第6話 Happy days(6)

給湯室の入口で志藤が大笑いしていた。



「なっ! ちょっと! 立ち聞きしないでくださいっ!!!」



夏希は真っ赤になって言った。



「なにソレ。 早くも『セックス・レス』かよ・・」



「おっきい声で言わないでくださいっ!!!」



夏希は慌てて彼の口を思いっきり押さえた。




「ぐっ・・ぐるし・・!!!」



彼女の大きな手で口も鼻も押さえられ、志藤は悶絶した。




「もー。 せまいところで、」



萌香はため息をついた。




「え~~~、月イチとか?? ソレ、ヤバイって。 まだ新婚さんやのに、」



「だからあ~~~。 声がおっきいんですよ・・」



夏希は非常に迷惑そうに言った。



「男の人ってよくわかんないんですけど。 つきあってるときとかは・・そーでもなかったのに。 一緒に住んでからはちょっと少ないかなぁ、と。 別にケンカしてるとかそーゆーんじゃないのに。 ホント『家族』になっちゃったな~~~って。」




そして、今まで誰にも言えなかった悩みを萌香と志藤に話した。



「もともと。 アイツ、けっこう淡白なんちゃうの? 男もいろいろやし。」



「え~~? 志藤さんはどうなんですかあ???」



またもあけっぴろげに訊く夏希に萌香のほうが赤面してしまった。



「は? おれ? ま。 フツーやと思う。 今でも週1~2とか。」



いつものようにかる~く答える志藤にも・・



「えー??? そーなんだぁ・・やっぱり。」



夏希はガックリきた。



「40も半ばになる人より少ないって! どーゆーことなんですかね???」



「さりげなく失礼なことを言うな・・」



志藤は夏希を忌々しい顔で見た。



「やっぱり。 あたしがぜんっぜん色気がないからですかねえ。 あー、栗栖さんのようなフェロモン分けてほしい・・」




夏希は壁に顔を突っ伏した。



「そりゃ。 栗栖みたいなヨメやったらな~~~。 もう毎晩でもOKやって。」



志藤が高らかにそう言うと、



「え! 毎晩??? そーなんですか??」



夏希はまたも真面目に萌香に食らいつく。



「なっ・・」



萌香はわかりやすく顔を真っ赤にした。



「てゆーか。 斯波さんがスゴくないですか、ソレ・」


必死な顔の夏希がおかしくておかしくて



志藤は壁をひっぱたいて笑ってしまった。



「もう!!! ヘンなこと想像しないで!!」



萌香は夏希の腕をぎゅーっと抓った。




「まあ、冗談はおいといて。 確かにソレ、もう壮年期の夫婦並みやもんなあ。 確かにこれから子供も、って夫婦には問題や、」



志藤は笑いが収まったらしく、ちょっとだけ真面目に言った。



「でしょ~~~???? でもー。 なんか『もっとシたほうがよくない?』とかも言えないし・・」



夏希は掛けてあったタオルをぐりぐりした。



「おまえ、家にいるとき相変わらずジャージやろ。」



「え・・はあ・・」



「ソレ、アカンって。 たまには足とか出して。 セクシーなカッコしたら?」



「セクシーって・・」



「男はな。 そういう雰囲気にも左右されるもんやで、」



志藤は偉そうにウンウンと腕組みをして頷いた。


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