第227話 今度は自分が

 二年前の夏、千歳は音楽の世界に入った。

 あの時点では、そんな自覚などなかったが。

 どうしてギターなどを弾こうと思ったのかは、ちょっと伴奏が欲しかったからだ。

 母と一緒に、料理の手伝いなどをしながら、歌っていた記憶。

 当時はまだ事件で負った、胸の傷からは出血が止まっていなかった。


 やたらと構ってくる先輩に命じられて、いきなりライブハウスで演奏することになったのには驚いたものだ。

(あの時はまさか、こんなことになるとは……)

 テレビにも出て、取材も受け、大きなフェスのステージで演奏し歌う。

 武道館公演などというのは、ミーハーな千歳にとっては、一つの大きな区切りにもなるものだった。

(けれどこのまま、音楽の道を進んでいくのかな)

 そこがまだ、迷うというか不思議に感じていることなのだ。


 多くのミュージシャンと出会ってきた。

 ノイズの中にも天才はいるし、ステージで他の天才が演奏するのを聴いたこともある。

 大量の人間が、大金をかけて、自分たちのために動く。

 実際に千歳が稼いでいる金額は、普通のサラリーマンよりもずっと多いものだ。

 金の流れというのは、一番はっきりと千歳にも分かりやすい。


 夏休みの登校日にも、千歳はギターを背負っている。

 軽音部の活動が、放課後にあるからだ。

 学校が近づくに連れて、周囲の視線が集まってくるように感じるのは、おそらく気のせいではない。

 テレビに出演したあたりから、かなり学校の中でも千歳は注目されている。

 暁が編入したのではなく、退学したのだという噂もあったりして、変な方向に話が向かったりもする。

(なんか、全然知らない人があたしを知ってるって、おかしな気分だなあ)

 だがそういう視線にも慣れてきた様子は、貫禄さえ感じさせるものだ。


「ちー」

「愛理」

「おっす。もう大丈夫なの?」

「あ~、お酒とか飲まされなかったし」

 武道館のライブが終了後、関わった人間を出来るだけ集め、店を貸しきった打ち上げが行われた。

 ノイズメンバーだけではなく、設営に関わった会社の人間なども、可能な限り集めたものだった。

 俊はその人数全てに酒を注いでいて、普段のやや傲慢とさえ思える部分を消していた。

 そもそもあれは傲慢なのではなく、過集中で周りを気にしていないだけなのだが。


 武道館ライブは月子ほどではないが、千歳にとっても印象深いことであった。

 だが設営などをするイベント会社やエンジニアにとっては、日常の業務でもある。

 だからといって感謝の気持ちを忘れるべきではない。

 結局芸能界は、人間関係が金銭関係を上回ることがある、と俊は言っていた。

 それはいい意味でも、また悪い意味でも。


 打ち上げの場でも俊は、暁と千歳はもちろんだが、月子をしっかりとガードしていた。

 大切なものを守るために、自分の出来ることをする。

 ただ千歳に対しても、しっかりと喉は守るように、前から言っている。

 それもまた俊にとっては大切なものなのだ。

 ノイズというグループは、大切な場所であり、また財産でもある。

 変に露悪的になるわけではないが、俊はノイズの存在が、金銭的な価値があると認めているし、広言もしている。




 ギターを背負って歩く千歳の前に、人の集まりが割れて道が出来る。

(ロックスターっていうのはこういうものなのかな)

 普通の高校生ではないが、芸能人と言うには露出が少ない。

 だが武道館でコンサートを二日で四回、そんな高校生はほとんどいないだろう。

 アイドルグループであると、意外といたりもするのだが、ノイズはバンドのグループである。

 ちなみに俊の父たちのバンドであったマジックアワーも、そんなに若い頃から売れていたわけではなかった。


 千歳はまだ、両親の記憶を発掘している途中だ。

 なのでこの業界において、意外なほど知らないことがあると言ってもいい。

(取り巻きとかが出来るわけじゃないけど)

