第24話 巣穴 × 捜索
この学校に人間に憑依する堕神……禍津霊の巣がある。
巣穴の存在に気がついた俺は放課後になって禍津霊の巣穴探しを始めたのだが、捜査は思った以上に難航していた。
生徒の立ち入りを禁じている一部の部屋を除いて、学校中を見回ってみたのだが……残念ながら、巣穴を発見することはできなかったのだ。
(参ったな……いったい、どこにあるんだ?)
『連中、随分と上手く気配を隠しているようじゃな。直接、巣から出てくる現場を押さえぬ限り、異界のある場所はわからぬな』
(……お前でもわからないのか? 神様なのに?)
『妾は戦いの神じゃからな。人探し、物探しは得手ではない……こういったことは、本来であればあの小娘のような退魔師どもが得意とすることなのじゃがな』
「…………」
詩織であれば、巣穴を見つけることができるということか。
そうだとしても、彼女に連絡を取って協力を仰ぐというのは御免だが。
(あるいは……憑依されていた連中の身元を洗うという手もあるな。アイツらが校内で禍津霊に憑りつかれていたというのであれば、どこの誰かがわかれば巣穴の場所を絞れるかもしれない)
こんなことならば、彼らを倒した後で生徒手帳などを確認して名前だけでも押さえておくべきだった。
タイの色から学年はわかるが、クラスや名前はわからない。
(先生に聞いても教えてくれないよな、たぶん。地道に聞き込みするしかないのか……?)
「相談役が、アドバイスをしてくれる『
思わず、口に出してつぶやいてしまう。
堕神について、自分が置かれている状況について、誰かに相談に乗ってもらってアドバイスが欲しい。
残念ながら、俺はあまり頭が良い方ではないのだ。
八雷神も秘密主義でおまけに脳筋なところがあるし、知恵袋となってくれる人間が欲しかった。
『好き勝手に吹聴すれば退神師どもに動きを気取られるやもしれぬ。あまりお勧めはできぬな。よほど信頼できる者ならば良いが』
(口が堅くて信頼できる友人か……武夫だったら相談に乗ってくれるだろうし、協力だってしてくれるはずだ)
だが、武夫は部活動で忙しくて、大学生の彼女持ち。
あまり巻き込みたくはないし、そもそも頭脳労働として使えるようなタイプではない。
(詩織に刺されたことを話したら、絶対に問い詰めに行くよな。詩織の仲間……退神師に俺のことがバレるかもしれない)
ならば、他に人がいただろうか。
クラスメイトに百パーセント信用できるほど親しい人間はいない。
唯一、萌黄さんだけは真剣に相談を聞いてくれるかもしれないが……彼女を巻き込んで危険にさらすなど、絶対にありえなかった。
『信用できる友人が一人しかおらぬとは寂しい奴じゃのう』
(放っておいてくれ。友達は多い方が良いって考えの人もいるかもしれないけど、親友は一人いたら良いんだよ)
『自分への言い訳に聞こえるがの』
(放っておいてくれ……ん?)
「着信か?」
ポケットのスマホがバイブした。
先日、買ったばかりのそれを確認すると……MINEのメッセージが来ていた。
メッセージを開くと、淡白で短い指示が書かれている。
【部室に来い。幽霊くん】
「ああ……アイツがいたな。そういえば」
そのメッセージの送り主の名前を見て、俺は「うわあ」と顔を顰めた。
このメッセージの送り主ならば、非日常的な内容でも受け入れてくれるだろう。
好奇心によって協力もしてくれるだろうし、相談役としても役に立つ。
秘密は独り占めして楽しむタイプなので、意味もなく吹聴したりもしないだろう。
「雨宮キサラ……オカルト研のアイツに頼らなきゃいけない日がこようとはな」
俺は友人……武夫ほどではないが親しい友人の顔を思い浮かべ、全力でしかめっ面になったのであった。
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