第5話 Happy days(5)

「あ~~、疲れた~~~、」


高宮は箱根からの出張から帰ったとたん、リビングのソファーにどかっと座って首をぐるっと回した。



あんこが走ってきて彼の膝の上に乗っかる。



彼が帰って来たのが嬉しいらしいあんこは興奮して尻尾をちぎれんばかりに振りながらペロペロと彼の顔をなめる。



「わかったわかった・・もー。 興奮すんな、」



夏希は何だかいろいろ考えてしまった。



「隆ちゃんさー。 また最近仕事が忙しいんじゃない? 身体はだいじょうぶなの?」



彼の上着を手にしながら伺うように言ってしまった。




「え? ああ、別に。 まあ今回はけっこうハードなスケジュールだったからなー。 フロはいろ、」



あんこの頭を撫でてそっと彼女を床に置いてバスルームに行ってしまった。



そして。





今日は



1週間ぶりだし。



夏希は自分があとから風呂に入った後、多少の期待を持ちながら寝室に入っていく。



しかし




高宮はまだ11時前だというのに、爆睡していた。



「え! もう寝てる!?」



思わず彼に顔を近づけて確かめてしまった。



ちょっとだけ身体を揺すってみたが



全く起きる気配はなかった。



「え~~~? なに~? もう・・おじいちゃんじゃないんだからさ・・」



夏希は情けなくなって自分のベッドの端に腰掛けた。



あたしが。



もうぜんっぜん魅力がなくなっちゃったとか。



コーフンしなくなっちゃったとか・・



てゆーか。



まさか



浮気!?



とんでもない方向に想像が飛んでしまって、夏希は慌てて打ち消した。



そ、そんなこと



隆ちゃんに限ってありえない!!!



ひとり頭をかきむしってしまった。





「えー? 11時前に寝ちゃったの?」



「そーなんですよお。 ほんっと! おじいちゃんですよ、おじいちゃん!」



夏希は早速翌日、萌香に給湯室で会ったのでその話をした。



「やっぱり。 疲れているんとちがうの? 確かに忙しいんやろけど・・」



「でもー。 本人はけっこう元気ハツラツで仕事もしてるし。 ゴハンももりもり食べてるし。 あ、そーだ! ニンニクとかうなぎとか食べさせてみるとか!」



すごい名案を思いついたかのように夏希が言い出したので



「まあ精がつくものはいいかもね、」



笑ってしまった。



「スッポンの生き血とかってどーなんでしょうか、」



そしてまた大真面目に言ったところで



大きな笑い声が聞こえて二人は慌てて振り返った。


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