 チケットが手に入らずに、愛理などの友人を通して、どうにかならないかという頼みはあった。

 基本的に千歳は、普通に売れる分なら売った。

 愛理などのごく一部の友人には、タダで見に来てと渡したものだ。


 そんなわけで受験生の諸君も、千歳のことは話題にしている。

 Mスタにテレビ出演した時なども、友人が急に増えたりはした。

 特に下級生などからしたら、本当に身近なスターである。

 楽器も弾けない新入部員が、今年もかなりいたのは確かだ。

 もっとも千歳も、ギターを始めたのは高校から。

 だが初期に三橋、そしてノイズ加入後は暁、俊、信吾からしっかりとしごかれている。

 これほどの濃度で練習をしていたら、それは上手くもなるというものだ。


 ちなみに暁はともかく、俊と信吾は千歳に、かなりの才能があることは初期に分かっていた。

 単純に言って千歳は、皮膚が丈夫だったのだ。

 ギターやベースなどを弾いていれば、誰もが最初につまづくところ。

 それは指の皮膚が破れて、そのたびに頑丈になっていくところ。

 暁などは物心つく前から、ギターを弾いていた。

 その頃はさすがに、指が痛くなる前に、父親が休ませていたらしい。


 没頭できるということが才能である。

 いまだにフィーリングにおいては、暁の足元にも及ばない。

 また技術においても、上手くなれば上手くなるほど、暁の上手さが分かってくる。

 単純な技術ではなく、感情を感じさせるギター。

 千歳は基本的にはリズムを取っているので、ツインリードのツインバードのような曲以外は、あまり目立つことはない。

 それでも千歳が上手くなるにつれ、その部分も複雑にはなってきているのだが。


 学校の伝達事項が終わると放課後となる。

 ティータイムにはならず、千歳の周囲に生徒が集まる。

「見に行ったよ~」

「すごかった。ライブってあんなに凄いのかって思ったもん」

「チケット高かったからなあ。ライブハウスのお手ごろ価格でもまたやるんだよな?」

 ノイズはライブバンドであるので、これからも少し大きめではあるが、200から300人規模でやる予定はある。

 だがワンマンになってくると、さすがにもうチケットが高くなってくる。


 このあたりは痛し痒しといったところなのだ。

 出来るだけ新規の客層も取り込みたいが、同時にブランド的な価値もそろそろ付けていきたい。

 1000人規模のコンサートホールでも、普通に埋められるようにはなってきた。

 それでもまだ、小さめのハコで演奏するのは、いい意味で身近に感じさせるためである。

 ノイズの音楽は、ライブハウスに合わせた音楽だ。

 少なくともファンの数は、男女もそれほど変わらない。

 基本的に若者向けではあるが、おっさんがかなり混じっている時もある。




 質問攻めにあった千歳が、視聴覚室へ向かえたのは、少し時間が経過してからであった。

 三階の隅にある視聴覚室では、機材を使った練習も出来る。

 もっともこの夏休みの登校日は、予定を合わせるためのものであったりする。

 バンド活動をするだけではなく、フェスへの参加も部活動でやっていく。

 千歳も参加するが、聴く方ではなく演奏する方だ。


 そんな千歳が発見したのは、部屋に向かう廊下にたむろし、練習を行っている部員ではない。

 さらにその前、階段付近で視聴覚室を窺っている女子生徒であった。

 一年生であれば、全員の顔が一致しているわけではない。

 しかし背中にギターを背負っていれば、軽音の部員であろう。

「何してんの?」

 声をかけると、びくりと震えた。

 おそるおそるといった感じで振り返るが、やはり見覚えのないものだ。


 別に一人で練習していてもいいだろう。

 だがだいたいは部内で作ったバンドメンバーと一緒だったり、あるいはパートごとに分かれて練習はするものだ。

「あの!」

 もふもふした天パの髪は、少し暁を思わせるが、暁は少し茶色がかっている。

