第15話 Happy days(15)
「仕事がほんと忙しくて・・。 病気療養から復帰したあともやっぱりもう毎日めまぐるしくて。 家に帰ると、どっと疲れがでるっていうか。 夜もできるだけ早く寝たいとか思っちゃうし・・」
高宮はようやく本音を話した。
「おまえが忙しいことはわかる。 でも。 加瀬はほんまに心からおまえの子供が欲しい!って熱望してんねんで。 ウダウダ言うてるけど、結局・・することシないとでけへんやろ!!・・ったく!」
志藤の言葉の勢いに押されて、思わずのけぞった。
「でっ・・でもっ・・」
まだ言い訳をしようとしていることを察し
「シないとできないの!!! それ以上のことがあるか!!」
実は何も関係がないのだが、志藤は高宮に対して非常に腹が立ち怒ってしまった。
シないと
できない・・
その言葉が高宮の中をぐるぐると回った。
「加瀬なんか男だっておまえしか知らんし! そういう知識だってゼロに近いやろ。 そういう女に惚れてしまったんやから! ちゃんと責任取れっ! あいつがそういうことをだな、恥ずかしげもなくベラベラしゃべるのも! ぜんっぜんわかってねーからだろ????」
悔しいけど言い返せなかった・・
「おまえ、まだ妙なプライド持ってるみたいやけど。 加瀬と結婚した時点で。 もうええやろって! 自分の子供が欲しいなんて好きな女から言われて。 メーワクがるって! めっちゃおかしない????」
高宮は一言も発せなかった。
「あ・・おかえり。」
家に帰ると遠慮がちに夏希が小さな声で目を逸らしながら言った。
「・・ただいま。」
今朝から口を利かなかった彼がそう返してくれただけで夏希は嬉しくて
「ごはん。 作ったよ。 おいしいかどうかわかんないけど・・」
顔をほころばせた。
「・・うん、」
高宮はネクタイを緩めて頷いた。
「あっと・・ほんと。 ごめんね。 あたし、深く考えないでいっつも・・」
彼女があんまりしょんぼりとしているので
「ううん。 おれの方こそ。 言い過ぎた。 ごめん、」
高宮も素直に謝れた。
「・・子供。 そんなに欲しい?」
そして落ち着いた口調で彼女に語りかけた。
夏希は大きく頷いた。
「栗栖さん見てると。 ほんっと幸せそうだなあって。 大好きな人の子供を産んで。 一生懸命育てて。そういうの見てると・・あたしも隆ちゃんの子供が欲しいなって。 ぜんぜん生まれてもないのに想像するだけで、すっごく胸が熱くなって。 子供は大変だってわかるけど。 でも、」
一生懸命に彼女は自分の気持ちを高宮にぶつけた。
それが
ひしひしと伝わる。
いや。
そういうことじゃないんだ。
高宮は彼の顔色を伺いながらジッと見つめる彼女の目を見た。
そして
夏希をいきなり抱きしめた。
「隆・・ちゃん?」
高宮は何も言わずにぎゅっと彼女の背中にやった手に力を入れた。
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