第18話 Happy days(18)

「仲直りしたの? よかったわねえ、」



萌香はホッとした。



「はあ・・おかげさまで。 んで、今度の土日、お休みして近くの旅行に行こうって話になって・・」



夏希は嬉しそうに言った。



「仕事も大変だろうけど。 ほんと高宮さんも働きすぎやから。 ええんとちがう?」



「でもね・・」



夏希は髪をとかす手を止めた。




「なんか。 大変なことになっちゃって・・」



「大変なこと????」



「ちゃんと毎朝基礎体温を計れとか。 食事は3食きちんとバランスよく採れ、とか。 酒を飲みすぎるな、とか・・・」



そう言ってため息をついた。



「・・それは・・子作りのために・・?」



萌香は彼女の様子を伺うように言った。



「隆ちゃんて。 何でも凝り始めると大変なんですよ。 料理も前は全然しなかったのに、やり始めたらあたしが適当に醤油とかドボドボ入れてると、『なんで計らないんだ!』とか。 掃除してても『先に上のホコリを払ってから掃除機だろ!』とか。 すごくすごく細かくて、きっちりするんですよ。」



また新たな悩みが増えてしまったようだった。



萌香はおかしくなってぷっと吹き出した。



「それで! やっぱり最初は女の子の方が育てやすいとかどっかで情報を仕入れてきて。 女の子ができるにはどうしたらいいかとか。 なんか研究しはじめちゃって!」



夏希はさらに萌香に縋りつく。



「え~~???」



「なんっかもう・・極端なんですよぉ・・」



ズボラな夏希には到底ついていけなかった。



「・・って! またあたし余計なことしゃべっちゃった! 栗栖さん、このことは誰にも言わないでくださいね!!」



夏希はまたも自分の口の軽さに慌てて萌香に釘を刺した。



「う・・うん。」




なんだかんだ心配しても。



結局この二人はよくできているというか。



お互い文句を言いながらも



ちゃーんとうまいこと収まるようになってるんやなあ・・



萌香は呆れながらもそう思い



ふっと笑った。




「え・・なにこれ・・」



夕食を久しぶりに一緒に採ることになったが



先に帰った高宮が食事の仕度をしてくれた。



そのメニューが。



夏希にはハンバーグ大盛り。



高宮はサラダと野菜の煮物だけだった。



「なんで隆ちゃんはハンバーグ食べないの?」



「おれはいいの。 女が肉食で男が草食の生活をしていると、女の子ができるって本に書いてあったから。」



高宮は平然とそう言って、ゴハンを食べ始めた。



いつのまに



本なんか読んじゃって・・



夏希は彼の凝り性に呆れていた。


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