「今からでも、入部出来るでしょうか!」

 なんと今さら、新入部員であった。


 もちろん悪くはない。不可能でもない。

 だがこれは最初に、ちょっと話を聞いてあげないといけないかな、と千歳は思った。

「もちろんいいけど、最初に入らなかったの?」

「うう、仮入部に一度は来たんですけど、陽キャばかりで……」

「陽キャ? そんなことないよ。普通に音楽にしか興味のない陰キャいっぱいいるし、皆普通だよ、あたしとか」

「先輩が一番の陽キャです」

「ええ……」

 自覚がない。


 千歳は色々と、自分の価値や立ち位置を、過小評価している。

 暁などは孤高の存在であったし、実際に千歳も軽音部の中では、中心となっているわけではない。

 ノイズの活動で忙しいからであるが、メジャーシーンに出ているミュージシャンが、陰キャとか普通とか、そんなわけはないのである。

 本当の陰キャとは、完全に顔出しもせず、ギターだけを弾いてネットに流しているような人間だ。

 そして書き込みに対しても、ほとんど反応を返さない。

 ……どこかのギターヒーローさんのような存在が、陰キャであると言えるのだ。


 その意味では自分でずっと満足していた、暁なども陰キャの部類に入るのだろうか。

 ただあれは話が合わなかっただけで、千歳のつながりで仲のいい人間は出来たし、ノイズの中では普通に話している。

 他のバンドの人間とも、平気で話すことは出来るのだ。

 住むべき世界が違っただけで、あれは陰キャとは言えないのだろう。

「じゃあもう一回、勇気出して来たんだ。いいじゃん」

「あの、でも本当にいいんでしょうか?」

「大丈夫大丈夫、最初は皆下手くそだし、あたしも入部した時は初心者だったしね」

 ただ千歳の場合、最初から相当耳は良かったのだが。




 スターの登場である。

 間違いなくこの学校で、一番の有名人。

 香坂千歳という少女は、そういう立場にあって、本人が偉ぶるわけではないが、影響力は強くなっている。

 特にこの軽音部においては、三橋が卒業し、暁が通信制に編入してからは、完全に一人のスーパースターだ。

 わがままを言うわけではないが、千歳が何かを言えば必ず通る。

 今までは特に、そんなことを言ってきたわけでもないのだが。


「おひさ~。新入部員一人連れて来た~」

「千歳先輩だ!」

「武道館行きました!」

 迫ってくる部員たちを抑えて、千歳は後輩を前に出す。

「この子、春に一度は来たんだけど、ちょっと入部してなかったんだって。それでもう一回来たんだけど、そういえば何かきっかけとかあったの?」

「あ、はい。ええと、元はライブハウスに一人で行ってみたら、同じぐらいの女の子たちがバンド組んでて、それが凄く上手くて、やっぱり自分もやりたいなって」

 話し始めると意外に長文になっていった。

「けれどやっぱりわたしなんかって思ってたんですけど武道館を見に行って、もうこんなの見たらやっぱりやるしかないかなって」

 確かにコミュ障に特有の喋り方ではあった。


 軽音部は基本、まったりとしている。

 自分たちで活動するのもあるが、ただ音楽の話だけをしたい、という人間もいたりするのだ。

 三橋のいた頃はそれでも、暁がいたこともあって、かなりガチなレベルを部内で組めていた。

 だが今は、一番の実力者である千歳が、ガチを外にしか求めていないだけあって、またゆったりとした活動になっている。

 そんなわけで今から入部してきた人間にも、生暖かい視線が向けられるのだ。

「じゃあ自己紹介。名前とクラスと、あとはパートはギターだよね。好きなジャンルとミュージシャンに、趣味とか?」

「は、はい。3組の柊木蓮です。好きなジャンルはハードロックにメタル、オルタナにパンクあたりで、バンドはストーンズとかツェッペリンにレッチリ、メタリカあたりで、最近の日本ならMNRとかもちろんノイズも好きで、あとまだ無名なんですけどフラワーフェスタっていうのがすごく」

