第13話 Happy days(13)

朝も高宮は口を聞いてくれなかった。



夏希はもう自己嫌悪に陥った。



はあああ~



ほんっとバカだなあ、あたしって。




「おっはよ。 疲れた顔して~~~、」



志藤に能天気に朝の挨拶をされて



高宮は彼を据わった目でにらんで



「・・おはようございます。」



ドスの効いた声で怖い顔で言い返した。



「なっ・・なに????」



思わず後ずさりするほどの迫力・・



高宮は機嫌悪そうにそのままスーッと志藤の前を通り過ぎた。



志藤は気になって事業部に夏希の様子をこっそり見に行ってしまった。




そこには



もう『負』のオーラがビンビン感じるくらいの夏希の姿が・・



ひと目で


『スッポン作戦』が失敗したことが伺えた。



「加瀬、」



小声で呼んで手招きをした。



「なんですか・・?」



憔悴しきった顔で夏希がゆらっと歩み寄った。



「その顔は。 アカンかったみたいやな・・」



志藤は耳打ちするように言った。



「アカンもなにも。 隆ちゃんに・・バレちゃって、」



「は?」



「志藤さんのスッポンのことも。 もう・・すんごいすんごい怒られちゃって! 今朝なんか口もきいてもらえなかったんですから・・」


夏希はガックリと肩を落とした。



「はああああ。 そやったんかあ。 それであいつ今朝機嫌悪かったんやな・・」



高宮の様子を思い浮かべた。



「あたしが。 恥ずかしいことを栗栖さんや志藤さんに言ったってことが、本当に許せなかったみたいで。もう赤ちゃんどこじゃないですよ・・」



「そうかああ。 スッポンも効かなかったかあ、」



志藤がため息をつくと



「や。 いちおうスッポンはめっちゃ効いたんですけどね・・」



夏希はまた言わなくていいようなことを話してしまい、



「はっ!!! また怒られるっ!!! ほんっともう余計なこと言わなくていいですからっ!! そっとしておいてください!!」



一人で慌ててそのままデスクに戻ってしまった。



「・・結局効いたんかい、」



志藤はボソっとつぶやいた。





「なんか。 加瀬さんがかわいそうなんですけど・・」



萌香は志藤に書類を手渡しながら、こっそりと言った。



「あー。 ほんまにもう。 あいつが何も考えずにベラベラしゃべるのは、わかりきってることやんなあ。 高宮、ほんっまに真面目で。 そういうのも許せへんのやろけど。 ちっさいやっちゃなあ、」



志藤は頬杖を着いてため息をついた。



「ぜんぜん口利いてくれないって、あたしに半ベソで言ってましたから。」



萌香も同じようにため息をついた。

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