由を知らないよ。仲間を助けるのに理由はいらないからね」


 理由を知らないのに、しず子さんを手伝っていたのね。

 増子さんなら簡単に鉱魔を守る理由を教えてくれると思ったのに……

 どうやら、しず子さんを問い詰めるしかないようだ。


「しず子さん、僕達は仲間ですよね? それなのに何で理由を教えてくれないんですか?」

「子供は知らなくて良い事があるのよ~。だから仲間でも言えないの。テプちゃんが気にする事はないでしょ? 鉱魔はテプちゃん達魔法王国の妖精の使命とは関係ないでしょ?」

「僕達の管轄である紅鳶べにとび町の平和を乱しているから関係ありますよ。何で僕達を遠ざけようとするのですか?」

「危険だからよ。敵は燐火りんかちゃんを攻撃しようとしたのよ。テプちゃんは燐火りんかちゃんの妖精なんだから危険な事に関わらない様に説得しなさい。帰るわよ増子さん」

「もういいのか? 僕は真剣に説明した方が良いと思うけどな」

「いいのよ。知らない方が良い事もある。それは貴女もね」

「分かったよ。理由は分からなくても最後までついてくよ。一人に出来ないからね」


 しず子さんと増子さんが去っていく……


「オハコ! プレナ! 二人は納得してるの?」

「しず子が何をしようと俺様は味方だ。テプが燐火りんかちゃんの味方をするのと同じだ」


 オハコは納得しているのか……

 プレナは眠そうに頷いただけだったけど、オハコと同じで僕達抜きで蒼羽あおはさん達と敵対する事に納得しているようだ。

 僕達はみんなが去っていくのを見守った。

 燐火りんかちゃん達はショックを受けているだろうな……


「自ら死にに来るとは思わなかったからビックリしたね。今後は想定外の反応にも対抗出来るようにしないとね」

「防御魔法あるから攻撃されても平気だけど、触れただけで死んじゃうから使えないよね。もっと弱い魔法を使えるように特訓しよう!」


 ええええええっ!

 ショックを受けていると思ったら、そんな事を相談してたのね。

 二人共メンタル強すぎだよ!

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