「ストップストップ!」

 なるほど、と千歳も分かった。

 この好きなことを話し出すと、止まらなくなってしまう。

 自分のことをコミュ障というのも、なんとなく分かったものだ。


 ただ、業界にはこういう人間が、たくさんいるのだ。

 そして同じレベルの知識量を持っていると、話が噛み合ってとんでもないところにいく。

 練習などをしていても、どこにどういう表現を持ってきてほしいのか、俊のオーダーにメンバーは応える。

 結果として出来上がるのが、ライブとしては最強で、アルバム音源としては最高のものであるのだ。


 それにしても、聞き逃せない単語が一つあった。

「フラワーフェスタ、好きなの?」

「はい! でも知ってる人、ほとんどいないみたいで」

 実際にネットを探ってみたら、それなりに知っている人間はいるのだ。

 だがまだ、一般には周知されていない。


 古い洋楽ロックが好きで、また最近ならば見事に流行を追っている。

 要するに古典と、最先端が好きということなのだろう。

 ストーンズとかツェッペリンとかは、確実にこれは親の影響などではないだろうか。

「ギター歴はどれぐらい?」

「10年ぐらいです。お父さんがミュージシャン志望で、趣味でアコギは教えてくれて、このギターももらったものなんです」

「じゃあ、ちょっと演奏してみる?」

「いいんですか?」

「予定もあるから、一曲ぐらいね」

 防音の視聴覚室は、使える機会がそれなりに限られている。

 なので練習自体は空き教室で、アンプなどにつなげず行うしかない。

 夏休みであるので、今ならさほどの問題にもならないだろうが。


 ちなみに三年生は、既に引退のような形で、顔を出さない人間も多くなっている。

 秋の学園祭が、本当の引退になるが、この夏は受験に回す人間が多いのだ。




「エフェクターとかアンプ分かる?」

「はい。エフェクターはあんまり分からないんで、アンプ操作ぐらいしかしませんし」

 まあそうか、と千歳としても理解する。

 普通の住宅に住んでいれば、そんなにたくさんギターの音を鳴らすわけにもいかない。

 アコースティックギターの音ならば、そこまで騒々しくはないだろう。

 しかし木蓮の取り出したのは、年季の入ったギターであった。


 フェンダー、ストラトキャスター。カラーは水色。

 おそらく最も、汎用性に優れていたギターだ。

 過去形になるのは、今なら値段相応で、もっと使いやすい初心者向けギターもあるからだ。

(これって、ビンテージなんじゃないかな)

 ペグなどもかなり交換しているので、価値自体はかなり落ちているだろうが。


 音量やトーン調整などで、少しだけ弾いてみる。

「天国の階段だあ」

 アルペジオの、試し弾き禁止、などと言われたものである。

 続いては誰もが知っている「デッデッデー デッデッデデー」のSMOKE ON THE WATER。

 チューニングを合わせて、息を吸い込む。

「行きます」

「何すんの?」

「GOD knows を」

「おお」

 これはまた、背伸びをしたものである。


 アニメの劇中歌であるので、最初に挑んでしまうニワカが多い。

 そしてあっさりと挫折するというものだ。

 弾けるなら充分に凄いな、と千歳は見守っている。

 足でタイミングを取ってから、木蓮は弾き始めた。


(――速い!)

