僕は魔法王国の妖精 ～僕が選んだ魔法少女は火力重視の大魔導士志望でした～

第54話 板挟み？！

「何してるの子供相手に？」

「遅いぞ蒼羽（あおは）！　コイツ等が鉱魔を魔法で消滅させやがった！」

「何を言ってるの星七（せいな）？　テプさん、どういう事なの？」

　星七（せいな）さんに聞いても状況が把握出来ないと思ったのだろう、蒼羽（あおは）さんが僕に問いかけて来た。

「星七（せいな）さんが鉱魔に止めを刺せなくて苦戦していたから、燐火（りんか）ちゃんが魔法でやっつけただけですよ」

「貴女が魔法で？」

「そうだよ、わたしがやっつけたんだよ」

「信じられない……鉱魔は私の魔法でコアに戻す方法以外に倒せないはずなのに」

「わたしの魔法で倒せない敵はいないんだよ」

　燐火（りんか）ちゃんが自慢げに愚者（ぐしゃ）の杖を掲げた。

「蒼羽（あおは）さんは知らないかもしれないけど、燐火（りんか）ちゃんは最強の大魔導士なんです。クマの姿をした鉱魔を一撃で倒したんですよ！」

「どうやら信じるしかないわね。星七（せいな）から鉱魔が出たと言われて来たのに鉱魔がいないからね。鉱魔がいないなら帰るわよ」

　蒼羽（あおは）さんが帰ろうとした。

「待てよ蒼羽（あおは）！　何で許すんだよ！　こいつらのせいでコアを回収出来なかったんだぞ。あの鉱魔はフローライトだった。私達が回収していないコアだったんだぞ！」

「いいじゃない、別に。けが人出なかったんでしょ？」

「そういう問題じゃない！　私達はコアを回収して世界を救わないといけないんだ！」

「世界を救う前に近所の迷惑よ。テプさん、その子が強いのは分かったけど、無茶はしないようにね」

　蒼羽（あおは）さんが去っていった。

「次は許さないからな。お前たちは助けてやらない。待てよ蒼羽（あおは）！」

　星七（せいな）さんが蒼羽（あおは）を追いかけていった。

　せっかく燐火（りんか）ちゃんが鉱魔を倒してくれたのに、星七（せいな）さんを怒らせちゃったな。

　でも蒼羽（あおは）さんが大人しく立ち去ったのは意外だったな。

　三人の中で一番鉱魔のコア集めの使命に忠実だと思っていたのに。

　鉱魔をコアにする重要な魔法を与えれているのに、出番を奪われても気にしなかった。

　彼女は本当に人々を守りたくて魔法少女になったんだろうな。

「さて、帰ろうか燐火（りんか）ちゃん。燐火（りんか）ちゃん？」

「テプちゃん、蒼羽（あおは）さんと仲が良かったね」

「そうかな。蒼羽（あおは）さんは結構いい人だよね。星七（せいな）さんは怖かったけど」

「そんなに気に入ったなら蒼羽（あおは）さんの所に行けば。大魔導士より魔法少女の方が好きなんでしょ？」

「え～っ！　誤解されるような事を言わないでよ！　僕達妖精は魔法少女が好きだから魔法少女になれる力を与えているんじゃないよ！　そういう生き物だから！　妖精は！」

「そういう生き物だよね。男は」

「燐火（りんか）ちゃ～ん……」

　僕は情けない声を上げた。

　何で僕は燐火（りんか）ちゃんに、あらぬ疑いをかけられているんだろう……

「ちょっとからかいすぎたかな。テプちゃんが蒼羽（あおは）さん達の仲間になっっちゃったら、どうしようって思ってたの」

「僕が蒼羽（あおは）さん達の仲間に？　それはないけど、困っていたら助けると思うよ」

「ねぇ、もしもわたしが蒼羽（あおは）っさん達と敵対したら、テプちゃんはどっちの味方になる？」

　燐火（りんか）ちゃんと蒼羽（あおは）さんが敵対したら？

　考えた事はなかったなぁ。

　僕と燐火（りんか）ちゃんは紅鳶（べにとび）町を魔女の脅威（きょうい）から守ってきた。

　蒼羽（あおは）さん達も紅鳶（べにとび）町を守ろうとしている。

　目的や立場は違っても、同じ志の仲間だと思っている。

　う～ん、すぐには答えが出ないな。

　燐火（りんか）ちゃんが悪い事をするとは思えない。

　だからと言って、蒼羽（あおは）さんが悪い事をするとも思えないんだよね。

　でも燐火（りんか）ちゃんは敵対する事を想定している。

　なんでだろう？

「燐火（りんか）ちゃん、何で蒼羽（あおは）さん達と敵対すると思うの？」

「勘！」

「勘？！」

　想定外の返答だったので、思わず叫んでしまった。

　燐火（りんか）ちゃんは勘で蒼羽（あおは）さん達と敵対すると思ってたの？！

「燐火（りんか）ちゃん、意地悪しないでよ。魔法少女どうしで戦うなんて考えたくないよ」

「考えておいた方がいいと思うよ。だって、あの三人は魔法王国と関りがないんでしょ？　魔法を使っていたけど、本当に魔法少女なの？」

「それを言ったら、燐火（りんか）ちゃんの方が魔法少女じゃないけどね」

「テプちゃんは鈍いなぁ。騙（だま）されても知らないよ」

「大丈夫だよ。蒼羽（あおは）さんは良い人だと思うから」

「だから危険なんだけどなぁ。いい人は騙されやすいんだよ」

「大魔導士フラマ・グランデ様のお言葉ですか？」

「正解だよテプちゃん。大魔導士はズルくないといけないんだよ」

「分かったよ燐火（りんか）ちゃん。気を付から」

「それで、わたしの質問の答えは？」

「僕は燐火（りんか）ちゃんの相棒だよ。基本的に味方だけど、燐火（りんか）ちゃんが間違えたら止めるからね。だから毎回味方とは限らないよ」

「わたしは間違えないから、テプちゃんは一生わたしの味方だね！」

「わかったよ！　今回は良く分からない敵が相手だけど、一緒に頑張ろう！」

「うん」

　僕は燐火（りんか）ちゃんと握手をした。

　僕達の友情はそう簡単に崩れる物ではないからね。

　でも、不安になってきたなぁ。

　燐火（りんか）ちゃんの勘が外れる事はないから。

　敬愛する大魔導士フラマ・グランデ様のお言葉のせいで変な言動が多いけど、考え方は間違っていないからね。

　蒼羽（あおは）さんの事も気にっているから、敵対しない様に僕が頑張らないとね！