第2話 魔法学園にて

 魔法学園には、様々な年齢の種族が通う、魔法を習得すれための学校。


 私と、バンピーロは、晴れて入学することになった。

 入学試験とかはなく、願書だけ出せば、それだけで入れる。

 人間世界の学校なら、義務教育とかじゃない限り、そんなことはなさそう。

 だけど、外国ならあるかもしれない。


 その中でも、人間はめずらしいのか、よく話しかけられる。


「もしかして、人間?」


「人間の匂いがする」


「人間がどうやって、ここにやってきたの?」


「魔力を感じないけど、魔法なんて使えるの?


落ちこぼれになりそう・・・」

 

 私は、そんなことで動揺もしない。

 だけど、問題はバンピーロだ。


「セリオちゃんは、これでも頑張っているんだ!」


「バンピーロ、いいのよ・・・。


こういうこと言われるのは、慣れっこだし・・・」


「セオリちゃんは、傷つくことがあるなら、遠慮なんてしなくていいから、もっと僕を頼るんだ。


でないと、本当にセリオちゃんが・・・・」


 バンピーロが、悲しそうな表情をした。

 もしかして、私のことを心配してくれている?


「ありがとう、バンピーロ。


でもね、この人たちは、私にひどいことをしようってわけではないと思うわ。


ただ、人間や魔力を持たない者が目の前にいることが、珍しいだけだから、バンピーロは必要以上に気にしすぎなのよ・・・・」


 まわりにいる人たちからは、ひそひそ話が始まる。


「この二人、付き合ってる?」


「入学した当初から、こんな感じか」


 だけど、私はこんなことぐらいでは、物おじたりしない。


「ただの腐れ縁よ」


 私は、静かに答えた。


「腐れ縁かあ。


いいなあ。


こういった関係がほしいなあ」


「羨ましい?」


「羨ましい。


すっごく羨ましい。


セリオちゃん、すごくきれいだし」


「ありがとう」


「髪もつややかで、瞳も宝石みたいだ。


髪留めの赤いリボンも似合っている。


どこで、買ったんだ?」


「市場の商店街かしら?


10歳の誕生日に、買ってもらったの」


「髪のお手入れとか、どうしているの?」


「これは、そこらへんで売っているシャンプーとか使っているから、特に意識したことはないかも。


髪質はママからの遺伝かもしれないわね」


 ここで、バンピーロの視線を感じた。


 やばい、嫉妬しているかもしれない。


「ナンパか?」


「どう見ても、ナンパじゃないわよ」


「君の髪も瞳も僕だけのためのものなのに・・・」


 バンピーロは、どこか悔しそうだった。


「大丈夫よ。


私は、誰かのものになったりとかしない」


「だといいんだけど」


 バンピーロは、どこか納得していなさそうだった。


「婚約者って言ったでしょ?


その話をしたことは、なかったことになったのかしら?」


「なってない!」


 私はこの時、バンピーロは子供みたいで可愛いと思ってしまった。


 なんやかんやで、私は幸せな学校生活を送っていた。

 だけど、それも長くは続かなかった。


 幼稚園時代のいじめっ子集団がせめてきた。


「ここに、佐藤はいるかー!」


「佐藤のやつ、逃げられると思うなよ!」


 佐藤というのは、私の苗字だ。

 数年ぶりで懐かしい感情があるのと、同時に恐怖もあった。


 どこにいても、やってくる。

 まさか、魔法学校にもやってくるとは思わなかったけれど、元いじめっ子軍団は何の魔力も持っていない。

 だから、勝てっ子ない。

 だけど、元いじめっ子軍団は次々に、人を殺していった。


「なんだ、こいつら?」


「人間の匂いがするけど、何者なんだ?」


「魔力は持っていないはずだ。


どんどん、魔法を使うんだ!」


 元いじめっ子集団は銃や包丁を持っていて、それを使い、次々に銃殺や刺殺をしてくる。


 魔法学校の生徒や先生たちの魔法で、少しずつ元いじめっ子集団を撃退している。


「佐藤は、どこにいるの?」


「佐藤は、どこかにいるはずだ。


探すんだ!」


 私は槍をかまえた。


 私が、当のいじめられっ子の佐藤だと気付いていないみたい。


「君のいう、佐藤って誰のこと?」


「は?」


「佐藤って、誰のことかって話よ」


 私は、元いじめっ子のリーダーにそうささやいた。


「幼稚園の頃のひ弱な女のことだ!