 人にもよるがストラトキャスターだと、この曲は難易度が上がるとも言われる。

 特に女子向けの曲ではない、とも説明をされたことがある。

 暁はあっさりと弾いていたが、本当にあのテンポで弾くならば、そう簡単な曲ではないのだ。

 そして千歳は、こういう時にどうすればいいのか、ちゃんと分かっている。


 マイクはジャックインされている。

 音量確認をして、そこから歌い始めた。

 本当ならリズムギターがあった方が、もっといいのだろう。

 だがもう一度最初から、という選択は千歳の頭に浮かばなかった。


 ドラムのないところは、足踏みでその代用にする。

 聴衆である部員たちも、腕を突き上げてくれている。

 わずかに合わないところは、千歳が強引に合わせていった。

 ノイズの中でならば、普通に合わせていけるところだが、それはもう仕方がない。


 ギターがかき鳴らされて、最後に余韻を残して終わる。

 大きな拍手が鳴らされて、ずっと目をつぶって弾いていた木蓮は、はっと光景を目に焼き付けた。

(う~ん……この子ってひょっとして、天才なんじゃないかな)

 もちろんその単語は、安易に使うべきではない。

 千歳から見ればノイズメンバーは、全員が天才に見えたものだ。

 しかしやがて、それは全て、途方もない努力の果てに結実したものだと分かる。

 月子の場合だけは、ちょっとおかしなところがあるかな、と思わないでもないが。

 暁でさえ膨大な練習量から、あの技術や感性を磨いてきたのだ。




 軽音部の大型新人は、遅れてやってきたものらしい。

「10年って言ってたけど、誰かに習ってたの?」

「元はお父さんが。今は離婚して離れてるけど」

 ギタリストというのは、そういう環境から生まれるのだろうか。

 千歳の知っている最も身近で優れたギタリストも、両親は離婚している。

 ただ暁の場合は、完全に父親は本職のミュージシャンだ。


 どれぐらいの期間かは知らないが、ずっと独力で演奏してきたのか。

 これは確かに、バンドを組みたいと思っても仕方がないだろう。

「歌う方はどうなの?」

「あ、最近のは全然歌えなくて。練習もしてないから」

「じゃあ古いのでいいから、何か歌ってみてよ」

「え、えと、じゃあストーンズのPaint It, Blackを」

 マジで古い、そして洋楽が飛び出てきた。


 しっかりと歌えるギターボーカルだ。

 ただ歌える曲は、全て洋楽ばかりなり。

 理由としては昔、歌って聞いてもらっていたのが父親で、洋楽ばかりを聞かせていたからだという。

 なんというかサラブレッド教育と言うよりは、偏った選曲である。

 ビートルズに初期のストーンズ、そしてヤードバーズあたりしか認めない、ハードロックファンというのがいたりする。

 そこまで極端ではないが、かなりクセのある選曲であるのは間違いない。


 もうちょっとだけ新しい曲となると、アイアンメイデンのTHE TROOPERを弾いて歌ったりした。

 いや、それも充分に古いが。

 歌も上手いことは上手いが、極端なシャウト系でもない。

 普通の日本のポップバンドのボーカルの方が、合っているだろう。

 それにしても、英語の発音がいい。

 本人曰く、意味は分からないので全て憶えた、ということであるらしいが。


 軽音部の、新しいおもちゃである。

 最近の邦楽も、弾けるものは多いので、リクエストに応えて弾いている。

 連れて来た良かったなと思うが、千歳には他にも考えることがある。

(軽音部レベルなら、ものすごく上手いのは間違いないけど)

 プロのレベルからすれば、果たしてどうなのであろうか。

 千歳にはそれを、判断するだけの蓄積がまだない。


 なのでそういうことは、他の人間に頼んでみる。

「俊さんへ、と」

 メンバーのグループにメッセージを送る。

『今日軽音部の後輩を連れて行くので聞いてみてください』

 あの自己紹介における、過剰な情報の発信。

 本人は陰キャと言っているが、おそらくは一方的に話すのが多すぎて、距離を取られてしまったというものではないのか。

 俊と暁、そして信吾に栄二あたりは、知識でどかどかと話し合うことがある。

 そういった白熱した議論には、月子と千歳は付いていけないことが多いのだ。

 木蓮もまた、そういう世界の人間なのではないか。

 ならばレベルはともかく、話し相手は作ってやろう、と千歳は考えたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る