第8話 いじめっ子登場?

 今日は燐火りんかちゃんと一緒に小学校に行く日だ。

 僕の姿が見えたら大騒ぎになるだろうから、魔法で姿を隠す事にした。

 これで他の魔法少女や魔の者以外に姿を見られる事は無いだろう。

 学校での授業は魔法王国と違う内容で楽しかった。

 でも気がかりな事があった。

 燐火りんかちゃんが登校時もお昼休みも一人だった事だ。

 友達いないのかなぁ……

 休憩時間中は一人でノートに何かを必死に書き込んでいる。

 キャストタイムとリキャストタイムって何だろう?

 燐火りんかちゃんが何に夢中になっているのか良く分からなかったが、授業が終わって帰る事になった。

 下駄箱で履き替えていると二人の男子が駆け寄って来た。

 遂に友達登場か?!

 確か、ガキ大将って感じの子が健斗君で、眼鏡の頭が良さそうな子が翔太君って呼ばれていたな。


「今日こそお前を倒す! 新たに手に入れた聖剣の力でな!」


 いきなり攻撃宣言?!

 しかも聖剣?!

 健斗君はスポーツ得意そうだから武器が似合うと思うけど、どうやって聖剣を手に入れたの?


「ふふっ、ラファエル。お前の聖剣が我に届くと思ったか? この前、我の殲滅せんめつ魔法で瞬殺されたのを忘れたのか?」


 燐火りんかちゃんが右手を突き出して言った。

 えっ、ラファエル?

 健斗君じゃないの?!


「覚えていますよ、僕がね。大魔導士ラナ、全開の戦いでお前の殲滅せんめつ魔法のキャストタイムは把握した。僕の祝福の力を受けたラファエルの一撃なら君に届くよ」


 翔太君が指先で眼鏡のずれを直した。

 何の戦いが始まるの?

 燐火りんかちゃんが魔法を使える事は知っているが、この二人も特別な力を持っているのか?


「甘いなミロス。常に研鑽を積む、だからこそ大魔導士なのだ。今日の私が昨日の私と同じだと思わない方がいい。魔道の道に終わりはないのだ!」

「そんな事は分かっている。それでもお前を越えて見せる! 俺は勇者なんだから!!」

「その意気ですよ。その勇気を認めたから、僕は神官になってサポートする事にしたんです。本当は僕も前衛職がやりたかったんですけどね」

「いいだろう。この大魔導士の私が相手をしてあげる。パパがうるさいから一時間だけだけね」

「よっしゃー! いつも通り19時からでいいよな? 必ず来いよ!」

「僕は18時からログインしてますよ。事前準備がありますので」


 健斗君と翔太君が笑顔で手を振って去っていった。

 燐火りんかちゃんも笑顔で手を振り返している。

 子供とは思えない殺伐とした会話だったな……

 僕がパパとママに聞いていた話とは違う。

 放課後はかくれんぼやサッカーで遊ぶ約束をするって聞いていたのに……

 もしかして燐火りんかちゃんは虐められている?

 でも笑顔だったから違うと思うとおもうけどなぁ……

 二人と燐火りんかちゃんの関係が気になるが帰宅する事になったーー


「お前だな。強大な魔法をつかったのは?」


 二日前に魔女と戦った大通りで、全身黒づくめでマントを羽織った男性に声を掛けられた。

 強大な魔法を使ったって言ったよね。

 この人、燐火りんかちゃんが魔法を使った事を知っている?

 敵かもしれないので、僕はとぼける事にした。


「何で僕達に声を掛けたのですか? 魔法なんてあるはずないでしょ。非常識ですよ」

「ウサギが話す方が非常識だろう? 喋ると言う事は、魔法王国の妖精なのだろう?」


 しまったーっ!

 僕の軽率な行動で魔法王国の関係者だってばれてしまった!


「魔法王国を知っている……貴方は何者ですか?」

「我は魔王……」


 燐火りんかちゃんが男性の横を通って行った。


「ま、待て! そこの少女!」

「興味ないです」


 燐火りんかちゃんが去っていく……


「待ってよ燐火りんかちゃん。相手は魔王だよ」

「そうだぞ。我は魔王……」

「さようなら!」

燐火りんかちゃんは何で魔王さんの話を聞かないの?」

「だって、魔王って倒したら終わりでしょ。アイテム落とさないから興味ない。疫病神やくびょうがみみたいで大っ嫌い!!」

「や、疫病神やくびょうがみ……」


 魔王が倒れた。

 可愛い少女に疫病神やくびょうがみ扱いされた上に、大っ嫌いと言われたのが効いたのだろう……

 魔王も気になるが、健斗君達との約束の方が気になる。

 さようなら、名前を名乗る事すら出来なかった魔王……


 *


 約束の19時になった。

 何が行われるのか分からないけど、燐火りんかちゃんの戦いを見届けないと。

 僕は何時でも出かけられるように待機していたが、燐火りんかちゃんは何故かパソコンを操作してゲームを始めた。


「ねぇ、燐火りんかちゃん。健斗君と翔太君に会いに行かないの? 19時から約束していたよね」

「してたよ。だから今戦闘中。ほら、この勇者のラファエルが健斗君のキャラで、この神官のミロスが翔太君」

「でも二人共いないよ? この部屋には僕と燐火りんかちゃんしかいないじゃないか」

「テプちゃん知らないの? ネットワークで対戦出来るんだよ。健斗君と翔太君も自分の部屋で参加してるんだ」


 カルチャーショック!

 ゲームくらいパパに聞いていたから知っているよ。

 でも、ゲーム機につながっている二つのコントローラーで対戦するって言ってた!

 その場にいないのに対戦出来るなんて知らないよ!


「健斗君と翔太君ってゲーム仲間なの?」

「そうだよ。パソコンのゲームやってるの、同じ学年だと健斗君と翔太君しかいないから」

「じゃぁ、下校時の会話はゲームの話しだったの?」

「そうだよ。テプちゃんは何の話に聞こえていたの?」

「えっ、その、ゲームだよね……」


 僕は勘違いしていたことを誤魔化した。

 燐火りんかちゃんに友達がいて良かった。

 変わった子だから心配してたんだよね。

 あれっ、何か忘れている様な気がするけど……なんだったかな……

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