第7話 Happy days(7)
「よし。」
志藤は大まじめに名案を提案し始めた。
「今日はおれも早く仕事が終われそうやし。 高宮も一日いるっていうてたから。 今晩、『スッポン』に連れてったろ、」
「は? スッポン?」
夏希は目を丸くした。
「めっちゃ精つけさせて。 おまえはいつにない色っぽい恰好をして待ってればええねん。 いっくらなんでもあいつも仙人ちゃうねんから、イヤでも燃えるやろ、」
「確かに。 あたし、頑張ります!!」
そして異様に張り切った。
くだらないことに張り切る二人に萌香はもう見守るしかなかった。
「ああ、いいよ。 それはおれやっとくし。 栗栖さん、さっき常務から話しあったと思うけど例の舞台の概要。 志藤さんに早く出すように言っておいて。 そしたら先に経理に見積もり持ってってね、」
「あ、ハイ・・」
萌香は頷いた。
高宮はいつもと全く変わることなく、テキパキと仕事をしていた。
一緒に仕事をするようになり、さらに彼のすごさがわかるようにもなった。
たくさんの仕事をいっぺんに任されてもまるでスパコンのようにすばやく的確に処理をする。
海外との折衝も一手に引き受けて、堪能な英語で直接交渉もする。
それでも。
夏希から相談されたあの『一件』を思い出すと
いろいろ想像してしまい
この『スーパーマン』みたいな人がねえ・・
と、別の目で見てしまう。
「なー。 たまにはさ。 メシ行かない?」
志藤は残業中、予定通り高宮を誘った。
「は?」
文書作りに精を出していた高宮は振り返りもせずに返事をした。
「おまえも専務をフォローしてめっちゃ頑張ってるんやし。 おれも助かってるし。 たまにはおごったろうかって、」
と両肩に手をやるが
「あー・・今日はちょっとやることがあるんで・・」
相変わらず彼は年長者に誘われても迎合しない。
「そんなに根詰めて仕事しても。 またおまえに倒れられたらさあ。 ようやくこの体制で何とか回るようになったし。 もう、ほんっま高宮さまさまやし。 おれも感謝してんねん。 だから。」
志藤は彼の顔を覗き込むようにニッコリ笑った。
「・・どうしたんですか?」
気味が悪くなって高宮が警戒するように言った。
「え? どうもせえへんけど?」
「あなたがそうやって気持ち悪くすり寄ってくる時って、怪しいんで・・」
賢明な彼は何かを察してそう言った。
ドキンとしたが。
「アホやなあ。 ほんまに純粋におれは感謝してんねんで? ええやん、たまには。」
志藤はいつものよく回る口でにこやかだが半ば強引に言った。
萌香はその様子を離れたところから見ていて
背を向けてぷっと吹き出してしまった。
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