第12話 Happy days(12)

もう明け方だったが。



高宮は怖い顔をして腕組みをし



目の前に座る夏希を見ていた。



「赤ちゃんが・・欲しくって・・」



夏希は先生に叱られている子供のようにうなだれてしょんぼりして言った。



「はあ???」



高宮は素っ頓狂な声を出した。



「でも。 あんま・・隆ちゃんシてくんないってゆーか。 あたし、ほんっとこういうこと疎いからわかんないんだけど。 やっぱいっぱいシてないとダメなんじゃないかとか。 ずうっと悩んでて。 んで・・栗栖さんに相談してたら・・志藤さんに聞かれちゃって、」



夏希はパジャマの上着の裾をイジイジしながら本当のことを話した。



「したら。 志藤さんが新婚なのにそれはよくないって言って。 隆ちゃんをスッポンに誘うからって言ってくれて・・。 おまえはできるだけセクシーなカッコしろとか・・」



「は・・・」



事の真相のあまりのバカらしさに力が抜けた。



夏希がいきなり真夏のような格好をしていたり



メイクをしていたり



一緒に風呂に入ろうと言ったことも



全部そのためだったのか、と初めて繋がった。



「・・で。 おれらの『夜の生活』まで赤裸々に話したっていうのかよ!」



もう高宮は恥ずかしくて恥ずかしくて思わず声を荒げてしまった。




「せ、せきららって。 どこまでかよくわかんないけど。 まあ『回数』とか・・・」



夏希の言葉にまたカーッとなってしまった。



「なんでそんなことまで言うんだよっ!!! 恥ずかしいことだと思わないのかよっ!!」



テーブルをバシっと叩いた。



「ごっ・・ごめんなさいっ!!!! もー、ほんと・・どこからが恥ずかしいことなのか・・わかんなくなっちゃって、」



その言い訳の間抜けさも脱力した。



「夏希は! もう常識がどーかしてるよっ!!! おれは栗栖さんや志藤さんにどういう目で見られてたんだっ!!!」



高宮は頭をかきむしった。




夏希は彼に『どうかしてる』とまで言われてものすごいショックを受けてしまった。



「ごっ・・ごめんなさ~~い、」



グスンと涙ぐんでしまった。



「そうやって! 何でも人に言うから! 言っていいことと悪いことがあるだろっ!! 人に言う前におれに相談しろっつーの!!!」



高宮はもうどうにもこうにも怒りがおさまらなかった。



まんまと志藤の思惑通りにスッポンを食べて、激しく発情してしまったという



自分の浅はかさが、プライドの高い彼にはもう



全く許せないことだった。



夏希を泣かせてしまっても



怒りの方が上にきてしまい、そのまま寝室に入っていってしまった。



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