第9話 魔法少女の目的

 今日はみんなで作戦会議を行う事になったので、増子さんのご両親が営んでいる喫茶店に集まった。

 予想以上に凶悪な敵が出現したのだ。

 魔法少女に選ばれた三人には使命を理解してもらって、凶悪な敵がこれ以上出現しないようにする必要がある。

 最初に自己紹介をする事になった。

 仲間の事を知るのは大事だからね。


「僕は魔法王国アニマ・レグヌムの王子、アルタロネクタネブ・アバ・センタンクトロルテプ6世です。燐火りんかちゃんの契約妖精です。名前が長いのでテプちゃんと呼ばれています。ウサギさんと見た目が一緒だよ」

「俺様はオハコ。最強の魔法少女、しず子の契約妖精さ! この世界のキツネに似ているらしい」

「俺っちはプレナ。一応、増子の契約妖精って扱いさ。この世界のタヌキに似てるってさ」


 最初に僕達妖精が自己紹介した。


「わたしは木花このはな燐火りんか10才。大魔導士だよ」

「私は癒羅ゆらしず子。28才ですよ~。癒しの水の魔法が使えます」

「僕は勇気マシマシの勇気ゆうき増子ますこだ。16才で高校生もやっている魔法少女だ!」


 魔法少女の三人も自己紹介をしたので、魔法少女の目的について説明する事にした。


「三人は魔法少女にとって一番大事な事は何か知っているかい?」

「でぃーぴーえす」

「人助けだと思いますよ~」

「もちろん勇気だ!」


 しず子さんの答えは正解で、増子さんも一応大事な事を言っている。

 だけど、燐火りんかちゃんの答えは何?


燐火りんかちゃん。でぃーぴーえすって何?」

「一秒間に与えられるダメージの事だよ。でぃーぴーえすが高い方が効率が良いんだよ」


 ゲーム用語ね……昨日の一件で、燐火りんかちゃんの発想の基準がゲームだって事は良く分かったよ……

 僕は気にせず話を続ける事にした。


「しず子さんが正解だよ。人助けをして聖の気を集めて、魔の気を抑えるんだ。そうしないと凶悪な魔の者を呼び寄せてしまうからね」

「テプの言う通りさ。そして、魔法少女が人助けをする為のサポートをするのが、俺様達妖精の役目なんだ」

「僕には難しいな。変身する事しか出来ないし、学校が忙しいからさ」

「大丈夫ですよ~。私が毎日人助けしてますから。みんなで頑張りましょ~」


 しず子さんは頼もしい……魔法少女としては。

 でも大人なのに毎日人助けしていて大丈夫なのだろうか?

 僕と初めて出会った時も平日なのに、普通に人助けの為に出歩いていたしね。


「この前みたいに強力な力を持った魔女が出てこない様に頑張ろう。前回は燐火りんかちゃんの魔法で倒せたけど、戦わなくて済んだ方が良いからね」

「そうだねテプちゃん。アイテムを落とさない敵なんて必要ないよね。せっかく戦ったのに、何も残らなかったのは悲しいよね」

「何も残らなかったのは、燐火りんかちゃんが魔女を消滅させたからだと思うけど……」

「気のせいだよテプちゃん!」


 燐火りんかちゃんが元気よく言った。


「でも、二人共凄かったよな。僕は何も出来なかったけど燐火りんかちゃんは凄い杖を出せるし、しず子さんは癒しの水が入ったじょうろが出せるよね。同じ魔法少女なのに、僕は何も出せない。どうやったら魔法のアイテムを出せるんだ?」

「お水をくなら、じょうろが良いなぁと思ったら出て来たんですよね~。好きな気持ちが大事なのかもしれないですね」

「そうだったのか! なら燐火りんかちゃんは杖が好きなのか?」

「好きなんて生ぬるい。我の愚者ぐしゃの杖は、魔法の威力だけを追求した愚か者の証。我が人生そのものなのだ!」

「凄い気迫! 小学生とは思えない考えだ!」


 増子さんが感心している。

 それは燐火りんかちゃんが好きなゲームに出てくる大魔導士フラマ・グランデのセリフだよ。

 燐火りんかちゃん自身は深く考えてはいないと思うよ。

 でも、どうして燐火りんかちゃんとしず子さんの二人だけ規格外の魔法が使えるのだろう?

 好きな気持ちだけでは魔法力は上がらないはずなんだけど……

 燐火りんかちゃんの魔法が変化したのは、変身ブローチを纏蝶てんちょうさんが改造してからだったよなぁ。

 しず子さんも纏蝶てんちょうさんのお店で変身ブローチを改造したのかな?


「しず子さんは纏蝶てんちょうさんのお店に行った事がありますか?」

「テプちゃん、命は大事に……ねっ?」


 しず子さんが感情の無い声で言った。

 こここ怖い!

 しず子さんは纏蝶てんちょうさんの事が嫌いなのかな?

 二人の間に何があったのか分からないけど、これ以上纏蝶てんちょうさんの話題については触れないでおこう!

 丁度、デザートのアイスも来たし、楽しくお話しないとね!


「見つけたぞ魔法少女」


 昨日魔王を名乗っていた男性が入店してきた。

 僕達を追いかけて来たのか?


「何名様ですか?」


 増子さんのママが普通に接客を始めたので、僕は様子を見守る事にした。


「我は魔王……」

「魔王様一名ですね。こちらにどうぞ」


 魔王がカウンター席に案内された。


「ご注文は何になさいますか?」

「だから、我は魔王……」

「ご注文は魔王ですね」

「えっ、魔王? そんなメニューあるの?!」


 戸惑う魔王を無視して真っ赤なカレーが運ばれてきた。

 魔王が一口食べると……


「ゴハッ! 痛い! 痛いぞおおおおお!!」


 魔王が悶絶もんぜつしている。

 僕らがスイーツを堪能している背後で、何もしていないのに平和が守られていた。

 よきかなよきかな。

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