坊主頭のな!」


「何のことかわからないけど、君のお目当ての相手はいないと思うわ。


早々に立ち去るのね」


「うちは、佐藤ってやつをいじめたいんだ!


いじめることを生きがいとしている!


今だって、そう!


いじめたいから、探しているんだ!


ストーカーしているんだ!


いじめをしていないと、禁断症状がでそうで・・・・」


「そんなことなら、重症ね」


「そうだよ!


重症だよ!」


「なら、昔の人がどこにいるかを探すよりは、お医者様を探した方がいいんじゃないかしら?」


「今すぐ、殺す!」


 元いじめっ子リーダーが銃を向けたところに、バンピーロが私を救出してくれた。


「バンピーロ・・・・」


「セリオちゃんにひどいことをする人は、僕が許さない。


僕が相手だ」


「かかってきな!」


「バンピーロ、こんな相手に勝てる?」


「勝てる勝てないじゃない。


君を守るか、守らないかだ」


 こうして、バンピーロが元いじめっ子に立ち向かった。


「一緒に逃げよう!


バンピーロ!


私は、君に生きてほしいよ!」


「はん。


あたしは人間世界でも警察に追われ、家族からも見放され、異世界では指名手配犯の身だ!


あたしの顔を見た以上は、簡単に逃げられるなんて思わない方がいい!」


 私も、戦わないと・・・・!


 誰にも言えないけど、私が原因で起こったことだから・・・!


 だけど、恐怖のあまり、足が動かなかった。


「バンピーロ、お願い・・・。


帰ってきて・・・・」


 バンピーロは、銃で何か所も撃たれて、怪我をしていた。

 それでも、生きているのは、吸血鬼であるおかげだと思う。


「セオリちゃん、僕は絶対に助かるから、この場を離れてよ」


 バンピーロは足を負傷して、今にも動けそうになかった。


「うちの言ったことを、お忘れで?


顔を知られた以上は、逃がさないって」


「逃げられないことなんて、承知の上だよ。


逃げられないなら、逃がしてくれないなら、戦うまでよ!」


 私は槍を抱えて、元いじめっ子のリーダーに戦闘をしかけた。


「うちは、あんたらを、世界を、許さない!」


「全部、ぜーんぶ、自業自得よ!


話を聞いた限りね!」


「うちは、理屈屋なんて嫌い!」


「私は、いつまでも過去のことばかりにこだわって、自分のことよりも、いない人のことばかり気にして、仲間の命でさえも、罪悪感を持たない君が嫌いだよ!」


 私は、負けずと言い返す。

 二度と、あの時のように我慢したりしない。


 私は、逃げることだけじゃない。

 戦う手段もある。


 私は銃での攻撃を槍で跳ね返し、ナイフも槍の刃先で折った。


「高かったナイフを、どうしてくれるの?」


「こっちこそ、大切な友達をどうしてくれるのよ?」


 私は過去にやってきたこともそうだけど、大切な人を傷つけたことを許せそうになかった。


「くっそ、強いなあ。


お前ええええ!」


「当り前よ。


ただ、守られているだけの私じゃないもの」


「佐藤は、どこだああああああ!」


「佐藤、佐藤って言うけど、過去のいない人のことなんて、諦めるのね。


どんなに探しても、どんな世界にも、手がかり一切ない人のことなんて、見つけようがないわよ・・・。


そう、私のパパと同じようにね・・・」


「うるさい!


うるさい!


佐藤が、佐藤をいじめることこそが、うちの生きがいなんだ!


佐藤のいない世界なんて、死んでるも同然だ!」


「なら、君は人としてとっくに死んでいるわね」


「お前に、何がわかるんだああ!


幼稚園の頃の快楽は、今でも忘れない!


うちは、そのためのストーカーになって、友達も犠牲にしてきた!


佐藤は、ここにいるとうちの直感が語っているんだ!」


「その佐藤って人は、本当にここにいるの?


いないんじゃない?


君の勘違いなだけで」


 私と元いじめっ子リーダーは、今は槍と銃での戦いだ。


 銃の玉が飛ぶたびに、槍で跳ね返し、元いじめっ子に全部当てていた。

 血だらけになりながらも、銃を撃ち続けるその姿は、まるで人間とは思えなかった。


 普通の人間なら、死んでいるはずだけど、なぜ生きていられるの?

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